MENU CLOSE

連載

#79 #となりの外国人

「なんでもOK」のルール 親の服、日本のフツウが分からない

外国人ママが浮いた「黒っぽい」世界

「周りの人はみんな黒や紺の服。明るい色を着た私は、みんなの中ですごく目立ってしまいました」(イラスト・逸見恒沙子)
「周りの人はみんな黒や紺の服。明るい色を着た私は、みんなの中ですごく目立ってしまいました」(イラスト・逸見恒沙子)

目次

教科書にも、辞書にも載っていない「日本のフツウ」。違う文化で育ち、日本で子育てをしている外国人親たちが集まる子育て勉強会を見ると、そんな「フツウ」が、実は誰にとっても、ちょっときゅうくつだったかも、ということに気付かされます。「学校行事」の回では、「親が着て行く服」が話題になりました。来日16年、日本で3人の子を育てるモンゴル人ママ、ザヤさんの経験談です。

【PR】進む「障害開示」研究 心のバリアフリーを進めるために大事なこと
日本のフツウ?


フォーマルな服
式典では、子どもたちが主役。親は「何を着ても良い」と言われても、目立たないように、しなくてはいけません。黒とか紺だと間違いないです。入学式などうれしい日は、胸に小さな花を付けると良いです。

 
イラスト・逸見恒沙子
イラスト・逸見恒沙子

よそ行きのワンピースでも

日本で子育てしている外国人ママがよくわからないのが、「学校行事」に着て行く服です。

子どもが幼稚園のころ、他の人と違う服で恥ずかしかったことが何度もありました。

幼稚園のイベントのときです。幼稚園の手紙に、子どもの服装のことは書かれていましたが、親の服装については書かれていませんでした。周りのママ友に聞いたら「ちゃんとした服なら、なんでもいいよ」と言われたので、よそ行きのオレンジのワンピースを着ていきました。

だけど、当日行ってみると、周りの人はみんな黒や紺の服。明るい色を着た私は、みんなの中ですごく目立ってしまいました。

(イラスト・逸見恒沙子)
(イラスト・逸見恒沙子)

実は、子どもの通う幼稚園はお寺の幼稚園でした。そのイベントは、お寺でのお祈りの行事でした。今はそういうことも知っていますが、そのときは分かりませんでした。オレンジの服は写真にも残ってしまい、恥ずかしかったです。

また、卒業式のときにも同じようなことがありました。卒業式はうれしい日だと思って、私はきれいな白い服を着て行きました。だけどそのときも、周りの人はみんな黒っぽい服でした。このときは子どもからも「恥ずかしかった」と言われて、やってしまった、と思いました。日本人のママ友にそのことを話すと、「卒業式はお別れをする式だから、白は着ないんだよ」と言われました。

「フツウ」が分からないと、なれない「フツウ」

日本に住むモンゴル人の友人も、やはり卒業式に赤い服を着て行って目立ってしまったことがあると言っていました。

モンゴルでは学校行事に、親も明るい色の服を着ます。卒業や入学などは「子どもの成長を祝う」とき。特にモンゴルでは赤が「めでたい色」なので、着ることが多いです。うれしいときには、うれしい色でお祝いする、というのがモンゴルの考え方です。

もちろん、私も日本に来たら日本のマナーを守って行動したいと思っていました。それでもそのときは、どんな服が「フツウ」か分かりませんでした。インターネットで調べようとしても、どんなキーワードで検索すればいいかわからなかったです。言葉を教えてもらっても、私は日本語の発音が良くないので、音声入力でも認識してくれません。ママ友にもうまく聞けなかったです。

どんな服を着るのが「フツウ」か、写真やイラストでわかりやすく知る機会があれば、わかったと思います。その経験があったから、外国人ママの勉強会では、「フォーマル 入学式」のキーワードで画像検索して、出てきた写真をみんなで見ました。最初「服装がわからない」と言っていた外国人ママたちも、その写真を見てすぐに「わかった」と言っていました。

イラスト・逸見恒沙子
イラスト・逸見恒沙子

モンゴルと日本、それぞれの「フツウ」

でも、なんで日本は暗い色なのかなあと、今も時々思います。うれしい気持ちを抑えないといけない気がして、ちょっと不思議な感じがします。

ちなみにモンゴルは、9月1日が進学や進級の日です。その日は学校のことだけでなく「子どもの成長」そのものをお祝いする一日です。町中がお祭りのようになります。

9月1日、子どもは頭にリボンで作った大きな花をつけます。服も女の子はドレスを着て、着飾ります。子どもが学校に着飾って行かないといけないので、それはそれで大変です。日本ではそういう準備はないので、そこは楽だなと思います。日本とモンゴルで「フツウ」が違って、それぞれ大変なところ、楽しいところがあるんだねと思います。

イラスト・逸見恒沙子
イラスト・逸見恒沙子
ひらがなネットめも


私たち日本人はよく「なんでもいいよ」「ちゃんとした服」などの曖昧な言葉を使っています。同じ常識を共有している人同士であれば伝わりますが、別の文化で育った外国人にとっては難しい表現です。

日本の文化にあわせようとがんばっている外国人は多いですが、それでもわからないことはたくさんあります。写真やイラストで具体例を見せながら説明すると伝わりやすいです。

ただ、ときには相手を尊重して「それで大丈夫」と言えるといいですね。

「フツウ」を求める雰囲気が行き過ぎると、外国人に限らず、子どもや若い世代にとっても息苦しい社会になる気がしてなりません。ほかの人と違ったときに、それが「失敗」ではなく、「それでもいいじゃない」と本人もまわりも思えるようにしていくのが、これからの「多文化共生社会」ではないかなと思います。

 

【#日本のフツウが分からない】この記事はひらがなネットとの共同企画です。子育てやご近所づきあい、仕事……。日本では「常識」として、言葉にしていない独特の文化があります。でも、「当たり前」だと思って飲み込んでいるだけなのかもしれません。育った文化や習慣と違う日本で生活している外国人ママたちの視点でみると、不思議なものとしてうつっている「日本のフツウ」。どうしたらみんなにとって生きやすい社会になるのか、一緒に見つめてみませんか?

記事の感想やあなたがモヤモヤしていることを、#日本のフツウが分からない を付けてツイートしてください

 
 

連載 #となりの外国人

その他の連載コンテンツ その他の連載コンテンツ

全連載一覧から探す。 全連載一覧から探す。

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます