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#2 #これからの育休

「男は稼ぐ」から男性育休〝急上昇〟の企業 次の一手は「15万円」

3カ月の育休を取得し、3人目の子どもを育てる技研製作所の濱田翔太さん=本人提供
3カ月の育休を取得し、3人目の子どもを育てる技研製作所の濱田翔太さん=本人提供

目次

 

withnews、GLOBE+、BuzzFeedは、3メディア共同で「#これからの育休」を考える記事を配信します。 11月19日は国際男性デーです。2022年4月には育休にまつわる様々なルールの改正がはじまります。 この機会に、男性育休について一緒に考えてみませんか。
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四国地方のある企業は、2018年度まで男性の育休取得率は「ゼロ」。ところが、20年度は6割を超えました。今年度は「3カ月以上の育休取得者に15万円支給」の制度を創設。さらなる後押しをしています。「これからの育休」を考えるため、男性育休で〝急成長〟を遂げる会社を取材しました。

男性育休、申し出にくい環境だった

高知市の「技研製作所」は、建設機械メーカー。1967年の創業で、従業員は約490人(今年8月末時点)です。

男性社員が8割以上の会社で、かつては「男性が育休を取得するという概念が相当薄い企業でした」(同社)と振り返ります。事実、2018年度まで、男性で育休を取った社員は「ゼロ」でした。

「配偶者が出産しても男性は継続して働くことが常態化しており、育休を取得したくとも申し出にくい環境となっていました」(同社)

高知市に本社がある技研製作所=同社ホームページから
高知市に本社がある技研製作所=同社ホームページから

働き方見直し→男性育休も促進へ

流れを変えたのが、19年6月に発足した男性育休を推進するための部門横断型のチームでした。数名の社員がメンバーでした。

同社では前年の18年から女性が働きやすい環境整備を進めていました。そのためには、仕事の「属人化」を見直し、業務の棚卸しを進めていくことが不可欠。そんな戦略を描く中で、男性育休の推進もその助けになると考えました。

男性育休推進のチームが取り組んだのが、課題のあぶり出しです。

社員を対象にアンケートを実施しました。

回答者のうち、育休は取得しなかったものの制度の対象になったと見込まれる男性社員は101人。「『今思い返すと、育休を取得したかった・取得しても良かった』と思いますか?」の問いに、「思う」と答えたのは60人、「思わない」と答えたのは41人でした。

チームのメンバーで人事課の池内彩香さんは「条件が整えば育休取得にポジティブな人が多いのだと思いました」

【「思う」と答えた人の理由】
・妻の負担が大きすぎた
・子育てへの関与が薄かったと後悔しているから
・夫婦でお互いに意見交換できる機会が増えると考えるため

【「思わない」と答えた人の理由】
・自分の仕事が忙しすぎて離れられない
・周りに迷惑がかかるから
・男は外で金を稼いでくるものと思っていたから

男性の取得率 0%→30%→62%

課題の洗い出しとあわせ、男性育休の取得推進を宣言。上司や同僚に対して「育休、取るの?」ではなく「育休、いつ取るの?」と取得を前提として声かけをするよう働きかけるなど、「掛け声倒れ」にならないようにしました。

全社的な取り組みを進めた結果、19年度30%、20年度62%と、取得率は急上昇。育休の取得期間は、19年度は平均で約110日、20年度は約61日でした。全国平均では2週間未満の男性が7割を占める中、非常に長いのが特徴です。

就活生が男性育休に関する取り組みを好意的に見ていたり、投資家から好評だったりと、経営にもプラスの影響があったそうです。

同社はさらに、今年の秋に3カ月以上の育休取得者に15万円を支給する「育児休業支援金」を創設しました。男性だけでなく女性も対象です。

手取りの9割をカバー

同社が実施した育休に関するアンケートでも、「『今思い返すと、育休を取得したかった・取得しても良かった』と思いますか?」の問いで「思わない」と答えた理由として挙がったのが収入減です。自由記述で問うと、「経済的な負担がかかる」「給料が減る」といった回答がありました。

育児休業の場合、雇用保険から「育児休業給付金」が支払われます。上限はあるものの、開始から半年間は実質、手取りの8割相当がカバーされます。

ただ、全額をカバーできるわけではありません。子育ての出費もかさむ中、減額の影響は無視できません。「収入が減少してしまうことに不安を覚える社員は少なくありません」(同社)

同社が創設した「支援金」を加えると、シミュレーションでは手取りの9割以上を確保できる計算だそうです。

社員のモチベーション、パフォーマンスアップ。環境整備のための属人化と業務の見直し、それによる生産性の向上といった観点から、同社は15万円を支給する「価値」があると判断したそうです。

上乗せの支給「ホッとした」

購買管理課の濱田翔太さん(33)は、3人目の子どもが生まれた今夏、3カ月の育休を取得しました。同社の男性では、「育児休業支援金」の対象者第1号です。

1人目と2人目の時は、別の会社にいて1~2週間程度の育休を取得。今回も2週間程度を想定していましたが、上司から長期の取得を促され、3カ月の取得を決めました。

「手取りが減ることで、将来に向けた積み立てに影響が出るかと心配しました。会社から上積みの支給があり、ホッとしました」

濱田さんの妻(31)は専業主婦。濱田さんは、3カ月の育休を経て日ごろの家事や育児の大変さが身に染みたそうです。「洗濯一つ取っても、干し方が悪ければシワが残る。手間を実感しました」。妻からは「子育てのストレスがまったく違う」と感謝をされたそうです。

育休を取得し、3人目の子どもを育てる濱田さん=本人提供
育休を取得し、3人目の子どもを育てる濱田さん=本人提供

3カ月取得、復帰後の働き方も変化

濱田さんは育休の復帰後、家事や子育てへの関わり方が育休前と比べて変わったと話します。長めの取得によって、意識が変わったそうです。

「まず、少しでも早く帰ろうという意識になりました。仕事の疲れが残っているのも事実ですが、洗濯物をたたんだり、家の片付けをしたり。子どもが泣けばすぐに抱っこ。自宅での動きも変わりました」

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