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連載

#5 コウエツさんのことばなし

「何とか活」なぜ増えた? 「就活」「婚活」2000年から急増

辛酸なめ子さん「群れたい連帯感の現れ」

「就活」という言葉が広まり出した2001年、企業の合同説明会に参加する学生たち。この頃の学生は就職氷河期世代といわれている=東京都
「就活」という言葉が広まり出した2001年、企業の合同説明会に参加する学生たち。この頃の学生は就職氷河期世代といわれている=東京都
出典: 朝日新聞

目次

「朝~」「腸~」「ソー~」……。「~」には同じ文字が入ります。何でしょう?……。答えは「活」です。「~活」が増え続けています。2021年の新語・流行語大賞では受賞は逃しましたが、アイドルなどを応援する「推し活」がノミネートされました。なぜ広がるのか。活にはどんな意味が込められているのか。背景を探ると、日本人特有の事情があるようです。(朝日新聞校閲センター記者・本田隼人)

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もうすぐ小学生、親はラン活

「そろそろラン活しないとね」

ラン活? 6歳の長男がいる堺市の女性(34)は21年春、友人と会話していて初めてラン活を知りました。小学校で使うランドセルを購入するために調べたり、見に行ったりする活動のことです。

女性はその後、SNS(ソーシャルネットワークサービス)などでも頻繁に登場しているのを目にしました。「いろいろな活があるんだなって思いましたね」

6月には長男のランドセル選びのために、大阪市で開かれた合同ランドセル展示会へ。13社のメーカーが出展し2500人以上が来場したイベントでした。

ただ、「息子は人混みが苦手でランドセル探しどころではなかった」と女性。後日、メーカー直営店で購入したそうです。

並べられたランドセルを見る家族連れ=2017年5月、奈良県
並べられたランドセルを見る家族連れ=2017年5月、奈良県
出典: 朝日新聞

~活はいつごろから?

妊活や墓活、腸活、離活など増え続ける「~活」。そもそもいつごろ使われ始めたのか。

数年前に大学生だった記者にとってなじみのある「就活」が、朝日新聞に初めて登場したのは1999年。就職情報の掲示板に投稿された川柳を紹介する記事で「空爆も就活もいつ終わるやら」と載りました。

2000年以降は登場が急増します。「現代用語の基礎知識」では00年版に初めて収録。この頃は就職氷河期で、04年版ではこう背景を説明しています。

《長引く不況にともない、新卒学生の就職活動は厳しい状況が続いている。そのような状況を乗り切るために、軽いノリでの「就活」というネーミングが浸透している》

いま、メジャーな一つが「婚活」です。婚活は週刊誌「アエラ」の07年11月5日号の特集で使用されたことが始まりとされています。

《この結婚難の時代、自然な出会いで結ばれる、なんて幻想。結婚活動、略して「婚活」こそが結婚への近道……》とつづられています。

翌08年には中央大の山田昌弘教授(家族社会学)と作家の白河桃子さんの共著「『婚活』時代」が出版され、婚活という言葉の認知度が一気にアップ。婚活パーティーや婚活アプリなど「婚活」という名のつく言葉があふれています。

婚活に続くように、09年に終活(人生の最期を迎えるにあたり介護や葬儀の準備を整えること)、15年ごろに腸活(腸内環境を整え、健康を保つこと)など続々と登場しています。

さらに、字面だけでは意味が推測すらできないものも。「ヌン活」や「ソー活」と聞いて、どんな活動を想像しますか?

それぞれアフタヌーンティーを楽しむこと、SNSを使った就活を指します。

文化庁が20年に行った「国語に関する世論調査」によると、「~活」について、2千人のうち54%が「使う」と回答。91%が「他人が使うのを気にならない」と答え、広く浸透していることがうかがえます。

年代別に使う割合をみると、20代が73%、30代が65%と若者が高いです。

午前8時前から朝活として女性タレントの講義を聴く受講者たち=2018年5月、東京都
午前8時前から朝活として女性タレントの講義を聴く受講者たち=2018年5月、東京都
出典: 朝日新聞

辛酸なめ子さんに聞いてみた

なぜ、~活は広まるのか。コラムニストで、新語・流行語大賞の選考委員も務める辛酸なめ子さんに聞いてみました。

――「活」をつける言葉が広がる背景にはどんなことがあると思いますか。

「~活とすると一人ではなく、仲間とやっているような連帯感が生まれます。特に大変さや苦労を共有できる。その安心感、心地良さが広がる理由かなと思います。学生時代は部活という連帯意識を育むものがありましたが、その延長線上にある感じがします。日本人が好む、群れたいっていう思いもあるのかもしれません」


――連帯は根底にありそうですね。何かに向かって努力しているような印象もあります。

「『活』は強い言葉で、ちょっと圧がある。インスタグラムなどに#タグをつけて~活って投稿している人は『私はこれをやっているんですよ』って、意識の高さをアピールしているように感じます」


――勢いに乗って、企業が~活と銘打って企画するビジネスも目立ちます。

「業界がチャンスとみて、~活をやりたがる人たちにアピールして、仕掛けている面もあると思います。それによってお金が動き、経済が潤う。一方であまり強く宣伝すると、始めようかなとまだ悩んでいる人たちにプレッシャーを与え、かえって遠ざかってしまうこともあります」


――じわりと広がる中、活に関わることも?

「8年前に知人が開催した(意識的に涙を流してストレスを解消する)涙活イベントに参加したことがあります。5、6年前から月刊誌で、魂に活をつける『魂活』をテーマに記事も書いています。精神世界の活動や体験をすることです」

「ソロ活についてコメントを求められることもよくあります。以前は一人を『ぼっち』と言われ、クリスマスを一人で過ごすことを『クリぼっち』とか、侘(わ)びしいイメージでした。でも、ソロ活という言葉が出てきて、前向きな印象になった気がします」

辛酸なめ子さん
辛酸なめ子さん 出典: 朝日新聞

――たくさん登場し、良いことばかりなのでしょうか。

「パパ活はどうなのだろうって思います。援助交際に近いものをカジュアルなイメージにして違和感があります。肯定できる活動ではありません。(男性が女性と食事などをして対価をもらう)ママ活もありますけど、楽しそうみたいな印象を与え、危険な言葉だと思います」


――~活という言葉は今後も増えそうですか

「増えますが、婚活のように定着するものもあれば、タピオカドリンクを飲むタピ活みたいに、ブームとリンクして廃れていく言葉もあるでしょう」


――これから誕生しそうな~活は

「うーん……(昨年6月に東京・上野動物園で)パンダの双子の赤ちゃんが産まれたから『パン活』とか。パンダを見に行く人が増えて、パンダに癒やされる活動がもっとあるかも」

【主な~活】 ※年は主に使われ始めた時期。Twitterのキーワード検索やグーグルトレンドから

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