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コラム

料理のたびに罪悪感…便利グッズを使わせなかった〝理想の母の呪縛〟

「ラクすること」への抵抗、溶かした言葉

手間暇かけて準備した料理も、子どもは2、3口食べて「ごちそさまでした」。心の中でため息をついた回数は数知れなかったが……
手間暇かけて準備した料理も、子どもは2、3口食べて「ごちそさまでした」。心の中でため息をついた回数は数知れなかったが……

目次

保育園のお迎えの道中はいつも小走り。その間夕飯の献立を考え、帰宅後は大急ぎで食事の準備に取り掛かる。慌しい生活を続けること1年半、自分の中で“禁断”だった食品の宅配サービスを申し込みました。便利なサービスの利用をためらっていたのは、価格の高さ。でも、それだけが理由ではなかったことに気づいたのは、「#真実のレシピ」プロジェクトを知ったことがきっかけでした。(ライター・小野ヒデコ)

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せっかく作っても「いらない」

仕事、家事、育児に奔走する日々で、頭を悩ますのは「食事」です。2歳半になった子どもは、食べられる食材も量も増えてきました。自分ひとりだと何とでもなるものの、家族の健康面を考えると、毎日の食事はおろそかにはできません。

毎日、小走りで保育園のお迎えに行く間、自宅にある食材を思い巡らし、段取りを考え、時にはスーパーで買い物をし、帰宅後は大急ぎで夕飯を作る生活を1年ほど送っていました。

栄養面を考え、美味しくできたと思った料理も、「いらない」とプイッと顔をそむけて残す子ども。「せっかく作ったのに……」と心の中でため息をついた回数は数知れません。

そうなると、子どもが好物の“ハズレない”食材の「納豆、トマト、ちくわ」が頻出。切って盛り付けるだけなので、もはや料理とは言えず、「これで良いのか……」と思わず眉間にシワが寄ります。

夫の食事も悩みの種。さすがに毎回子どもと同じメニューでは飽きるので、別個で作ることが多いです。とはいえ、筆者は料理がそこまで得意ではありません。子どもの相手をしながら、急いで作った夫の夕飯が、茶色一色のあまりにもヒドイ見た目になったことがあり……。自分の力量の無さにショックを受けました。この出来事が、「これは何とかしないと…!」と思ったターニングポイントとなりました。

子どもが好きな食材を寄り集めて急いで準備した夕飯。彩りを考えて添えたいんげんは残されてしまった。
子どもが好きな食材を寄り集めて急いで準備した夕飯。彩りを考えて添えたいんげんは残されてしまった。

時間内に作り終わらない

何か良い方法はないか。あれこれ調べた中で、レシピと材料がセットになった「ミールキット」の宅配サービスに行き着きました。レシピと共に、カットされた野菜や味付け肉などの「半調理」品が届く内容で、「20分でできる」が謳い文句。1食あたり500円〜1000円が相場となっています。

「外食と変わらない金額。もっと頑張ったらいいのに」
「でも、そうやって自力でやろうとして苦労してきたのでは」

頭の中で、相反する意見が堂々巡りしました。考えに考えた挙句、とりあえず試してみようと登録することにしました。毎週、オンラインで注文し、宅配便で受け取る。その結果、1カ月間の食費は以前の2倍になったものの、献立を考える時間と買い出しに行く労力は減りました。

金額に関しては、時間と労力をお金で買ったと思うと納得できますが、もう一つ気になることがありました。それは、「20分」では料理を作れないこと。実際30分近くかかる現実に、「なんて要領が悪いのだろう」と自分を責めました。

そんな中、ある調査結果を目にしました。

旭化成ホームプロダクツは、2021年8月19日〜23日の間、週5回以上料理をする20代以上の男女約300人にアンケートを実施
旭化成ホームプロダクツは、2021年8月19日〜23日の間、週5回以上料理をする20代以上の男女約300人にアンケートを実施

レシピ内の調理時間のカラクリ

クックパーを販売する旭化成ホームプロダクツが、週5回以上料理をする20代以上の男女約300人にアンケート調査を実施。この調査は、“料理する本人でさえ見過ごしがちなレシピの「行間」に注目し、そこに隠れた愛や想いを可視化する試み”として、ショートムービーや「サザエさん」を起用した広告を展開するものです。

その内容に、「料理中、意に反して中断することがある」の回答が73%ありました。
実際、筆者も、子どもからの「これ見て!」や宅配便の受け取りなどで、料理を中断するのは当たり前になっています。当たり前すぎたからこそ、その事実に気づいていませんでした。

また、「『レシピに書かれている調理時間』は実際の調理時間より短い」を聞いた質問では、「同意する」が67%という結果に。
そのことについて、「#真実のレシピオンライン発表会」に登壇したパパ料理研究家で日本パパ料理協会会長飯士の滝村雅晴氏はこう言われていました。

「白状しますけど、僕も仕事でレシピの目安時間を書きますが、絶対にその時間では作れません。材料が全部そろって、何の邪魔も入らずに、作る工程もわかったうえで作り始めるのだったらできると思います」

レシピに書かれた時間で料理を作るのが難しい理由を知り、深く合点しました。もう一つ、滝村氏から「簡単にできる時短料理と、手の込んだ料理をわける」とのアドバイスに目から鱗が落ちました。

常に手の込んだ料理を作ろうとしなくて良いのだと、フッと肩の力が抜けました。同時に、手の込んだ料理を作らないと「罪悪感」を感じていたことにも気づきました。

2021年11月29日の朝日新聞朝刊で掲載された広告
2021年11月29日の朝日新聞朝刊で掲載された広告

「ラクすること」の抵抗感

この罪悪感を掘り下げて考えたところ、「理想の母親像」を自分の母親を基準にして考えていることが原因なのでは、と思うに至りました。

専業主婦だった母は、彩りが豊富で美味しい料理を毎日作ってくれました。時短のために野菜を電子レンジで加熱したり、「便利グッズ」などは使ったりはしていませんでした。そんな母親の姿を見て育ったため、「料理は手抜きをしてはいけない」と思い込んでいたのです。

ミールキットの宅配に頼るかどうか散々悩んだのも、値段だけではなく、「ラクすること」自体に抵抗があったから。

当時の母と今の自分とでは、立場も環境も違います。その違いを客観的に捉え、自分の頑張りを認められたことで、料理をするうえでの罪悪感は軽くなりました。

今回、「#真実のレシピ」を通して、純粋に調理している間だけではなく、買い出ししたり、献立を考えたり、後片付けまでも、「料理」に入ると思うようになりました。そして、自分と同じような悩みを抱える人も多くいることを知り、勇気づけられました。

最近、子どもは「お母さん、料理上手だね」と言ってくれます。ちくわを切ってお皿に盛っただけでもニコニコして伝えてくれるので、戸惑いながら「ありがとう」と返事をしていました。

でも、今は違います。
子どもからの褒め言葉に、堂々と「ありがとう」と返せるようになりました。

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