連載
#77 #となりの外国人
ランドセル、娘だけが「黒」だった 日本のフツウが分からない
「うちの子、いじめられるかも」
モンゴルから15年前に来日したザヤさん。3人の子どもを育てながら、教科書にも、辞書にもない日本の子育ての習慣に直面してきました。その「失敗」を糧に、ザヤさんが開いている子育てママを集めた勉強会には、多くの悩めるママが集まります。でも、勉強会をのぞくと、何だか日本の「フツウ」って、不思議なことだらけ? 「子育てにかかるお金」のテーマでは入学準備が話題になりました。
ランドセル(らんどせる)
日本では、小学校でランドセルを6年間使います。入学の1年以上前から、好きなランドセルを買うために予約をする人もいます。ランドセルを買うことを「ラン活」と呼びます。
子育てにはお金がかかりますね。外国から来た人が分からないのは、学校にかかるお金のことです。
そもそも、学校の仕組みは国によって違います。例えば、私が育ったモンゴルでは、小学校は5年、中学校は4年、高校が3年です。
日本は制度が違うので、いつ進学・進級するのか、最初は全然わかりませんでした。
2年くらい前に、東京都が発行している冊子の中で、日本の学校の説明を見つけました。やっと日本の学校の仕組みが理解できました。
私が育った頃は、モンゴルは小学校から高校の12年間はクラス替えがなく、席替えもありませんでした。隣の席の人はずっと一緒。小学校から高校まで同じ制服でした。
でも日本では、学校に持っていく「カバン」を買うのにも、高いお金がかかって、びっくりしました。
モンゴルにはランドセルがありません。学校には、みんな自由にばらばらのカバンで行っていました。
だから、最初は、「ランドセル」を買わなければいけないことも、知りませんでした。
でも、同じ幼稚園のママたちが、入学する1年ぐらい前から「ランドセル」について話し始めて、焦りました。
良いものや、かわいいものを選びたいと、ママたちが一生懸命考える理由が分かりませんでした。
日本人の夫の両親が「プレゼントしたい」と言ってくれて、日本人にとってランドセルは「物を入れて持ち歩くための物」以上の物なんだと知りました。その思い入れの強さに驚きました。
娘は結局、自分で黒色のランドセルを選びました。
私にとってはただの黒いランドセルに見えましたが、娘は「ピンクの縫い目が入っている」と気に入ったようでした。
でも、ママ友たちの話を聞いていると、「10万円以上のものを買った」とか、ピアノの柄が着いているような物を選んだママ友もいました。
入学式の日、ほかの子どもたちが背負っているランドセルは色もさまざまで、かわいくて、「うちの子のランドセルだけ違う」と感じました。
「まわりと違うと、いじめられるんじゃないか」と思って、私は涙が出ました。
でも、すぐに「交通安全」の黄色いカバーでランドセルは覆われてしまい、「悩んだ意味なかったんだね」と気づきました。
その経験もあって、次女には私が5000円の赤い色のランドセルを勝手に買ってきてしまったのですが、次女に「自分の好きな色を選びたかった」と怒られてしまいました。
日本はなんで、ランドセルなんでしょうか?
入学準備は、ランドセルだけではありません。
私は、「学校指定のものを売っている店」があるのが分からなくて、失敗しました。
たぶん、入学の前に説明があったと思います。ただ、そういう「店」があるとは知らなかったので、何を説明されているかわかりませんでした。そして、必要な物を自分でその「店」に買いに行かなければいけないことも、わかっていませんでした。
入学直前に、私はスーパーで「上履き」を探しました。これは幼稚園でも上履きを使っていたので「必要だろうな」と思って、買いました。
でも初めて登校の日、みんなが同じ帽子をかぶっていて、びっくりました。
娘は泣いてしまいました。その日に初めて「学校指定のものを売っている店」を聞いて、すぐに用意しました。
なぜみんな、同じ帽子をかぶっているんだろう? 日に当たらないためですか?
今もよく分かりませんが、入学準備をする外国人ママには「日本の学校では、みんな同じ帽子をかぶることもあるよ」「学校で、学校指定のものを売っている店を聞いた方がいいよ」とアドバイスしています。
中学に進学するときには、また、新しい制服が必要です。制服を受け取ってほっとしていたら、「学校指定のかばんを取りに来ていませんよ」と言われて、びっくり。
いろいろお金がかかるんだなぁと驚きます。
「日本の教育の仕組みがわからない」というのは、外国人のお母さんにとっては大変な問題です。学校に何年通うか、公立と私立の違いは何か、受験をするタイミングはいつで、学費はいくらかかるか――。
調べればわかることですが、日本語がわからなかったり、日本の文化に慣れていない人は、どう調べればいいか、誰に聞けばいいか、わかりません。 日本語を勉強中の人には、イメージしやすいように、記事の中で紹介しているような図や、イラストを見せるようにしています。
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