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連載

#16 #今さら聞けない子どもの安全

実は危険「節分の豆」で窒息死も「5歳までは食べさせない」浸透不足

袋に表示、メーカーも対策

豆の代わりに丸めた新聞紙をまいて節分の行事をする幼稚園児(2020年2月3日朝日新聞から)。withnews編集部内の記者の子どもたちの通う園でも新聞紙を活用している。
豆の代わりに丸めた新聞紙をまいて節分の行事をする幼稚園児(2020年2月3日朝日新聞から)。withnews編集部内の記者の子どもたちの通う園でも新聞紙を活用している。

目次

きょうは節分です。大豆やピーナッツをまくイベントは子どもにも人気です。でも、ちょっと待って……! 節分で使われるような豆は、幼い子どもの気道に入ったり、気道が詰まって窒息する危険があるんです。消費者庁は昨年1月に「5歳までは豆を食べさせないで」と広報し、注意喚起をしていますが、まだまだ浸透していません。過去には死亡事故も起きている節分の豆について、専門家に話を聞きました。

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まだ乾いた豆を食べさせている園が

相次ぐ節分の事故を受け、全国の保育・教育現場での実態調査が進んでいます。議員連盟の調査によると、乾いた豆を食べさせている園がまだあるということが分かっています。

【1月31日 夕刊から引用】

 全国の地方議員らでつくる「子どもの事故予防地方議員連盟」は昨年12月、教育・保育施設における節分行事の実態を調査するよう求める要望書を内閣府や消費者庁などに提出した。これを受け内閣府は全国の保育園や幼稚園、子ども園などを対象に「節分で乾いた豆を提供したか」「豆の誤嚥(ごえん)について、行政から助言や指摘を受けたことがあるか」などを尋ねる調査を開始。3月中にまとまる予定で、担当者は「結果を見てより効果的な対応を考えたい」と話す。
 (中略)
 しかし、議員連盟が昨年の節分行事について、東京・千葉・群馬の1都2県の認可保育園など317園を対象にアンケートしたところ、園内で食べることを前提に豆を提供した施設が43あった。うち32園は3歳児にも提供していたという。「乾いた豆を食べることをやめた」と答えた園は189園あった。
朝日新聞、2022年1月31日夕刊、社会総合面

過去には死亡事故も

きっかけとなった事故があります。2020年2月の松江市の保育園で煎り豆を食べ、豆まきをした後に4歳の子どもが窒息死したのです。

【2020年2月14日の記事から引用】

松江市東朝日町の「松江認定こども園」に通う男児(4)が、3日に行われた節分の豆まきの豆をのどに詰まらせて窒息死した。松江市が13日に記者会見して明らかにした。
 市子育て政策課によると、男児がいた3歳児クラスは午前10時ごろから煎り豆を食べ、午前10時20分ごろに遊戯室に移動して豆まきを始めた。その後、保育士が意識をなくして倒れている男児に気づいた。園に常駐の看護師がAEDや胸骨圧迫による心肺蘇生を試み、職員が119番通報。男児は市内の病院に運ばれたが、正午過ぎに死亡が確認された。死因は水分を含んでふくれた大豆が気道をふさいだことによる窒息という。
朝日新聞、2020年2月14日朝刊、社会面

5歳以下の死亡者は全体の9割

松江市の事故を受けて、消費者庁は昨年1月、「豆やナッツは食べさせないで」としていた注意喚起の対象年齢を「3歳ごろまで」から「5歳以下」に引き上げ、広報をリリースしました。

消費者庁の調査では、2014年から2019年までの6年間、食品を誤嚥したことによる窒息で、14 歳以下の子どもが80人死亡していると発表しています。同じ調査では、5歳以下の死亡者は73人で、全体の9割に及んでいました。

消費者庁ウェブサイトから
消費者庁ウェブサイトから

福豆の袋にも表記、消費者庁も警鐘

子どもの傷害予防に取り組むNPO法人「Safe Kids Japan(セーフキッズジャパン)の理事長で、小児科医の山中龍宏さんによると、乾燥した豆が気管に入ると、豆が膨らんで肺に空気が届かない『無気肺』(気管支に物がつまり、奥の肺胞まで空気が入らなくなる状態)になったり、肺炎になったりして死亡してしまうこともあるそうです。

節分の豆を巡る事故はなぜなくならないのでしょうか。背景には、子どもに食べさせてはいけないという認識が世の中に浸透していない問題があります。山中さんは「まだ幼児への乾燥豆の危険性が知られていないなら、商品の袋に直接表記するのが一番分かりやすい」と行動を起こしました。

2020年3月、山中さんが理事長を務めるセーフキッズジャパンは、日本ピーナッツ協会に「4歳未満は食べさせない」という表記を求める要望書を、地方議員連盟と共同で日本ピーナッツ協会へ出しました。

節分の乾燥豆を販売する大手の「でん六」もすぐに対応しました。要望書をピーナッツ協会から受け取った後からすぐに協議を始め、「4歳未満は食べさせない」と表記。さらに、消費者庁が昨年1月に「5歳以下の子どもには食べさせないで」と広報すると、でん六はすぐに全ての豆菓子商品に「5歳以下のお子様には食べさせないでください」の注意書きを表記することを決定し、2021年3月以降順次パッケージを変更しました。

改定前のでん六の商品の注意書き=でん六提供
改定前のでん六の商品の注意書き=でん六提供
2021年3月以降、順次「5歳以下のお子様には食べさせないでください」と表記を改めた=でん六のパッケージを撮影
2021年3月以降、順次「5歳以下のお子様には食べさせないでください」と表記を改めた=でん六のパッケージを撮影 出典:山中さん執筆の記事から(豆による窒息を予防するために〜新しいマーク「豆は6つになってから」〜)

子供の誤嚥…窒息はなぜ起きる?

食べ物が気管・気管支に詰まる場所
食べ物が気管・気管支に詰まる場所
出典: 消費者庁ウェブサイト
食べ物がのどに詰まる場所
食べ物がのどに詰まる場所 出典: 消費者庁ウェブサイト

子どもはなぜ乾燥した豆を誤嚥、場合によっては窒息してしまうのでしょうか。(消費者庁の広報・山中さんへの取材から)

そもそも、食べ物は本来、口からのどを通って食道に入り、胃に送られます。のどの途中まで食べ物と空気の通り道は一緒ですが、その先でうまく分かれるようになっています。しかし、食道に入るはずの食べ物がなんらかの理由で空気の通り道である気管や気管支に入ってしまうことを「誤嚥」と言います。

また、食べ物がのどや気管・気管支に詰まり、空気が肺に届かなくなることを「窒息」と言います。誤嚥により気管や気管支に入った食べ物は、水分を含んで膨潤し、空気の通り道を塞いで窒息に至ることがあります。
 
子どもは、奥歯が生えそろわず、かみ砕く力や飲み込む力が十分ではないため、豆やナッツ類を食べるとのどや気管・気管支に詰まらせて窒息したり、肺炎を起こしたりするリスクがあります。

大人に近い咀嚼そしゃく(食べ物を歯でかみ砕くこと)ができるようになり、飲み込んだり吐き出したりする力が十分に発達するのは3歳頃ですが、その2つを協調させることができるようになるのは6歳頃だといいます。


山中さんが理事長を務めるセーフキッズジャパンは1月31日、節分に向け、「福豆」のような「乾いた豆」はなぜ子どもの喉に詰まりやすいのか、注意喚起の動画を公開しています。

Safe Kids ニュースから
Safe Kids ニュースから

医師の有志が注意喚起

幼児に豆は食べさせないことを徹底しても、もし子どもが誤って窒息してしまったらどうしたらいいのでしょうか。
医師の有志によるプロジェクトチーム「教えて!ドクター」(長野県の佐久医師会・佐久市)が、節分に向けて1月27日、ツイッターで「5歳以下の子どもには豆まきの豆を食べさせないで!」と注意を呼びかけ、反響を呼んでいます。ホームページでも窒息したときの対処方法について、年齢別の詳しいパンフレットを紹介しています。

私の子どもの通う園では、新聞紙を豆の代わりにしていました。幼児は、豆を使わなくても節分を楽しめますね。

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