Dr.アシュアさんに話を聞きました。Dr.アシュアさんの“中の人”は医師の成瀬裕紀さん。千葉県の
松戸市立総合医療センターで勤務する小児科医です。今回、このような注意喚起をした理由は「コロナ禍で家庭内の誤飲を含めた事故が増えていると感じていたため」。
小児の異物誤飲は小児の全事故の約20%を占め、小児科医であれば日常の診療でよく遭遇するものだそう。通常異物の80〜90%は自然に排泄され、手術のような外科的処置を必要とするのは1%程度とのことです。ただし、誤飲したのが磁石である場合、事態が深刻になる場合があります。
「2000~2012年の米国のデータに基づく磁石誤飲の症例報告をまとめた報告では、医療行為が記録されている症例の内、約70%が外科的な処置を必要とし、自然に排泄されたのは20%をわずかに超える程度とされています(※1)。これは症例報告をまとめた報告ですので、すべての磁石誤飲事故をまとめたものではありませんが、磁石誤飲は誤飲事故の中でもリスクが高い事故と言ってよいでしょう」
磁石の誤飲の怖さは、複数の磁石を飲み込んだり、磁石にくっつく金属を一緒に飲み込んだりしてしまった場合、消化管を移動する途中で、その間に腸が挟まることです。
「挟まった腸に慢性的に力がかかることによって、腸の壁が壊死したり、腸の壁に穴が開いたり、腸が捻じれてしまったりして、非常に危険です。その結果、腸の切除を含む外科手術が必要になるといった深刻な事態に陥る可能性があります」
磁石の誤飲でも、単数の事例では危険性が低く、経過観察が原則とされます。しかし、複数磁石の誤飲の場合、特に時間差で誤飲した場合、危険性が高くなることが知られています。一方、複数磁石であっても、同時に飲み込んだ場合などは、磁石同士が接着して消化管内で塊となり、自然に排泄された症例報告もあります。
ただし、この「単数」「複数」の区別は、実際には難しいと成瀬さんは指摘します。