連載
#118 #父親のモヤモヤ
「ママ垢」と「パパ垢」終わりのない戦いをマンガに…2児の母の思い
マンガのタイトルは「割と最近の育児垢の様子」。昨年10月にツイッターで公開され、1万7千件の「いいね」を集めました。
「名作」「パワーワードしか出てこない」といったコメントが並んでいます。
【漫画】割と最近の育児垢の様子 1/2
— 紅白もち子@die Knochen werden Sand (@kouhaku_mochiko) October 13, 2021
(※ツイ廃にしか分からない仕様) pic.twitter.com/rcpk4Q4RQl
作者は紅白もち子さん(@kouhaku_mochiko)です。
国際結婚して現在はスイスに在住。4歳の長男と2歳の長女を育てています。
マンガは、「イクメン」を気取る「一部のパパ垢」や、妻に対する愚痴をこぼす「無神経な夫」のツイートに「ママ垢」のいら立ちが頂点に達したところから始まります。
一方で、対峙する「パパ垢」からは、「育児の苦楽を共にする同志ではなかったのか…」と戸惑いの声が漏れます。
作者の紅白もち子さんは「ツイッターで見かけた話題や議論を元にマンガを描きました」と話します。
ところが、こうも述べます。
「対立するパパとママの意見を見るのは自分の経験を顧みてもつらいです」
どういうことでしょうか。
紅白もち子さんは、約2年半前、長男が1歳8カ月、長女が生後3カ月の時に産後うつと診断されました。家事や子育てへの関わりをめぐって夫との対立も経験し、現在は別居しています。
ツイッターで散見される夫婦間の衝突に、自身の経験を重ね心を痛めているのです。
医療機関を受診する前、症状は重くなっていました。
第2子の長女出産後、味を感じなくなり、ひどい肩こりや頭、おなかの痛みを覚えはじめました。体はだるく、ベッドから起き上がれなかったそうです。
結婚前は日本で営業職として働いていました。「会社の価値観は古く、男性は出世頭とみられ、女性は結婚していずれ辞めていく人という扱いでした」
紅白もち子さんは、「男は仕事」「女は家庭」のような旧来の性別役割分担の意識には疑問を抱いていました。第1子の妊娠中は、夫と家事や育児の分担について話し合っていました。
ところが、現実は違いました。
「出産後に生活が激変した私に比べ、夫の生活は変わりませんでした」。仕事のペースに変化はなく、自宅では毎晩ゲームをしていたそうです。
「夫がやることといえば、私のシャワー時に20分程度子どもをみることくらいでした」
紅白もち子さんの睡眠時間は削られていきました。
産後うつと診断された後、服薬を続けました。長女の授乳が終わって少しは睡眠時間を確保できるようになり、体調も回復してきました。
そんな紅白もち子さんは、ツイッター上には「家事育児を当たり前にこなす父親がたくさんいることに驚きました」と話します。
「スーパーマンなどではなく、ごく普通に生活していて家事育児に悩んだり疲れたりしている。そういう方々の存在に救われたのです」
自身は無理がたたって体調を崩してしまったものの、夫婦でともに子育てする生き方を知ることができ、うれしくなったそうです。
そんな父親たちへの「感謝」は、マンガの中にも秘められています。
「日々育児に勤しむ我々の肩身まで狭くなってしまっている」「ママと同じように悩んでいる!」
「パパ垢」を家庭に無関心な父親像に当てはめるのではなく、悩みながら子育てしている「パパ」として描きました。
マンガの中には、「願い」も込められています。
実は、「ママ垢」「パパ垢」ともに同じ軍服を着ています。「本来は、パパもママも共に育児を戦い抜く味方であるはず」――。そんな「思い」を込めて、意図的に演出したそうです。
しかしながら、社会全体を見渡せば家事や子育ての負担が母親に偏っているケースが大半です。マンガもそんな現実を反映して「そして戦いは続く」で結ばれています。
それでも、対立を解消する道はあると、紅白もち子さんは言います。
「『子どもが小さいうちから保育園に預けて母親が働くなんて』『父親が育休を取るなんて』。そんな固定観念は、まだまだあります。けれども、夫婦で子育てする生活は当たり前のように存在するのだと、私の意識が育児をするパパたちを見て変わったように、世の中の意識が変わることが、一番の道ではないでしょうか」
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