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「THE W」オダウエダが誰よりも強かったこと フワちゃんが見せた涙

優勝逃しても視聴者味方につけたAマッソ

『THE W 2021』のSNS上での応援ブース配信で涙を見せたフワちゃん。1年前の「2020ユーキャン新語・流行語大賞」ではトップ10に「フワちゃん」が選ばれていた=2020年12月1日午後2時45分、東京都千代田区、上田幸一撮影
『THE W 2021』のSNS上での応援ブース配信で涙を見せたフワちゃん。1年前の「2020ユーキャン新語・流行語大賞」ではトップ10に「フワちゃん」が選ばれていた=2020年12月1日午後2時45分、東京都千代田区、上田幸一撮影
出典: 朝日新聞

目次

12月13日、女芸人No.1決定戦『THE W 2021』(日本テレビ系)の決勝が開催され、オダウエダが5代目女王の座をつかんだ。今年は「国民投票枠」が新設され、新たな審査員も加わった。大会の特性もあり、「毎年レベルが上がってる」 「審査が問題だった」など賛否も呼んだ。そんな中、最終決戦に残ったオダウエダ、Aマッソ、天才ピアニストの魅力はどこにあったのか。物議を醸した審査結果を振り返る。(ライター・鈴木旭)

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「国民投票枠」と新たな審査員の影響

本大会の基本的な審査方式は昨年と変わらない。決勝進出者10組がAブロックとBブロックに半々で分かれ、各ブロックとも1ネタ終えるごとに暫定1位を決める「勝ち残りノックアウト方式」だ。得点ではなく、審査員が各組のネタを比較し、面白いと感じたほうに投票することで勝者が決まる。

ただ、今回は視聴者のデータ放送による「国民投票枠」が新設され、各ブロックで敗退した8組からもう1組が選出されることになった。例年のブロック代表2組ではなく、3組で最終決戦を行う形だ。このことで審査員は、昨年にも増して“何をどう評価すべきか”に頭を悩ませたに違いない。

その審査員はというと、アンガールズ・田中卓志、笑い飯・哲夫、久本雅美、ヒロミ、ハイヒール・リンゴの5人は第3回大会から変わらず。昨年の麒麟・川島明に代わり、新たに加わったのが友近とミルクボーイ・駒場孝だ。今回は、対戦ごとの“国民投票(視聴者投票)”がなくなり、審査員が1人増えた。この審査員の人選が大会の結果に少なからずの影響を与えたといえる。

一方、昨年に比べ、スタジオの観覧客が格段に増えた。単純に大会としての健全さが戻って来ていることは前向きな変化として受け止められた。

ミルクボーイの駒場孝=2020年3月、大阪市中央区、滝沢美穂子撮影
ミルクボーイの駒場孝=2020年3月、大阪市中央区、滝沢美穂子撮影
出典: 朝日新聞

独特な世界観を貫いたオダウエダ

新たな審査体制のもと、熾烈な決戦を制し、5代目王者となったのがオダウエダだ。前大会から2年連続の決勝進出。Aブロックで勝ち進む紅しょうがの勢いを止め、最終決戦でも僅差で勝利を収めた。

彼女たちの持ち味は、何と言っても独特な世界観を放つコントにある。1本目は、焼き鳥屋にある「ハツの就活」「砂肝のゲッチュ」といったオリジナルメニューが気になって注文してしまい、客が翻弄されていくというネタ。2本目は、ストーカーと思しきおじさんが“カニに異常な執着”を持っていたことがわかり、今度は女性がおじさんを喜ばせようと本物のカニを隠し持って家にまで押しかける、というネタだった。

どちらも特有の小道具が登場し、小田結希はよく通る声で“棒読みっぽさ”を突き通す。また毎度、「コント○○!」と言って始まることからも、あえて“ベタさ”を演出しているのが見て取れる。最初に見る側のハードルを下げ、視覚的かつシュールなボケを繰り出す手法は、ななまがりにも通じる世界観だ。

ななまがりは大阪芸術大学の「落語研究寄席の会」出身で、オダウエダ・植田紫帆の先輩にあたる。さらに審査員の駒場は、ななまがりの先輩で落研でも交流があった。そんな駒場が最終決戦で天才ピアニストに票を投じたのは実にリアルだ。後輩びいき、あるいは直感的に“同じ落研の匂いがする芸風”を避けたのかもしれない。

他方で、前大会で「一番最初に負けたオダウエダは99点です」と発言していた哲夫、今大会でもっとも独自性を評価した友近はオダウエダに票を入れている。こうした背景の中で、オダウエダは僅差で優勝をつかんだのだと思う。

執念のリベンジで健闘したAマッソ

今大会で惜しくも準優勝となったのがAマッソだ。オダウエダと同じく2年連続で決勝進出。また、『爆笑ファクトリーハウス 笑けずり』(NHK BSプレミアム)で準優勝している点も共通するところだ(オダウエダは同番組の「シーズン2〜コント編〜」で準優勝)。

2本目のプロジェクションマッピングを使った映像漫才もよかったが、個人的には1本目のネタに彼女たちの執念を感じた。まずはブロックの勝者となることを考えたのだろう。設定は、会社の上司と部下。融通の利かない部下の電話対応に上司がキレ続けるというコントだった。

Aマッソとしては、これ以上なくオーソドックスなネタだ。しかし、2人の巧みな掛け合いを見せるにはベストだったように思う。

ネタによっては、加納の鋭利なワードが一般の視聴者に伝わりづらかったり、激しいツッコミで引かせてしまったりもする。しかし、前述のコントでは部下役の村上が徐々に暴走していくため、加納のツッコミに共感が生まれやすかった。声を上げることに必然性があるからだ。ネタの後半で「何で最後、なすなかにしやねん」と口にしていたことからも、“大衆に伝わるライン”を非常に意識して作られたことが垣間見える。

そんなAマッソが、なぜ2本目に前回のリベンジとなる映像漫才を選択したのか。それは、このフォーマットを考案した放送作家・白武ときお氏、映像作家・柿沼キヨシ氏の4人で優勝したかったのだと考えられる。コンビではなく、チームでの勝利を望んだのだろう。

優勝こそ逃したが、こうした彼女たちの姿勢は視聴者を味方につけたようだ。大会当日のツイッタートレンドは、「♯THE_W」を抜いて「Aマッソ」がしばらく1位をキープしていた。

ものまね封印した天才ピアニスト

もう1組、Aマッソと並んで準優勝となったのが天才ピアニストだ。THE Wは初の決勝進出。ものまね、コント、漫才までこなす芸達者なコンビが満を持しての登場となった。

天才ピアニストと言えば、上沼恵美子に扮したますみのものまねが真っ先に思い浮かぶ。2018年の『オールザッツ漫才』(MBS)で披露した漫才によって世に知れ渡り、その後バラエティーでの露出も増えた。しかし、今大会ではそのものまねを封印。2本ともに、コンビの持ち味を生かしたコントで勝負した。

とくに1本目は、2人の掛け合いが心地よいネタだった。“ドアの強度チェックをする職員”という設定で、本社から「チェックが遅い」と報告を受けた竹内知咲が、ドアの開閉時にいちいち芝居を挿し込むシミズさん(ますみ)をたしなめようとする。しかし、竹内はいつの間にかシミズさんのペースに巻き込まれアドバイスし始めて……という内容だ。

ドアの開け閉めだけで行われるシンプルなコントだが、ますみが出入りすることと開閉音によってうまく序盤のリズムを生み出している。また日常と芝居が交錯する中で、2人の演技力がいかんなく発揮されていたように思う。

2本目も“スーパーの店員と客”というわかりやすい設定の中で、2人の掛け合いが披露されている。しかし、時間経過を表す暗転が行われるたび、笑いがリセットされているようにも見えた。この点が結果に影響したのではないだろうか。

オダウエダは僅差の勝利

審査員のアンガールズ・田中は、『そろそろ にちようチャップリン』(テレビ東京系)といった番組のネタ評を見ても、“その芸人にしかできないネタ”を評価する傾向が強い。舞台装置を使った演出よりも、ネタの世界観や演者そのもののポテンシャルを買っているのだろう。

そう考えると、最終決戦でAマッソや天才ピアニストではなく、オダウエダを選んだのも腑に落ちる。ネット上では「同情票だ」「審査がおかしい」といった声も見られるが、そんなことはないはずだ。Aマッソ、天才ピアニストが2票、オダウエダが3票の僅差である。評価の軸は審査員それぞれで、今大会ではオダウエダを評価した人数が1人多かったというだけの話だと思う。

テレビ初出演となるヨネダ2000をトップバッターに、今年は個性豊かなメンバーが多かった。元ミュージカル女優の茶々、現役公務員がリーダーの女ガールズ、念願のファイナリストに緊張が見えたヒコロヒー、コロナ感染の苦渋をなめ、改めて決勝進出を果たしたスパイクも面白かった。紅しょうが、TEAM BANANAも、何度も決勝に残る実力を感じた。

ネット上での応援ブース配信では、Aマッソとゆかりの深いフワちゃんが大会の審査に一喜一憂する姿も見物だった。最終決戦でオダウエダが勝利し、思わず涙するフワちゃん。それを見かねたさらば青春の光・森田哲矢が「来年はこれ(大会サポーターに)選ばれても辞退してな、最後こんなことになるんやったら」と諭すシーンも妙におかしかった。

来年はファイナリストのリベンジとなるか。それとも新星が登場して波乱を起こすのか。“女性”というくくりだけの異種格闘技戦は、年を追うごとに興味深さを増すばかりだ。

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