連載
#81 #となりの外国人
「おこづかい、あげすぎ」言われて驚いた 日本のフツウが分からない
お金の話はオープンにできるもの?
教科書にも、辞書にも載っていない「日本のフツウ」。違う文化で育ち、日本で子育てをしている外国人の親たちが集まる子育て勉強会で、盛り上がる話題の一つが「お金」の話です。
「おこづかい、いくらあげてる?」って、よその家の懐事情を探るようで、話題にしにくいものかもしれません。外国人の親からは、「日本では特にお金に関することが聞きづらい」という声が挙がります。今回はモンゴルから来たザヤさんの体験です。
おこづかい
子どものお小遣いの金額は、家によってまちまち。ある調査によると、中学生の子どもで一番多い金額は毎月1,000円、平均は2,536円(2015年度 金融広報中央委員会調べ)ということです。
子どもがまだ小さい頃のことです。子どもの耳の調子が悪くて病院に連れていったら、先生から「検査をしましょう」と言われました。私は、お金が高くて払えなかったらどうしようと思って、まず「お金はいくらかかりますか」と聞きました。先生は、びっくりした顔をしていました。
日本では、お金について話すことがいけないことのように感じます。子どもの習いごとの見学に行っても、私はお金のことが気になって、すぐに先生に聞きました。でも、日本人のお母さんは聞きませんでした。モンゴルでは、お金のことをみんなストレートに聞くので、そこは違うところだなと思います。
お金のことの中でも、最初、お小遣いのことは特にわかりませんでした。モンゴルでは、子どもに毎月決まったお小遣いをあげる習慣がありません。だから、私は子どもが小学生のときは、何かを買いたいと言われたときに、お小遣いをあげていました。
私のモンゴルの母は、「子どもが我慢を覚えると、最初から諦めることを覚えてしまう」、という考えで子育てをしていました。私も同じ考え方だったので、特に上の子どもを育てるときは「知らない国で、子どもに我慢をさせているのではないか」ということがとても心配でした。だから、子どもが小学生の頃は、出かけるたびにお小遣いをあげていました。「100円でいいよ」と言われても、心配で多めに渡すこともありました。
ところが、仲のいいお母さんから、ある日「あなたの子どもが、出かけるたびにたくさんお菓子を買っている。良くないから、お小遣いを減らしたほうがいいよ」と言われました。そのときに初めて、日本ではお小遣いをたくさんあげることが良くないんだと知りました。言われたときはびっくりしましたが、いまは、そのお母さんが言っていた意味がよくわかり、感謝しています。
ちなみに、日本とモンゴルは子どもの買い物に関しても感覚が違うなと感じています。
子どもが小学校2年生のとき、買い物に行かせたら、やっぱりママ友から「子どもだけで買い物してたけど、大丈夫?」と電話がかかってきました。私が育ったモンゴルの町は、とても小さな町だったので、子どもだけで出歩いても問題ありませんでした。町の大人全員で、地域の子どもを見守っていた感じです。
このときも電話をもらった後は、「なんで一人で買い物したらだめなんだろう?」と思いました。でも今は、東京は大きな町だから、モンゴルとは色々違うんだね、と思っています。
中学生になった子どもに、お小遣いをいくらあげればいいかも、よくわかりませんでした。この間調べて知りましたが、中学生だと、毎月1,000円くらいあげるお家が多いそうですね。
私はそれを知らず、中学1年生のときから3,000円あげてしまいました。最初からたくさんあげてしまうと、そのあとに下げるのは難しいです。そのことを知りませんでした。
お金のことは、仲のいい人でも相談するのが難しいです。だから私の勉強会では、日本人と外国人のお母さんが、お金のことをオープンに話せるようにしています。お小遣いの平均について調べて教えたときは、みんな「そうなんだ!」と言っていました。
まだ日本に慣れていない外国人のお母さんから「わからない」と言われて、自分の答えが役に立つと、うれしい気持ちになります。自分が聞けなくて困った経験があるので、お金のことも、その他のことも、自分がわかることはなんでも話して、他のお母さんの役に立ちたいと思っています。
外国人の皆さんと話していると、時に色々な質問を受けます。お金の勉強会でも「学資保険にはみんな入っていますか」「塾にはいくら払ってますか」など色々な質問が出ました。
そんなとき、「答えを曖昧に濁さない」ということを大事にしています。教えられることは、できる限り教えます。答えられないときは、「申し訳ないけれど、答えたくないんだ」とストレートに伝えたほうが、「そうなんだ」と伝わると思います。
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