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連載

#115 #父親のモヤモヤ

「パパの育休本」作る自分に妻の疑問「子どもはまだ起きているよ」

成川献太さんと家族=本人提供
成川献太さんと家族=本人提供

目次

#父親のモヤモヤ
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「1人目では取れなかった。2人目以降は……」。育休に対して、そんな思いの男性もいるでしょう。広島県の小学校教員、成川献太さん(35)も、3人目の子どもが生まれた際、初めて育休を取りました。

子育てに喜びを感じた一方、妻の苦労も身に染みたそうです。そんな体験から、男性育休のリアルを知ってもらおうと「育休本」の製作にとりかかります。ところが、無事に完成を迎えようとしていた時、妻から思わぬことを伝えられます。
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同僚に負担、育休「選択肢に浮かばず」

成川さんには、5歳、3歳、1歳、3人の子どもがいます。妻は現在、育休中です。

午前7時前に家を出て、帰宅は午後9時を回った頃。土日のいずれかは仕事――。1人目と2人目が生まれた時は、そんな生活でした。「正直に言えば、育休という選択肢が浮かびませんでした。仕事は忙しく、自分が抜けると同僚が苦しむと思いました」

ただ、家庭の負担が妻に偏っていることに心苦しさもありました。

成川さんは、3人目の子どもが生まれた際、初めて育休を取りました=本人提供
成川さんは、3人目の子どもが生まれた際、初めて育休を取りました=本人提供

3人目の子どもが生まれた頃、成川さんは2人目までとは別の職場へ異動していました。変わらず多忙で、同僚への負担は大きいものの、前の環境に比べて人手もあると感じていました。

妻の妊娠が分かると、早い段階で上司に育休を取得したいと相談。仕事の段取りがつくように調整しました。3人目の子どもが生まれた2020年の夏から1年間、育休を取得しました。

誤飲の警戒、トイレも行けず

こうして取った育休の当初は、充実した日々だったと振り返ります。「ミルクをあげたり、幼稚園の送り迎えをしたり、親として、日常の子育てに関わることができ新鮮な日々でした」

同時に、終わりのない家事、気が休まらない子育てと、日ごろの妻の負担を実感しました。「危ないものをのみ込まないか」と警戒していると気軽にトイレも行けず、心身がすりへるのが分かりました。「復職後、自分はキャリアを築けるのだろうか」。そんな不安もよぎりました。妻に限らず、多くの女性が負担し、直面している困難だとも思いました。

考え方の「アップデート」、育休広めたい

育休は、子育ての喜びを感じ、女性の困難を実感する機会にもなり、見える風景が変わる――。成川さんは、考え方が「アップデート」される感覚があったそうです。

ところが、男性の取得率は約13%。もっと育休を広めたいと思うようになりました。

そこで考えたのが体験をまとめた「育休本」の出版でした。SNSで出版を呼びかけ、「プロジェクト」として立ち上げたのは2020年12月。SNSのコミュニティを通じて執筆者を募るなどして、計15人の体験をまとめることになりました。並行して「署名」で出版を応援してくれる人も募りました。

今年4月、『なぜパパは10日間の育休が取れないのか?』(マスターピース)というタイトルで出版されました。400人を超える人が「署名」したといいます。

『なぜパパは10日間の育休が取れないのか?』(マスターピース)
『なぜパパは10日間の育休が取れないのか?』(マスターピース)

執筆者は主に男性で、管理職や看護師ら。各自が育休体験をつづり、成川さんがコメントする構成になっています。

体験談は、育休の「前」「中」「後」に分けてまとめられています。目次には、「上司や会社と、育休への思いを共有しておく」(育休前)、「パパのワンオペ育児を知る」(育休中)、「いよいよ仕事に復帰。家庭との両立は?」(育休後)などの言葉が並びます。

「いろいろな事例を知ってもらうことで、制度が整った企業に勤める人や家事や子育てに関心の高い人だけでなく、多くの人に身近なものと感じてもらいたいです」と話します。

育休は「リモートワーク」?

「育休本」も完成間近。そんな時、妻にこう伝えられます。

「夜の9時以降になると、部屋にこもっているよね? 『育休本』の作製みたいだけど、うちの子どもはまだ起きているよ」

「育休を取って仕事から離れたのではなく、リモートワークになっただけでは?」

成川さんは育休本を作製するため、執筆者との打ち合わせや、原稿を書くなどの作業を夜の9時から行っていました。妻のこの指摘に、成川さんは思い当たることがありました。

喜びに満ちていた育休。しかし、1カ月もすると心に穴が空いたような感覚に陥ります。「むなしいというか、世間から切り離された感覚がありました。仕事での『達成感』のようなものを、本作りに求めていたのかもしれません」。妻の指摘は、成川さんの本心を見透かしているようでした。

妻に気持ちを聞いた

――なぜ、気持ちを伝えたのですか。

「日中は家事や育児を頑張ってくれているのが伝わりました。でも、夜の9時になると自分のことを優先する夫がいました。自分の気持ちは伝えたいと思いました」

――言ってみて変化は?
「人が変わりました。夜に予定を入れないのはもちろんのこと、あれだけ触っていたケータイを、日中は、リビングにおいて置くようになりました」

成川さんと妻の敦子さん、子どもたち=本人提供
成川さんと妻の敦子さん、子どもたち=本人提供

――育休後の関わりと思いは?

「帰ってきて、『家のこと、大変だったよね?』とねぎらってくれます。育休を取っていなかったら、そんな思いや言葉は出てこなかったのかなぁと。仕事をしていても子育てしている私に感謝してくれることに、私も感謝しています」

「結婚するまでも、結婚してからも、ずっと一緒にいる機会はありませんでした。じっくり穏やかに話せる時間があり、子育てに関する考え方をすり合わせることができました」

笑い合える瞬間 大好きです

成川さんは、こうした一連のやりとりを妻からの「手紙」として本に収めました。「前略 夜の9時になったらどこかへ消えてしまうあなたへ」。そんな書き出しで始まり、部屋にこもってしまうという指摘、日ごろの感謝などがつづられています。

やりとりの中で妻がもらした言葉も盛り込まれています。

「あなたとのたわいのない会話やちょっとしたことで笑い合える瞬間も大好きです」

「本が完成したら、のんびり過ごすひとときがあるといいなぁ」

家族の最適解を見つけてほしい

最後に成川さんに聞きました。なぜ、耳の痛いこともあえて採録したのですか?

「偉そうに育休本を書きましたが、実際はうまくいかないこともたくさんあります。だから、夫婦でバランスをとりながら、たくさん話し合いをして、ぶつかって、2人の、家族の最適解を見つけてほしいという願いを込めました」

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共働き世帯が増え、家事や育児を分かち合うようになり、「父親」もまた、モヤモヤすることがあります。それらを語り、変えようとすることは、誰にとっても生きやすい社会づくりにつながると思い、この企画は始まりました。あなたのモヤモヤ、聞かせてください。
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