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出自が悲しすぎる…大崎駅マスコットキャラ「自虐」ポスターが人気
駅員の〝勘違い〟活かす逆転の発想
JR大崎駅のマスコットキャラクター、ウサギの「おうさき」。その悲しい出自を自虐的に解説するポスターが、ツイッター上で好評を博しています。どこまでも気の毒な内容なのに、読み終えたら、たまらなく愛おしくなる。同情と共感を集めた掲示物の制作背景について、JR東日本を取材しました。(withnews編集部・神戸郁人)
おうさきは、ピンク色のウサギです。実在の駅員をイメージした、ジャケットとネクタイを身につけています。更に「大」と書かれた帽子を被り、列車に合図を送る赤色の手旗も持っています。
特徴的なのが、その表情。眉毛はハの字型に垂れ下がり、帽子同様「大」の字を描く鼻と口との組み合わせが、何とも寂しげです。隠しきれない哀愁が、見る者に形容しがたい印象を与えます。
今月11月下旬、大崎駅構内に貼り出されている、おうさきのポスター画像がツイッター上に投稿されました。
「おうさき誕生の裏にはさらに悲しいエピソードがあった…」。意味深な書き出しに続き、企画担当者らの会話が、スマートフォンのメッセージアプリ風の吹き出しで表現されています。
動物をモチーフとした、大崎駅のオリジナルキャラを思案中の「社員A」。「おおさき」とキツネを組み合わせ、「おおさきつね」と名付けるアイデアを温めていました。
ある日、描き上げたイラストを、同僚の「社員B」に見せます。返ってきた答えは「かわいいですね! このうさぎ!」。予想外の反応に戸惑い、キツネと訂正する社員Aを尻目に、社員Bはショッキングな発言を重ねます。
「きつねにしては下手ですね」「おおさき、うさぎ…『おうさき』なんてどうですか?」。社員Aは、内心腹立たしく思いつつ、「こいつむかつくけどセンスあるな」と感心した様子です。続けて、おうさきが作られた旨がつづられます。
「悲しい社員から生まれた悲しい顔のおうさきを、今後も応援よろしくお願いします」。ポスターは、そんな一文で結ばれています。この内容に「可哀想だけど可愛い」「裏話を教えてくれてありがとう」などの感想が上がりました。
JR東日本によると、大崎駅は今年2月25日、開業120周年を迎えました。これに先立つ昨年8月、利用客に駅への親近感を持ってもらうため、おうさきが考案されたのです。
しかしマスコットキャラクターであるにもかかわらず、なぜ表情が冴えないのでしょうか。
大崎駅の利用客には、同駅発着の列車に誤って乗り、目的地に行けず不満を持つ人もいます。そこで、おうさきの公式設定を「『大崎駅止まりの山手線はいらない』などと言われ続け、悲しさから眉毛が下がってしまった」としました。
昨年9月、こうした内容をポスターで告知すると、その不遇ぶりも相まって、ネット上を中心に注目を集めました。そして同年10月、今回話題を呼んだ、新ポスターの公開に至ったのです。
「ただ可愛いだけでなく、お客様に、キャラクターをきっかけとして大崎駅に親しみを持って頂きたいと思い、作成しました」と大崎駅の担当者。ユーモアを織り交ぜるため、実際になされた社員同士の会話を採り上げたといいます。
駅構内に掲示すると、利用客から「おうさき可愛いですね」との声が、改札口などで直接寄せられるようになったそうです。「『おおさきつね』より『おうさき』の方が呼びやすく、結果的に大正解だった」と担当者も喜びました。
ところで大崎駅と言えば、都内有数のオフィス街です。ビッグネームである品川・五反田両駅に挟まれ、埋没しがちな側面もあります。しかし同社によれば、周辺にはカフェや公園など、親子で楽しめるスポットが少なくありません。
同駅ではハッシュタグ「#おうさきを笑顔に」を付け、駅や地域の魅力についてツイートしてもらうよう、利用者に呼びかけています。おうさきのしょんぼり顔がほころぶほど、大崎に好意的な情報を発信して欲しい、との意図です。
おうさきが笑顔になるには、何が必要ですか――。担当者に尋ねると、次のような答えが返ってきました。
「どうしたらおうさきが笑えるかについて、基準は設けていません。お客様が大崎駅を利用し、好きになってくれることが理想です」
「お客様に『大崎駅を利用して良かった』『また利用したい」と思って頂けるように、大崎駅社員一同で、より良いサービスの提供に努めていきます」
おうさきの出自にまつわるポスターは現在、大崎駅の南改札口に掲出中です。
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