連載
#25 眠れぬ夜のレシピ
どうしようもない日、町で見つけた「居場所」 眠れぬ夜のレシピ
「私のことなんて埋もれさせてくれる」
どうしようもない気分の時は、どう過ごしていますか? 「どこにも居場所がない」と感じた時、SNS作家・午後さんが見つけたのは意外な場所でした。「眠れぬ夜のレシピ」、手紙を添えて、お届けします。(漫画・コラム、午後)
午後さんのプレイリスト
眠れない夜。午後さんの身近にあった音楽を教えてもらいました。
あなたの夜の隙間も、少しでも埋められたら、幸いです。
こんばんは、午後です。
暗めの話題が続いて申し訳ないのですが、今回もまた、どうすることもできない気持ちを抱えた時の話になります。
どうにもならないぐしゃぐしゃとした気持ちに飲まれてしまうことが私には多いのですが(他人と比較できないので相対的に見て多いのかは不明です)、そうした時は、暗〜い自分が紛れても誰にも気づかれないくらい、あまり明るくない、情報量の多いところに行きたくなります。
木を隠すなら森の中、とはよく言ったものです。「ここなら、酷い自分がいても、きっと見逃されるだろう」といった気持ちが働いているのだと思います。
スクランブル交差点などのただ人が多いところ、雑貨屋などの誰かがつくった物が混沌と詰まっている場所だけに限らず、リサイクルショップや古本屋などの、人々の手垢、かつての誰かの気配が多い場所も安心できます。
そうした場所でひらすらぼんやりしていると、とてもたくさんの人がこの世界に存在することを実感します。そして、そんな中なら自分みたいな存在が一人くらいいても、許されるのではないかと思えてくるのです。
さらに、それだけ大勢の人の中から、出会えて良かったと思える人(例えもう会えない人でも)と出会えたことに、励まされるのです。その人がこの世界に存在したこと、その目に私を映してくれた事実が灯火となって、帰り道を照らしてくれます。
そうして私はなんとか、元の場所に戻ってくるのです。
以上のことは私のとても個人的な蘇生術ですが、誰かの手助けになれたらと思い、描き残しました。最後に、私の大好きな漫画『ぼのぼの』にあった一場面を残して、終わりにしたいと思います。
ぼのぼの「でもおじいさん、鳴り木(楽器のようなもの)の音ってすごくさびしそうな音だよね」
リスのおじいさん「うん。このさびしい音がさびしい気持ちをなぐさめてくれるのじゃよ」
ぼのぼの「え? さびしい時は楽しい音じゃないの?」
(『ぼのぼの』20巻 いがらしみきお)
悲しい時やさびしい時、対極の楽しさや喜びに触れてしまうと、自分をより惨めに感じてしまう私にとって、とても励まされた言葉でした。
それでは、今夜も素敵な夢を見られますように。おやすみなさい。
午後
SNS作家。2020年5月からTwitterに漫画を投稿をしている。著書に「眠れぬ夜はケーキを焼いて」、「眠れぬ夜はケーキを焼いて2」(ともに、KADOKAWA)がある。Twitterアカウントは@_zengo。
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