連載
#12 #今さら聞けない子どもの安全
ベランダ落下事故、防ぐには?子どもが130センチの柵を登れる盲点
締め切らないでもいいグッズも
今月13日、大阪市で4歳の女児がベランダから落下する死亡事故が起きました。ベランダから子どもが落下する事故は後を絶ちません。コロナ禍で在宅ワークも増える中、事故を防ぐために、できることは? 見逃しがちなポイントを、子どもの安全を守る活動をしているNPOの担当者に解説してもらいました。
今月13日、大阪市北区で4歳の女児がマンションのベランダから落下する死亡事故が起きました。
幼い子どもが建物から落下する事故は後を絶ちません。消費者庁によると、9歳以下の子どもが建物から転落して死亡した事故は、2014~18年で37件。特に、5~10月に29件と集中していました。年齢別では、3歳が9人、次いで4歳が7人でした。ベランダからの落下は全体の約半数の15件でした。
消費者庁は昨年9月に、注意喚起の広報を発表しており、「窓を開けたり、ベランダに出る機会が増えたりする夏ごろから、転落事故が増加する」としています。さらに、コロナ禍で換気のため冬でも窓を開ける機会は増えています。消費者庁は「窓が開いた部屋で、子どもだけで遊んでいて発生する事例が多い」と注意喚起をしています。
大阪の事故では、別の場所から椅子をベランダまで移動させた形跡があったといいます。ベランダの柵を越える足場になるような物がないか、注意が必要です。
どんなベランダに危険が潜んでいるのか、子どもの安全を守る活動をするNPO法人Safe Kids Japanが2017年に調査した「ベランダ1000プロジェクト」のパンフレットで紹介されたケースを見ながら理事の大野美喜子さんに解説してもらいました。
ケース1の写真のベランダは、一見よけいな物も少なく、危険な箇所は見当たらないように感じます。
しかし、大野さんは「ベランダのデザインに注意してください」と言います。
この柵は130センチの高さにありますが、その下がコンクリートの台のようによじ登れるようになっています。約70センチの高さで、子どもも届きます。このコンクリートに登って柵を越えてしまう可能性があります。
さらに、奥の室外機の上にのり、物干し竿を介してベランダの柵まで届いてしまう可能性があります。「室外機の上に登れないよう、プラスチックの板を斜めにしたものを置いたり、対策が必要です」と話します。
このベランダの柵は変えられませんので、ベランダ自体を危険源と認識し、子どもだけでベランダに出ないような対策を取ることが必要です。
このベランダには2つ問題点があるといいます。まずは、プランターが多数置かれているということです。「特に、大きいプランターは足がかりになるので危険です」。
対策としては、プランダーを柵から遠ざけ窓の近くに引き寄せたり、室内に移す対策が有効だといいます。
もう一つは、ベランダの柵のデザインです。窓のようにくりぬかれた部分は、よじ登る足場になる可能性があるといいます。
プラスチック版などをくりぬかれた部分に張り付け、足掛かりにならないようにすることが有効だといいます。
ベランダに色々物が置いてありませんか?
【対策】
・子どもが登れるものを置かない(プランター、バケツ、タイヤ、水槽、ゴミ箱…)
・登れないようにする…高い柵で覆う、室外機の上に斜めに板を取り付ける
・足がかりになりそうな物を柵から60センチ以上離す
柵の構造やデザインにも注意!隙間や足がかかりそうなところはありませんか
【対策】
・柵の内側に透明なアクリル板などを設置し、足が入らないようにする
・柵の足がかりになりそうな空間を全てふさぐ
・転落防止ネットを設置する(消防法に注意が必要)
ここまでは、ベランダに出た場合、落下を防ぐための対策を紹介してきました。しかし、Safe Kids Japanの大野さんは「一番大切なのは、ベランダに一人で出られないようにする、環境作りです」と強調します。
今回の4歳の幼児が転落した事故では、椅子をベランダまで移動させた跡があったといいます。「いくらベランダに物を置かないよう対策をしても、限界はあります。自分で椅子など足場になるものを持ってベランダに出られた場合、事故のリスクは高まります」。
会話ができる年齢の子どもには「ベランダは一人で絶対出てはいけない」と教育することも大切ですが、それとともに、ベランダにそもそも出られないようにする対策を第一にする必要があるといいます。
補助錠や、二重ロックなどで締め切ることも有効ですが、換気などのために窓を開ける場合もあります。大野さんがすすめるのは、窓を一定の幅しか開かなくするグッズです。インターネットなどで購入できるといいます。
ベランダに子どもが1人で出られるようになっていませんか
【対策】
・カギが開いてませんか
・窓の手の届かない高い位置に、補助錠などの設置
・二重ロックの利用
・換気などで窓を開ける必要があるとき…窓を一定の幅しか開かなくするグッズの利用
コロナ禍で、自宅にいる時間も増え、親もリモートワークで子どもから目を離す時間も増えがちです。
大野さんは「家の中で過ごす時間が増えれば、事故になるリスクも上がります。家の中を点検して、改めて対策を見直す機会にしてはいかがでしょうか」と話します。
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