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連載

#42 「きょうも回してる?」

船橋市民しか分からない「船橋ガチャ」 さざんかさっちゃん…誰だ?

開発者が温めてきた〝ひとつの夢〟

モチーフや販売場所を千葉県船橋市に特化した「街ガチャ in 船橋」。QRコード決済で購入する「キャッシュレス」対応となっている=筆者撮影
モチーフや販売場所を千葉県船橋市に特化した「街ガチャ in 船橋」。QRコード決済で購入する「キャッシュレス」対応となっている=筆者撮影

目次

人気のアイテムや定番のグッズにつきものな「ご当地○○」ですが、ガチャガチャの世界にもあります。しかも最近、ご当地の範囲が都道府県よりもピンポイントになってきました。10月に登場したのは千葉県船橋市の名所や名物限定のガチャガチャです。「ふなばしアンデルセン公園」や「さざんかさっちゃん」などがモチーフになった異色のラインナップをガチャガチャ評論家のおまつさん(@gashaponmani)が取材をすると、作り手のあふれる「船橋愛」がありました。
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ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」

注目集める「ご当地ガチャ」

デジタル化が進むにつれ、私たちはより快適な生活ができるようになりました。ただ、1965年に国内で販売が始まったガチャガチャは今でも、硬貨を入れて購入するアナログ的な方法が一般的です。そんななか、電子マネーで購入できるデジタル式の筐体も少しずつですが登場しています。

また、ガチャガチャは筐体を置けるスペースさえ確保すれば、商品をアピールできます。このビジネスツールとしての魅力を生かした地域活性化が注目を集めています。ご当地ガチャです。

ご当地のガチャガチャは、以前からメーカーが国内の名所・名産として販売をしていました。しかし今は特定の地域をピンポイントで選んだものが出てきています。

先駆けは、3月に発売されたさいたま市大宮区の名所などをキーホルダーにした「大宮ガチャ」です。9月には「浦和ガチャ」も発売されました。いずれも「NACK5スタジアム大宮」「伊勢丹浦和店」など、ニッチだけど地元民に愛されているスポットやキャラクターを押さえています。

地元民に愛されているモチーフが並ぶ「大宮ガチャ」=提供
地元民に愛されているモチーフが並ぶ「大宮ガチャ」=提供 出典: 朝日新聞社

船橋ゆかりの4人が集結

今回はまちおこしのため、ガチャガチャを活用したプロジェクト「街ガチャ in 船橋(以下、街ガチャ)」を紹介します。

街ガチャを作るために、立ち上がったメンバーは、日本ガチャガチャ協会の小野尾勝彦さんを中心に、筐体などに関わった「Techガチャ研究所」の坂本慶一さん、イラスト関連を担ったイラストレーターの本間泰雄さん、商品にするモチーフの選定や設置場所の調整などを取り仕切った船橋市観光協会事務局長の栗田文彦さんです。

千葉県船橋市に特化したガチャガチャ「街ガチャ in 船橋」=筆者撮影
千葉県船橋市に特化したガチャガチャ「街ガチャ in 船橋」=筆者撮影

きっかけは、今回の製造・販売元の「あミューズ」(愛知県刈谷市)から小野尾さんに持ち掛けられた商品開発の相談からでした。

プロジェクトのメンバー4人は船橋在住または船橋出身です。とくに小野尾さんは船橋出身の船橋育ち。メーカーで28年間、ガチャガチャ事業に携わってきました。

小野尾さんにはひとつの夢がありました。ガチャガチャを通じた地元への貢献です。

「船橋で生まれ、船橋で育ちました。誰よりも船橋愛があります。船橋の魅力を知ってもらおうと考えたときにご当地ガチャがマッチすると思ったんです」

街ガチャに関わった坂本さん(左)と小野尾さん=筆者撮影
街ガチャに関わった坂本さん(左)と小野尾さん=筆者撮影

ニッチすぎるモチーフに魅力

小野尾さんの提案を受けた栗田さんは「直感で間違いなくウケると感じました」とすぐさまプロジェクトのゴーサインを出したそうです。この決断の速さが、大きなポイントになりました。

一般的にガチャガチャの商品は企画から発売まで、早くても半年以上はかかります。街ガチャは今年7月から実現に向けて動き出し、発売したのは10月です。新型コロナの影響がありながらも、異例の早さで商品化できたのは、メンバーの連携がうまくいったからでした。

キーホルダーにした街ガチャの特徴は、船橋の名所や名物など10点を船橋在住のイラストレーターが描き下ろしたことです。この10点のなかには、船橋駅構内の待ち合わせ場所になっている「さざんかさっちゃん」像のイラストもあります。

……といっても正直、他県の人は分かりませんし、船橋市民しか知らない場所です。街ガチャにはニッチすぎて何とも言えないシュール感が漂ってきます。ただ、地元民の愛着を深めるとともに、なぜか船橋以外の人も関心を抱いてしまう魅力がイラストにはありました。

船橋駅の「さざんかさっちゃん」像も街ガチャに=筆者撮影
船橋駅の「さざんかさっちゃん」像も街ガチャに=筆者撮影

反響に喜び

栗田さんはさらに、商品化の決め手について「キャッシュレス」と「環境への対応」を挙げます。

キャッシュレスについては、Techガチャ研究所の製品のひとつである「ピピットガチャ」を使用しています。硬貨を入れて購入する形ではなく、QRコード決済です。コロナ禍での接触を避けるという意味で、ピピットガチャは適した筐体だと言えます。

またカプセルには、以前コラムで紹介した「AMバイオカプセル」が使われています。このカプセルは、自然界の土中の微生物の力で水と二酸化炭素に分解される生分解性のプラスチックが原材料です。栗田さんは「ガチャガチャのカプセルが捨てられることについて、前から気になっていましたが、生分解性プラスチックのカプセルを使う提案をしていただき課題は解決されました」と話します。

船橋市内のみで販売を開始すると、反響が大きく1カ月で3千個が売れたそうです。小野尾さんは「想像していたよりも、商品のクオリティが高い仕上がりになっています。発売する前は正直、売れるのか心配していましたが、販売が好調で安心しました。設置したお店の人もテンションが高く、喜んでもらっています。今後シリーズ化していきたいです」と話してくれました。

ピピットガチャは販売状況をデータで把握できるため、在庫が無くなった際には、栗田さんが一部の場所については、自転車で回って補充しています。「補充する際に、お店の人とのコミュニケーションを取るきっかけになります」(栗田さん)と、地元のふれあいを大切にする姿勢が見て取れました。

モチーフの一つとなった森田呉服店の売り場=小野尾さん提供
モチーフの一つとなった森田呉服店の売り場=小野尾さん提供

船橋に特化した街ガチャは、船橋市民による船橋市民のための地元愛があふれたガチャガチャでした。現在、第2弾のイラストのモチーフを選定中だそうです。

     ◇

街ガチャ in 船橋は、船橋大神宮灯明台▽森田呉服店▽廣瀬直船堂▽鷹匠橋▽喫茶モナリザ▽西船名物小松菜ハイボール▽さざんかさっちゃん▽ふなばしアンデルセン公園▽飛ノ台史跡公園博物館▽割烹旅館玉川の全10種類。1回300円。

ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」
この連載は、20年以上業界を取材しトレンドをチェックしているおまつさんが注目するガチャガチャを毎週金曜日(原則)に紹介していきます。

     ◇
ガチャガチャ評論家・おまつ(@gashaponmani
ガチャガチャ業界や商品などをSNSで発信中。著書に「ガチャポンのアイディアノートーなんでこれつくったの?ー」(オークラ出版)。テレビやラジオなどのメディアへの出演や素材提供も多数ある。

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