連載
#89 コミチ漫画コラボ
大切な「泣く」を思い出させてくれた…マンガで描く「わたしの伴侶」
コミチ×withnewsコラボで大賞に輝いたマンガは?
「泣けば許されると思うな」「これだから女は」……。そんな周囲の大人からの言葉で、「涙」を封印してしまった女の子。
わたしたちの社会には、いまだに根強く「らしさ」「こうするべき」の呪いが残っていませんか?
呪いを「普通だから」と言い張る人に出くわすと、心底がっかりします。反論するのもエネルギーを使いますし、いっそ「この人はアップデートするのがいやなんだな」と諦め、苦笑いしながらスルーした方がラクだなぁと感じることもあります。
でも、そんな生きづらい社会をこの先も残したいんだろうか。
「泣きたいときは泣けばいい」。こともなげに呪いを断ち切ってくれる言葉に、わたし自身が背中を押されました。(選評:水野梓)
周囲になじめず悩んでいた高校生の頃、時折訪れる公園がありました。トイレの壁は落書きだらけで、遊具も苔生している。荒れ果てたさまが、痛んだ心に快く、何だかホッとできたのです。
「居場所がないなぁ」。そう呟き、ボロボロのぬいぐるみを触る主人公に、自分を重ねました。身体を覆う汚れと毛羽立ちは、長い時間を分かち合ってきた証。万の言葉より雄弁に、優しさを語ったことでしょう。
私が公園で息をつけたのは、きっと空間そのものが、一緒に傷ついてくれている気がしたから。物言わずとも、ともにある。そんな感覚こそが、人を生かすのかもしれません。
いつか誰かにとっての、ぬいぐるみや公園になりたい。そう思える素敵な作品でした。(選評:神戸郁人)
異なる物事の間にある共通点を結びつけることをアナロジーと言います。このアナロジー、今の時代にけっこう大事だと思うんです。
他の世界を知らないままだと、自分の考えやこだわりの中に閉じこもってしまいがちです。ネットはその不安をさらに大きくしてしまう怖さがあります。
そんな時のアナロジーです。ネガティブなことだと思っていたことでも、見方を変えれば、ポジティブなものと共通点がある。その橋渡しをしてくれるのがアナロジーです。
「妻は武士」で描かれた夫の何げない気遣いは、手術の跡を気にする妻に笑顔をもたらします。誰かのモヤモヤを前向きに変えてしまう新たな視点。そんな一言を言える人間になりたいと思いました。(選評:奥山晶二郎)
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