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マンガ

「可愛すぎてしんどい」子煩悩な敏腕上司〝妄想〟漫画に大きな反響

「育児への理解」広める問題提起に

目つきの鋭い上司が、ふいに見せた子煩悩ぶりに、悶絶する読者が続出しています。
目つきの鋭い上司が、ふいに見せた子煩悩ぶりに、悶絶する読者が続出しています。 出典: かねもとさんのツイッター(@kanemoto_notice)

目次

職場の上司が、子育てを応援してくれたなら、どれだけ心強いだろう……。そんな思いから生まれたフィクション漫画が、ツイッター上で好評を博しています。主人公は、強面で敏腕な男性社員。厳しそうな見た目とは裏腹に、わが子への愛情が言葉の端々に漏れ出てしまう、子煩悩ぶりが特徴です。育児と仕事の両立が課題となっている、社会の今を映し出した作品の背景について、作者に聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)

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ミーティングで見せた意外な行動

話題を呼んでいるのは、「こういう上司と働きたい妄想」と名付けられた、8ページの漫画です。

主人公は、ある企業で「すごく怖い」と評される男性社員です。今まで、何人もの社員が辞めさせられたらしい――。そんなうわさまで飛び交っています。部下になったばかりの女性は、戦々恐々としながら、新部署で働き始めました。

「優先順位を考えろと言っただろう」「製品の理解もないのに取引先にいって何を話すつもりだ?」。テキパキと仕事をこなす姿に圧倒され、着任のあいさつさえできない女性。すると、男性の電話に着信がありました。

「もしもし」。女性は、男性が耳に当てたスマートフォンの裏側を見つめます。目に入ったのは、ベッタリと貼られた、人気アニメのキャラクターシールでした。どうやら、上司の子どもの仕業のようです。

続いて、部内のミーティングに参加した女性。出席者に業務の進捗報告を求めるなど、男性の行動には、相変わらず隙がありません。しかし、取引先向けのプレゼンについて意見した際、予想外の出来事が起こりました。

「それからプレゼンの内容についてだが、パパは」「……俺は2案でいこうかと思っている」。何と、わが子に話しかける時の一人称を口にしてしまったのです。あまりの愛らしさに、女性も思わず悶絶します。

出典:かねもとさんのツイッター(@kanemoto_notice)

「出社するな」部下にかけた言葉の意味

「これは上司命令だ」「明日から来なくていい! 数日は出社するな!」。あるとき部下の社員に、男性が強い口調でそう言い渡す様子を、女性が目撃しました。

仕事で大きなミスでもしてしまったのか――。

心配した女性が、同僚に事情を尋ねます。返ってきた答えは「お子さんが熱出したんですって」。男性は、看護休暇の許可について伝えていたのです。部下はうれし泣きしながら、社屋を後にしました。

そして女性は、同僚との会話から、男性にまつわる風評の真実を知ります。「何人もの社員が辞めさせられた」というのは、実は間違い。家庭と仕事の両立が難しい社員に、よりサポート体制が整った転職先を紹介していたのでした。

ほかにも、わが子の家事手伝いを褒める花柄のはんこを、決裁文書に押してしまったり、下の子を寝かしつけた疲れから、昼休みに居眠りしてしまったり。作中では、ほほえましいエピソードが次々と披露されます。

「『パパは』が可愛すぎてしんどい」「気がついたら『いいね』押してた」。漫画を紹介するツイートには、好意的な読者の声が連なりました。11月4日時点で、8万近い「いいね」もついています。

出典:かねもとさんのツイッター(@kanemoto_notice)

育児中の親たちの苦悩が原点

漫画の作者は、かねもとさん(@kanemoto_notice)。著書に息子の死がテーマの漫画『私の息子が異世界転生したっぽい』(KADOKAWA)があり、原作者を務める『私の息子が異世界転生したっぽい フルver.』も週刊スピリッツで連載中です。

育児と仕事の両立が難しいとされる現代社会。家庭を大切にしつつ働けるよう、背中を押してくれる上司が、もっと身近にたくさんいてくれたらいい。自身も長男と暮らすかねもとさんは、そんな思いから、今回の作品を手掛けたそうです。

「私はマンガの原作などの仕事をしています。出勤する必要がないため、在宅勤務も可能です。子どものことで仕事を休んだり、業務量をセーブしたりする場合、ある程度融通が利きます。しかし会社勤めだと、難しい部分があります」

「『子どもとの時間を確保しようと早退を続けたら、有休を使い切った』『育児のため休暇を取るたび肩身が狭い』。友人・知人のほか、SNS上でもそうした声に触れます。理解がある上司がいる職場なら悩まないだろうな、と考えました」

男性社員に、特定のモデルはいません。子どもを育て始めてから、うっかりやってしまいがちなことを類型化し、会社での出来事に当てはめました。振る舞いには、かねもとさんの理想を込めています。

出典:かねもとさんのツイッター(@kanemoto_notice)

「くすっと笑って楽しんで」

かねもとさんの漫画には、「こういう上司がいてほしい」といった感想が、数多く寄せられました。反面で「彼のような人物になりたいのに、なれない」と苦悩する、現役管理職とみられる読者のコメントも飛び交っています。

「部下を休ませてあげたい。気兼ねなく子どもと向き合って欲しい。そんな思いを抱きつつ、業務を滞らせたくない企業側との間で、板挟みになっている方もいるのでは。どの職場も余裕がないのだなと、とても心苦しい思いでした」

長時間労働を始めとする、働き方にまつわる諸問題。認可保育園への登録の困難さ。育児中の親子を取り巻く状況は、厳しさを増しています。漫画への反響は、そうした社会情勢を映し出していると、かねもとさんは考えています。

「『育児に理解のある上司がいたらいいな』と思ってもらえたことは、本当にありがたいです。けれど、多くの方がそう願うというのは、苦しい状況で働いていることの表れですよね」

「職場の人間関係や、勤務先の姿勢。そして人々の古い価値観、常識など、色々な要素が絡み合っているのだと思います。一気に解決はできないかもしれませんが、今回の漫画が、問題提起の一助になれば幸いです」

その上で、かねもとさんは「子煩悩な性格が、職場でも見え隠れしてしまう。そんな男性社員のキャラクターと、見た目とのギャップについては、くすっと笑って楽しんでもらえればと思います!」と話しました。

出典:かねもとさんのツイッター(@kanemoto_notice)

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