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ネットの話題

「ヘビは気持ち悪い」と言わないで!パネル設置した飼育係の思い

大人の一言で植えつけられる価値観の怖さ

ヘビを観賞する人に向けられた、ある施設のパネルにつづられている文章が、大きな反響を呼んでいます。
ヘビを観賞する人に向けられた、ある施設のパネルにつづられている文章が、大きな反響を呼んでいます。 出典: 北九州市立水環境館提供

目次

ヘビは気持ち悪い、と言わないで――。そんなメッセージを掲げた、北九州市立水環境館の来館者向けパネルが、SNS上で称賛を得ています。設置の背景には、担当者の切実な思いがありました。(withnews編集部・神戸郁人)

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大人たちに向けられた苦言

水環境館は、JR小倉駅の程近くを流れる紫川(むらさきがわ)沿岸に位置する施設です。紫川の水質改善の歴史を学べる展示があるほか、流域に棲む約70種類・100匹の生き物を飼育。スタッフによる生態解説イベントなども開かれています。

注目を集めているのは、ヘビとトカゲ類を公開する、「爬虫類コーナー」のエリア内に置かれたパネルです。「爬虫類コーナーをご覧の大人の方へ」という見出しから始まります。

“ヘビに対して「気持ち悪い生き物」という印象をお持ちの方は多くいらっしゃいますが、ヘビは美しく、凜々しさが溢れている生き物です”

“お子様(特に未就学の幼児期)は、保護者の方が「気持ち悪い」と言うと、その価値観をずっと植え付けられてしまうことがあります”

そんな文言が続き、「お子様自身から出てくる感情を大切にしてあげてください」と結ばれています。

「大人が子どもの思いを受け止め、理解することが大事」「どんな生き物にも当てはまる」。11月中旬、パネルの画像がツイッター上に出回ると、大きな反響がありました。

水環境館の爬虫類コーナーに設置されたパネル。
水環境館の爬虫類コーナーに設置されたパネル。 出典: 北九州市立水環境館提供

「ヘビに対して申し訳ない」

パネルは、どのような経緯で作られたのでしょうか? 発案から製作までを担った、同館飼育係の福田海輝(かいき)さん(26)を取材しました。

館内では魚類に両生類、爬虫類と、多様な動物を観察できます。週末は日に1千人ほどが訪れ、お気に入りの生き物を眺めに、何度も足を運ぶ人も珍しくありません。

ヘビは近隣で採集し、いずれも無毒である、アオダイショウ・シマヘビ・ジムグリの3種類を展示しています。ただ、姿を目にするや、悲鳴にも似た声を上げる来館者もいるそうです。福田さんは、その点をずっと気にかけていました。

「『気持ち悪い』と連呼する方も、少なくありません。ヘビに対して申し訳ないなと。中でも小さなお子さんの前では、言ってもらいたくないと思っていました」

そこで昨年半ば、シマヘビの生態解説パネル内に、今回話題を呼んだものと同じ文章を記載します。そして新型コロナウイルス流行を受け、今年8~9月に休館した際、文章だけをA1サイズの用紙に印刷。10月の再開館に合わせて掲示しました。

来館者から目立った反応はなかったという、今回のパネル。ネット上で注目を集めたことに、福田さんは「これだけ広がるとは」と戸惑いつつ、喜びを表します。

水環境館内で飼育されているアオダイショウ。
水環境館内で飼育されているアオダイショウ。 出典: 北九州市立水環境館提供

感情を他者に押しつけないで

水環境館ではヘビの体調に配慮しつつ、来館者に触れてもらう機会を提供しています。始めはおっかなびっくり手を出していた子どもが、次第に「可愛い」と、親愛の情を示すようになるのもしばしばだそうです。

「よく見たことがないけれど、何だか気味が悪い。ヘビはそんな風に、負のイメージで語られがちです。ただ身近に感じることで、印象は変わります。手足がない点に合理性があるとも気付く。やはり、刷り込みが強いのかなと思いますね」

ある生き物を見て、一人ひとりが抱く感想は千差万別です。「かっこいい」「気持ち悪い」。どちらも間違いではありません。しかし、その感情を他者に押しつけることは控えて欲しい――。福田さんは、そう訴えます。

1960年代、紫川は工場や家庭の排水により汚染されていました。しかし官民の浄水活動が実り、今や水陸双方で豊かな命が息づいています。ヘビもその一つです。同館ではアオダイショウが繁殖する様子などを、ニュースとして伝えています。

福田さんによれば、野生のヘビは口内に雑菌がいることなどもあり、触らない・近寄らないのが鉄則です。一方で毒を持たず、駆除も不要な個体が、安易に殺されてしまうケースが多発しています。

こうした状況を受け、福田さんは次のように語りました。

「見た目が不快に感じられる生き物は、地球上に必要がない。そう思う人は少なくありません。でも、全ての生き物には価値があります。好きにならなくてもいい。『気持ち悪い』の先に、何か発見があればうれしいですね」

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