取材リクエスト内容
ミュージカル映画が苦手です。いきなり歌ったり踊ったりするのはなぜなんでしょうか。恥ずかしくなってしまいます。調べてほしいです。 アニメ好き
記者がお答えします!
ミュージカル映画を観ていて、ふと「どうして急に歌いだすんだろう」と素朴な疑問を覚えたことはありませんか? 中にはそれが原因で苦手意識を持つ人も。ミュージカル映画を楽しむにはどうしたらいいのでしょうか。ディズニー最新作のファンタジー・ミュージカル映画『ミラベルと魔法だらけの家』でプロデューサーを務めたイヴェット・メリノさんにそんな質問をぶつけてみました。(withnews編集部・朽木誠一郎)
歌とダンスは何のため?
こうしたミュージカル映画の演出を「照れくさい」ように感じる人もいますよね。よく聞いてくれました。
私はミュージカル映画の音楽というのは「説明をしてくれる音楽」だと思っています。そこで登場人物がどんなことを感じ、どんなことを考えているかについての洞察力を与えてくれるものですね。
もちろん、ミュージカルに限らず、音楽は映画の中で少なからずこうした役割を果たしていますが、ミュージカル映画においては特に「ただ聴くため」に流れ、物語が進んでいくとその中に吸収されてしまう、といったものではありません。
つまり、歌とダンスという別の方法で、ただ登場人物が語る、振る舞う以上のことを、観客のみなさんに伝えている。それが作中の歌やダンスを通じて行われることなんです。
違和感が生まれる理由は…
まずは、音楽がちゃんとストーリーを補完する役割を果たしていること。その上で、楽曲そのものが、一緒に歌うことができたり、ダンスできたりするような、人の心を捉えるものであることが重要です。
『ミラベルと魔法だらけの家』ではグラミー賞などの受賞者で『モアナと伝説の海』の音楽も制作した、リン=マニュエル・ミランダに制作のごく初期から参加してもらうことができました。これはディズニーの映画の作り方においては珍しいことです。
彼は一つひとつの楽曲の中にストーリーの要素を入れることに非常に長けています。例えば、この映画には12人家族が登場します。それぞれわかりやすく違った性格を持ちながら、観客のみなさんがどこかで共感してくれるようなポイントが少しずつ散りばめてあります。
そこに自分自身の姿や自分の家族の姿を見てもらうためにも、音楽があります。作中の舞台である南米の伝統的な音楽に限らず、リンはレゲエ調だったり、現代的だったり、フォークソングを思わせたりするものまで、幅広い楽曲を制作してくれました。
作詞作曲家であり、劇作家であり、歌手、俳優であるリンには何と言うか、物語を語ることと音楽を奏でることを一緒にできる才能があるんです。物語は物語、音楽は音楽で別々に制作するのではなく、物語と音楽を一緒に形作ることにより、音楽が違和感なく物語に溶け込むのではないでしょうか。
奥深いテーマだからこそ
それは実際に作品のテーマの一つです。多くの人がその葛藤を感じる中、主人公であり、家族の中で唯一、魔法の力を持たないミラベルに、自分自身を投影する人が多いかもしれません。
私自身そういう戦いをしてきました。例えばその時々の仕事で、どこに自分の居場所を見つけて収まるのか。でも今になって思うのは、「特別な存在になる=自分の居場所を見つける」ことだと考えてみたときに、「ありのままでいる」ことと「自分の居場所を見つける」「特別な存在になる」ことは両立するということです。
この作品を通してミラベルが見つけていくのは、そしてそれは誰でも成長して学んでいくことと同義ですが、ありたい自分を見つけて、その自分自身になること。そしてそれが彼女のギフト(才能)であるということなんですね。ありのままの自分自身でいることが、すでに特別だと、冒険を通じて理解するのです。
今作は家族についての物語です。その中に冒険やミステリー、コメディーが溢れています。ミュージカル映画が苦手だと思う方にもぜひ、観ていただけたらうれしいです。
※配信時、『ミラベルと魔法だらけの家』の登場人物の名称を「ミランダ」としていたものを「ミラベル」に修正しました。(11月27日21:55)