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#113 #父親のモヤモヤ
育休取った夫に「愛情増」の妻は2割 「愛情減った」妻の言い分は
withnewsでは2021年9月~10月、「Yahoo!ニュース」を通じて、夫(パートナー)が育休を取った女性を対象にアンケートを実施。Yahoo!ユーザー757人の回答を得ました。
育休を取った夫に対しては「子どもを一緒に育てているという実感がわいた」「ありがとう」など感謝の言葉が並びました。ただ、シビアな本音も見て取れる結果となりました。
回答者の年代をみると、最も多かったのが30代(37%)で、40代(31%)、20代(15%)とつづきました。
夫の育休期間は、2週間未満の人が7割を占めます。これは国の調査とも同じ傾向です。女性は1年程前後取るケースが多く、男性の育休は短いことがみてとれます。
夫の育休中の家事や育児への関わりについて、妻に採点してもらいました。
0点から100点まで20点刻みで評価してもらったところ、最も多かったのは80点(31%=小数点以下四捨五入、以下同じ)でした。次は60点(30%)。100点とした人も12%いました。60点以上の人の割合が7割を超えています。
「育休後」の評価はどうでしょうか。
夫の子育てや家事の分担量について、期待値を「5」とした上で、「0」から「10」で評価してもらいました。
最多は、期待通りの「5」(19%)です。
期待値を上回る「6」以上と評価した人は45%、反対に「4」以下とした人は36%。期待値を上回った人の方が10ポイントほど高い結果となりました。
育休前と育休の後で、愛情の変化もありました。「増えた」19%、「減った」15%です。
「変わらない」と答えた人は66%でした。「いつも愛してる」(40代)、「元々好きじゃない」(30代)といった意見がありました。
愛情が増減した人は、「育休後」の関わりが影響していそうです。
評価が期待より上で「6」以上だった層を「上回り」群(339人)とし、「4」以下を「下回り」群(274人)として比べると、差が明らかです。
「上回り」群では、32%の人が愛情が「増えた」と回答。「下回り」群では、反対に34%の人が「減った」と答えています。両群とも、愛情が「変わらない」と答えた人の割合は6割程度で差がありません。愛情の増減だけ差が出ました。
「出産後、夫への愛情はガクッと下がる」「一部のグループは愛情が回復する」。自身も2回の育休を取得し、2006年に「女性の愛情曲線」について調べた東レ経営研究所特別研究員、渥美由喜さんは次のように話します。
「育休取得は『入り口』に過ぎません。大切なのは、育休中に『いかに子育てが大変か』『家事と同時並行でこなす苦労』を実感した父親たちが、復帰後に継続して子育てや家事に関わり続けるかどうかです。そういう姿勢を維持すれば、結果的に夫婦の愛情危機は乗り越えられます」。渥美さんが調べた「女性の愛情曲線」でも、出産後の家事や育児への関わりが、妻の夫に対する愛情に影響していることを明らかにしています。
渥美さんの調査では、愛情が回復するグループは子どもの高校卒業にかけて、緩やかに愛情が戻っていました。「思春期や受験期をはじめ自立していく過程で、子どもによっては深刻なトラブルや葛藤を抱えます。その時に、母親、父親それぞれ違う視点で子どもを支えて、励ますことが大切です」
渥美さんは、「大変だ合戦を放棄すること」と「相手を主語にして考えるスキル」が特に大切とします。パートナーへの「リスペクト」が生まれることで、夫婦の愛情が長続きするのではないかと指摘します。
渥美さんは、夫婦の愛情に関するこうしたデータが示されることで、子育てや家事に関わることを「特別なこと」と捉えている夫が、「自分は家事や育児をやっているから大丈夫」と慢心するのではないかと危惧しています。「念のためですが、子育てや家事に関わるのは当たり前です。自慢げな言動は、妻の神経を逆なでします」
来年には、父親の育休を促す改正法が施行されます。「ごく短い期間の休みを免罪符のようにして、後は育児も家事も妻任せという父親が増えないことを願っています。それでは、夫婦の溝も深まり、『育休離婚』につながってしまうと懸念します」
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この記事はwithnewsとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。Yahoo!ニュースが実施したアンケートの結果を利用しています。アンケートは全国のYahoo!JAPANユーザーを対象に2021年9~10月に実施しました。
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