若年層に人気のSNSであるTikTokでは「 #寄り目チャレンジ 」が流行、また、同様のメカニズムで子どもが3Dゲームをする場合の注意点もあります。注意喚起をする医師に話を聞きました。(朝日新聞デジタル機動報道部・朽木誠一郎)
「元に戻らなくなる」はホント
<子どものころふざけて目をギューッと寄せてると「もとに戻らなくなる!」って親に注意されたけど、これホントです。>
「元に戻らなくなる」のは、目の機能に支障を来すから。佐藤さんはこのような注意喚起をした理由を「近年、『寄り目』に関連した症状で来院する患者さんが増えてきていたため」と話します。佐藤さんを取材し、あらためてそのメカニズムを説明してもらいました。
実は繊細な目の機能が…
ここで、近くを見るとき、通常は内直筋が縮んで眼球を内側に寄せ、焦点を合わせます。これを指などを使って自分でするのがいわゆる「寄り目」遊びです。
そして、この状態を長時間、あるいは繰り返し行うことで、元に戻りづらくなることがあります。目が内側に寄ったままになる状態を「急性内斜視」と言います。
急性内斜視になると、両目の視線の方向が一致しなくなり、物が二重に見える症状が出ます。内直筋が縮んだままになり、遠くを見ても「寄り目」の状態のまま戻らなくなるからです。
片目を隠すことで二重に見えることはなくなりますが、当然、物の遠近感や立体感がつかみにくくなります。
「いわゆる『寄り目』は、目の働きに影響することを利用し、内斜視の逆である外斜視の治療のトレーニングとして行われることもあるほど。完全に寄った位置から戻らなくなるわけではありませんが、ちょっと目が寄った状態のままになったり、一見わからないけれども正常よりも寄った状態のままになったり、といったことが実際に起きています」
「子どもの見る力は発展途上です」と佐藤さん。手も短いため、物を見るときに顔に近づけがちになります。一方、大人より目が疲れにくく、近くにピントを合わせる力も強いため、元に戻らなくなるまで「寄り目」で遊んでしまうこともあり得ます。
スマホやゲーム、子どもは注意
「スマートフォンや携帯ゲームのようなデジタル機器は、顔を近づけて見ることが多く、ピントを合わせるために寄り目と同じ状態になってしまうことがあります。一般的に、急性内斜視は脳の異常やストレス、強い遠視や近視などから突然発症するとされてきました。しかし、近年はデジタル機器が関係しているのではないかと疑われています」
そのため、子どもがスマホを目に近づけて使用し続けないように注意するべき、ということです。また、もう一つ、デジタル機器関連で意外な落とし穴もあります。それが「3Dゲーム」です。
例えばニンテンドー3DSの3D映像は「左右の目に映る映像が異なることによって、立体的に感じられます」(同公式サイトより)。3D映像は、原理としてはこうした左右で異なる映像を目を寄せて見ることで、浮き上がって見えると佐藤さん。
そのため、「寄り目」遊びの注意点と同様に、「目の機能が発達段階の子どもには見せるべきではない」と佐藤さんは指摘します。ニンテンドー3DSも、6歳以下は2Dモードに切り替えて使用するように、公式サイトなどで注意されています。
最近は若年層に人気のSNSであるTikTokでも「 #寄り目 #寄り目チャレンジ 」などとして、音楽に合わせて「寄り目」遊びをする動画が流行した経緯があります。時代や遊び方が変わっても、危険性は変わらない「寄り目」遊び。佐藤さんはこう注意を促します。
「『寄り目』遊びは比較的、年長児でも見られる行動。まず、これはしないように、大人がしっかりと注意する必要があります。3Dのゲームも、メーカーの注意に従い対象年齢以下は2Dモードで、それ以上でも長時間プレイすることがないように。スマホも同様に長時間、使い続けないように。大人は子どもを見守る必要があるでしょう」