連載
#27 SDGs最初の一歩
「エフエフエフ」ってなんだ? 国会前に靴を並べ、5千人が行進
〝怖い・過激〟な活動をやわらかくする工夫
「Fridays For Future」。通称「FFF(エフエフエフ)」って知っていますか? とにかく〝関係ない〟と思われがちな気候危機について、「そうでもないんだよ」と教えてくれる活動です。毎週金曜日、彼らは何をしているのか……。「FFF」に関わる筆者がその正体について解説します。(阪田留菜)
11月、イギリス・グラスゴーで国際会議COP26が開かれました。
「気候危機」について各国の首脳陣が集まり、日本からも岸田首相が参加しスピーチをしました。
そんな中、現地で注目を集めたのが気候危機を訴える世界中の「若者」の姿でした。
COP26開催中にはグラスゴーで行われたデモでは最大10万人が参加するなど盛り上がりを見せました。そこには日本から参加したは高校生や大学生もいました。現地のデモに参加し、岸田首相に直接手紙を渡そうとするなど精力的に気候危機を訴えていました。
彼らは世界規模で気候危機を訴える若者の運動「Fridays For Future=未来のための金曜日」で活動しています。
「FFF」の発足のきっかけは、2018年環境活動家グレタ・トゥ―ンベリさんが行った「学校ストライキ」でした。
グレタさんは、気候変動対策を訴えるために学校を休んでスウェーデンの国会前で座り込みをしました。「学校ストライキ(School Strike)」と呼ばれ、グレタさんは毎週SNSに投稿しています。その姿に共鳴した若者も立ち上がり、約3年で世界7500以上の地域に広がったのです。
日本でも、2019年に東京で学生が中心となり立ち上がりました。瞬く間に札幌、青森、仙台、新潟、埼玉、名古屋、滋賀、京都、大阪、広島、福岡、長崎、鹿児島など日本中に広がり、約30地域で300人の若者が声をあげています。2021年には、山口、山梨、横浜が立ち上がりました。沖縄も発足する予定です。
「FFF」が訴えたいことは、「気候変動対策の強化」と「気候正義」の二つです。政府、官僚、自治体、企業などすべての政策決定に関わる人に対して声をあげています。
喫緊の課題である気候危機という問題に対して迅速に行動を促します。「気候正義」とは気候危機による影響や負担を公正にしていこうという考えです。
気候危機の影響を受けているのは排出量が少ない途上国や将来世代の人ですが、原因である温室効果ガスの多くは富裕層から排出されています。
「FFF」は若者が中心の活動ですが、「未来を壊されたくない、壊したくない」という思いから活動している人も少なくありません。「FFF」はこうした今ある社会システムを変えようと発信しています。
「FFF」には半年に一度、世界同日で気候危機を訴える「世界気候アクション(Global Day of Climate Action)」を行います。この日はもちろん金曜日です。
それぞれの「FFF」が最も力を入れてストライキ・デモ行進をします。昨年、ドイツ・ベルリンでは62万人もの人がデモに参加しました。
一方、日本の「FFF」はストライキをしません。一番の理由は日本ではストライキの文化が浸透していないからです。また、デモ行進をするときも「デモ」とは呼びかけず「マーチ」という言葉を使います。柔らかい表現を使うことで友達も誘いやすくするためです。
「FFF」に参加するメンバーは日本で活動を広げるために常に「気軽に参加できるかどうか」を考えています。SNSを使ったツイートストームやフォロワーからメッセージを集めて一斉に投稿。気候変動を学ぶツールとして専門家と一緒にYouTube配信もしています。
時には、「エネモン」というキャッチ―な発信も。日本のエネルギー政策を決める「経産省総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」という会議があります。難しそうな名前ではありますが、日本の気候変動対策を左右する大事な会議です。そこに参加するメンバーを覚えてもらおうと、委員をキャラクターに見立ててカードゲームにしました。
運営は「FFF」ではありませんが、「FFF」のメンバーが中心となり企画している活動もあります。音楽を通して気候危機に親しみを持ってもらう「Climate Live」もその一つ。「Climate Clock」という1.5度の気温上昇を防ぐために残された時間を表示する時計を渋谷に設置しようというプロジェクトも始まっています。
一方で課題もあります。「FFF」に対して「そんなことしてないで勉強しろ」「原始時代に戻ってから言え」など多くの中傷コメントがつくことがあります。
「FFF」は従来の環境問題へのアクションとの違い「政治に訴える」ことを重視しています。マイボトルや、節電・節水など、日常生活の中におさまらない活動を目指しています。
このような活動は、これまで日本であまり例がなく、そのため思わぬ反応を招くことがあるのです。
「FFF」のメンバーの中には、周囲から心配されたり距離を置かれたりする人もいて、活動していることを打ち明けることに戸惑いを感じることもあります。
「FFF」のメンバーは、中学生から大学生を中心とする若者です。
それぞれの思いを抱えて活動をしています。
最近では、政治家からも注目されるようになり、小泉進次郎元環境大臣と数回にわたって意見交換をしたり、地球温暖化対策計画の会合や衆院環境委員会で意見を述べる場に参加したりしました。
2019年には「グローバル気候マーチ」を日本で開催。全国から5千人が参加し、密を避けながらアピールする取り組みとして、国会前に靴を並べる企画も実施しました。
このような活動ができたのは、使う言葉やアクションの工夫をしてきたからです。「怖い・過激」と思われがちな活動を諦めることなく続けることで、「FFF」は従来の環境問題が抱える壁を乗り越えようとしています。
※この記事は、時事YouTuberのたかまつななさんが講師を務める政策デザインWS(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)の活動の一環として学生が作成しました。
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