連載
#1 #これからの育休
「同じ境遇を知るだけで安心」パパ友コミュニティー作った父親の思い
2020年度は12.65%と、過去最高になった男性の育休取得率。とは言え、有休などを利用する「隠れ育休」を含めても、女性に比べてまだ少ないです。東京都内に住む2児の父親(37)は昨年、子育てに関する発信をSNSで始め、今では約160人がいる男性育児に関するコミュニティーを運営しています。背景には、地域や職場で心から話せる「パパ友」の少なさがありました。
男性が発信を始めたのは、息子の誕生とともに初めて育休を取得したときでした。第1子の娘が生まれたときは、「まだ典型的な『仕事人間』でした」と振り返ります。
当時はアメリカの大学院での留学を終え、今の会社で働いて数年が経っていました。部署の一員としてバリバリと働くことを求められ、海外にも毎月のように出張する多忙な日々を過ごしていました。
家にいる時間が少なく、携帯に送られてくる写真で娘の成長を知る日々。育児・家事のほとんどを背負った妻は、心身ともにすり減っていきましたが、男性が気づくことはありませんでした。
娘が生まれて数カ月経ったある日、いつものように残業を終えて夜遅くに帰宅すると、寝室からすすり泣く声が。ふすまを開けると、暗い部屋のなか、妻が娘のそばでさめざめと泣いていました。
「大丈夫? 何かあったの?」と問いかけると、妻は「分からない。ただ、涙があふれてくるの」。このとき男性は、妻に育児・家事の負担がかかり、心身ともに追い詰められた状態であることを知りました。
「なんとかしなくては」。仕事のスタイルをすぐに変えることはできませんでしたが、業務を徐々に見直したり、社内では子育て優先のキャラクターをアピールしたりして、育児・家事に関わる時間を増やしていきました。
そして、第2子となる息子の妊娠が分かると、男性は1年間の育休を会社に申し出ました。「できるだけ長く育児に携われる環境をつくりたいと相談して、上司や人事も理解してくれました」
育休を取得して最初の1カ月は「必死だった」という男性。出産後の妻に負担をかけず、できるだけ母体の回復に専念してもらえるように、不器用ながらも幼稚園に通う娘の世話を含めてできる育児と家事は担いました。
2~3カ月後からは、体調が回復してきた妻と役割を分担。このころから、育児に余裕が生まれるようになり、子供の成長を楽しむことができるようになったといいます。「息子の首がすわるようになったり、ずりばいをするようになったり。目に見えて成長する子どもを見ることができました」
ただ、そうした育児の楽しさや悩みを語り合える人が周りにはいませんでした。子どもを連れて行く児童館や公園で出会うのは母親ばかり。世間話はしても、本心を打ち明けるようなことは難しかったそうです。
職場には子どもがいる男性の同僚もいましたが、仕事優先で育児の話ができる雰囲気ではありませんでした。妻には「ママ友」ができていて、子育てのみならず趣味の話で意気投合することもしばしば。子育てを通じて心からつながり合える友達がほしいと、男性はTwitterの活用を始めました。
2人の子育てを通じて感じたことを #パパ育 をつけてつぶやいたり、同じように父親が発信しているアカウントをフォローしたり。そうしているうちに、コメントやダイレクトメッセージでやり取りをする「パパ友」が少しずつ増えていきました。「同じような境遇にいる人がいると分かっただけでも気持ちが楽になりました」
一方、父親の育休といっても、職場や家庭の環境によって様々であることを実感していきます。子育てに頑張っている父親たちがリアルに感じていることを広く知ってもらいたい――。霞ヶ関の役所に出向していたときに調査分析をしながら政府刊行物の出版に携わった経験があり、男性育休に関するアンケートが思いつきました。
育休希望の有無や取りたいと思った理由、また断念した人にも理由を尋ねる質問などを作成。つながりのできていたパパ友・ママ友たちが拡散に協力し、400を超える回答が集まりました。
同時に育休を取った父親の体験記も集め、三冊の電子書籍として今年3月に刊行。「最初は軽い気持ちで始めたプロジェクトにたくさんの人が関わってくれて、今のコミュニティーの基盤にもなりました」
パパママ535人の声を紡いだ
— シカゴリラ@育休✖️ブログ✖️パパ育コミュ (@chicagoriller) March 8, 2021
「男性育休三部作」出版🎊
男性の育休白書2021
声を大にして言いたいパパママ535人の“つぶやき”
男性の育休体験記2021
15人のパパと1人のママのドキュメンタリー
育休取得者の失敗から学ぶ、知らないと損する「50のこと」
(サバイバルブック)https://t.co/9TwDTmi6PW pic.twitter.com/V4WXFIyLrU
パパ向けの産前の育児講座って本当に少ない。だから、産後の育児で様々な困難に直面することも。そこで、現役のパパが育児をスタートする前に知っておきたかった事をプレパパに対話を通じて伝える機会や仕組みを作りました!#パパ育スクール 参加者20名(無料)募集スタート! pic.twitter.com/EbSEhAiRgt
— シカゴリラ@育休✖️ブログ✖️パパ育コミュ (@chicagoriller) October 9, 2021
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