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#1 #これからの育休

「同じ境遇を知るだけで安心」パパ友コミュニティー作った父親の思い

主体的に育児に関わる父親が増えていますが、「パパ友」が身近にいないケースも。自らコミュニティーをつくった男性に話を聞きました(画像はイメージ)
主体的に育児に関わる父親が増えていますが、「パパ友」が身近にいないケースも。自らコミュニティーをつくった男性に話を聞きました(画像はイメージ) 出典: Getty Images

目次

 

withnews、GLOBE+、BuzzFeedは、3メディア共同で「#これからの育休」を考える記事を配信します。 11月19日は国際男性デーです。2022年4月には育休にまつわる様々なルールの改正がはじまります。 この機会に、男性育休について一緒に考えてみませんか。
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2020年度は12.65%と、過去最高になった男性の育休取得率。とは言え、有休などを利用する「隠れ育休」を含めても、女性に比べてまだ少ないです。東京都内に住む2児の父親(37)は昨年、子育てに関する発信をSNSで始め、今では約160人がいる男性育児に関するコミュニティーを運営しています。背景には、地域や職場で心から話せる「パパ友」の少なさがありました。

SlackやZoomでパパたちが交流

5歳の娘と2歳の息子を育てる金融業の男性は、SNSやブログで「シカゴリラ」という名前で昨年から子育ての発信をするとともに、「パパ育コミュ」の運営を始めました。

パパ育コミュでは、SNSでつながったパパ友たちが中心となって #パパ育 のハッシュタグをつけて発信し合っているほか、希望者はSlackを使って子育ての情報交換や悩み相談を日常的にしています。メンバーの男性のうち約50人が育休を取得。Zoomを使ったオンラインでの雑談会も定期的に開き、子育てに関わる父親たちが気軽に集える場所をめざしています。
パパ達がパパっと出会える場所を目指している「パパ育コミュ」
パパ達がパパっと出会える場所を目指している「パパ育コミュ」 出典:パパ育コミュ

第1子のときは「仕事人間」

男性が発信を始めたのは、息子の誕生とともに初めて育休を取得したときでした。第1子の娘が生まれたときは、「まだ典型的な『仕事人間』でした」と振り返ります。

当時はアメリカの大学院での留学を終え、今の会社で働いて数年が経っていました。部署の一員としてバリバリと働くことを求められ、海外にも毎月のように出張する多忙な日々を過ごしていました。

家にいる時間が少なく、携帯に送られてくる写真で娘の成長を知る日々。育児・家事のほとんどを背負った妻は、心身ともにすり減っていきましたが、男性が気づくことはありませんでした。

寝室で見た妻の涙

娘が生まれて数カ月経ったある日、いつものように残業を終えて夜遅くに帰宅すると、寝室からすすり泣く声が。ふすまを開けると、暗い部屋のなか、妻が娘のそばでさめざめと泣いていました。

「大丈夫? 何かあったの?」と問いかけると、妻は「分からない。ただ、涙があふれてくるの」。このとき男性は、妻に育児・家事の負担がかかり、心身ともに追い詰められた状態であることを知りました。

「なんとかしなくては」。仕事のスタイルをすぐに変えることはできませんでしたが、業務を徐々に見直したり、社内では子育て優先のキャラクターをアピールしたりして、育児・家事に関わる時間を増やしていきました。

第2子誕生で1年間の育休

そして、第2子となる息子の妊娠が分かると、男性は1年間の育休を会社に申し出ました。「できるだけ長く育児に携われる環境をつくりたいと相談して、上司や人事も理解してくれました」

育休を取得して最初の1カ月は「必死だった」という男性。出産後の妻に負担をかけず、できるだけ母体の回復に専念してもらえるように、不器用ながらも幼稚園に通う娘の世話を含めてできる育児と家事は担いました。

2~3カ月後からは、体調が回復してきた妻と役割を分担。このころから、育児に余裕が生まれるようになり、子供の成長を楽しむことができるようになったといいます。「息子の首がすわるようになったり、ずりばいをするようになったり。目に見えて成長する子どもを見ることができました」

子どもたちと水遊びをする男性=本人提供
子どもたちと水遊びをする男性=本人提供

パパ友求めSNSで発信

ただ、そうした育児の楽しさや悩みを語り合える人が周りにはいませんでした。子どもを連れて行く児童館や公園で出会うのは母親ばかり。世間話はしても、本心を打ち明けるようなことは難しかったそうです。

職場には子どもがいる男性の同僚もいましたが、仕事優先で育児の話ができる雰囲気ではありませんでした。妻には「ママ友」ができていて、子育てのみならず趣味の話で意気投合することもしばしば。子育てを通じて心からつながり合える友達がほしいと、男性はTwitterの活用を始めました。

2人の子育てを通じて感じたことを #パパ育 をつけてつぶやいたり、同じように父親が発信しているアカウントをフォローしたり。そうしているうちに、コメントやダイレクトメッセージでやり取りをする「パパ友」が少しずつ増えていきました。「同じような境遇にいる人がいると分かっただけでも気持ちが楽になりました」

本作り通じ結束

一方、父親の育休といっても、職場や家庭の環境によって様々であることを実感していきます。子育てに頑張っている父親たちがリアルに感じていることを広く知ってもらいたい――。霞ヶ関の役所に出向していたときに調査分析をしながら政府刊行物の出版に携わった経験があり、男性育休に関するアンケートが思いつきました。

育休希望の有無や取りたいと思った理由、また断念した人にも理由を尋ねる質問などを作成。つながりのできていたパパ友・ママ友たちが拡散に協力し、400を超える回答が集まりました。

同時に育休を取った父親の体験記も集め、三冊の電子書籍として今年3月に刊行。「最初は軽い気持ちで始めたプロジェクトにたくさんの人が関わってくれて、今のコミュニティーの基盤にもなりました」

書籍刊行後はコミュニティー運営を一緒に担ってくれるメンバーも増え、育児にまつわることを川柳にするイベントなど日々の交流以外にも活動を行っています。10月からは、主に妻の出産を控える男性に向け、メンバーたちが自身の経験を踏まえて父親になる前に知っておきたかったことを伝える「パパ育スクール」という無料オンラインスクールを始めました。

コミュニティーの参加者からは「困ったときに相談できる人がいる」「育休を取っている人が周りにいるだけで心強い」といった感想も寄せられ、「パパ育コミュをやっていてよかった」と男性は実感しています。初めは「家族の時間が減るのでは」と心配していた妻も、子どもが起きる前の早朝に活動するなど家族生活に影響が出ないよう取り組む男性の姿勢を見て、今では応援してくれているそうです。

「育児のやり方に正解はなく、本当に多様だと思っています。だからこそ、楽しさや悩みを共有し、関心を持つ人が増えれば。パパの育児をもっと広めていきたいです」

父親のつながり、ますます必要に

「男性の育休取得率が伸び始め、育児も母親が主体的だったものから、夫婦で主体的に関わるように変化してきました。父親も子育てについての困りごとや悩みを持つ人が増えていますが、子育てをめぐる環境は母親を前提したものがいまだに多く、共有できる場はまだまだ少ないです」

こう語るのは、NPO法人ファザーリング・ジャパン(FJ)の池田浩久さん(44)です。FJでも今年6月に父親同士がつながり、学び合う「ファザーリング・スクール2021」を開講。池田さんは校長を務めています。

2006年に設立されたFJでは過去にも「スクール」が開かれたことがありましたが、当時は男性向けには少なかった育児情報に関する講座が中心でした。今回は、設けた四つのクラスごとにSNSのグループを作成。毎月のプログラム以外に、日常的に交流ができるようにしました。

スクールは10月で修了しましたが、その後に設けたコミュニティー作りを学ぶクラスは定員を超える応募があったといいます。オンラインとともに、子どもも交えた地域での顔が見える関係づくりも大切だと説く池田さん。「父親同士で気軽につながれる存在というのはますます必要になってくるでしょう」と語りました。
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