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「キングオブコント」一新した審査員〝理想的な布陣〟認めた空気階段

ツッコミを最小限に抑える「ドラマツルギーの定石」

歴代のキングオブコント王者が審査員となった「キングオブコント2021」。ロバートの秋山竜次(左)、バイきんぐ・小峠英二
歴代のキングオブコント王者が審査員となった「キングオブコント2021」。ロバートの秋山竜次(左)、バイきんぐ・小峠英二
出典: 朝日新聞

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先日10月2日に決勝戦を迎え、空気階段が見事14代目王者となった「キングオブコント2021」。即席ユニットの参戦、3冠を狙うマヂカルラブリー、審査員の一新など、本番を迎える前から何かと話題も多かった。今大会の特徴、そして1stステージにおける空気階段のネタは何がすごかったのか。準優勝2組のネタの巧みさ、審査基準の難しさも含め、改めて振り返ってみたい。(ライター・鈴木旭)

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KOC王者が審査するフレッシュな大会

今大会の大きな特徴は2つある。1つ目は、大会史上もっともフレッシュな戦いとなったことだ。決勝進出メンバー10組のうち、2010年代に結成されたのが7組。年齢も30代前半~中盤の芸人が大半を占めた。

その中、松本人志以外の審査員も一新され、さまぁ~ずとバナナマンの4人から、かまいたち・山内健司、ロバート・秋山竜次、バイきんぐ・小峠英二、東京03・飯塚悟志へとバトンタッチ。大会全体が若返りした。

もう1つは、新たに審査員を務める彼らが、歴代のキングオブコント王者ということだ。実際に同大会で勝ち抜いた芸人が審査するのは説得力が違う。とくに飯塚はコント愛が強く、今でも若手のネタを熱心に見ていることで有名だ。そんな飯塚を含め、ある種の理想的な布陣が組まれたと言える。

気になったのは、山内が先輩の野田クリスタルを審査するのに若干複雑そうな表情を浮かべていたことくらいだ。芸歴制限のない大会であり、この点は致し方ないだろう。サブMCを得意とする小峠が松本のボケにうまい対応を見せていたことも含め、全体のバランスは良かったように思う。

左から「東京03」の豊本明長、飯塚悟志、角田晃広。「キングオブコント2021」では飯塚が審査員をつとめた
左から「東京03」の豊本明長、飯塚悟志、角田晃広。「キングオブコント2021」では飯塚が審査員をつとめた
出典: 朝日新聞

ドラマチックな展開に終始した空気階段

今大会で念願の優勝を果たした空気階段。2019年から決勝の常連となり、“3度目の正直”で王者の座を射止めた。

特筆すべきは、何と言っても1stステージのコントだろう。火事となったSMクラブで、客として居合わせた消防士(鈴木もぐら)と警察官(水川かたまり)が決死の覚悟で避難誘導。プレイ中だった2人は手錠で両手が塞がれ、パンイチ姿。消防士に至っては頭からパンストを被ったままだ。

そんな2人が正義感を胸に次々と店の客を救出し、晴れ晴れとした表情で最後を迎える。危機的状況だからこそ、滑稽さが浮き上がっていくコントだ。「SMクラブ」「火事」「バディもの」という組み合わせの妙が功を奏したと言える。

これとよく似た状況設定に、さらば青春の光のコント「ヒーロー」がある。火事となったマンションで必死に救出活動をするカシワギ(東ブクロ)。その正義感に胸を打たれたオカダ(森田哲矢)がリスクを覚悟で手伝うことになるも、出火原因がカシワギの寝たばこだったと知り……という内容だ。

ただ大きく違うのは、彼らのコントにツッコミが入ることだ。ツッコミは笑いどころを明確にする一方で、見る側の想像の余地や物語が持つ勢いといったものをそいでしまう。空気階段はそれを最小限に抑え、「正義感の強い2人」に終始し、ドラマチックな展開に落とし込んでいる。

これはドラマツルギーの定石であり、この意識が見られるコント師は数少ない。それ相応の演技力や演出の知見が求められるからだろう。SMクラブという設定こそ突飛だが、“コントの強み”を十分に理解した手練れのコンビだと改めて感じた。


「ボケ」「ツッコミ」の逆転が秀逸だったザ・マミィ

準優勝となったザ・マミィは、2019年の「ツギクル芸人グランプリ」で優勝するなど実力派として知られている。そもそもは「卯月」というお笑いトリオで活動しており、当時から期待の若手としてライブシーンを盛り上げていた。私もトリオ時代のコントを見ているが、この頃から酒井貴士のキャラクターは絶品だった。

2018年にトリオは解散。メンバーの木場事変(現在、お笑いコンビ「大仰天」として活動)が抜け、酒井と林田洋平のコンビで初の決勝進出を迎えた今回のキングオブコント。2人の持ち味が出たのは、やはり1stステージのネタになるだろう。

誰彼構わず文句を言いながら、街を徘徊するおじさん(酒井)。そこに純朴な青年(林田)が「道を教えてください」と詰め寄る。おじさんが話し掛けられたのは2、30年ぶり。「少しは見た目で人を判断しろ!」と言いつつも、あまりに無垢な青年のペースに巻き込まれ、最後は良心を取り戻すというコントだ。

ラストは曲が流れ、「この気持ちは何だろう♪」と歌い始め、ミュージカル調の寸劇で幕を閉じる。ハートフルコメディーを思わせる展開が実に心地良い。胡散臭い雰囲気を持つ酒井がツッコミ役に回り、好青年に見える林田がボケ役を演じる、という逆転した構造も秀逸だ。

ファイナルステージに残った3組の中では、もっともオーソドックスな設定で勝負したコンビと言える。それだけに工夫が見られ、彼らのポテンシャルの高さが見て取れた。

意外性、メタ構造で笑わせた男性ブランコ

ザ・マミィと同じく、惜しくも準優勝となった男性ブランコ。世間の知名度で言えば、上位3組の中でもっとも低いコンビになるだろう。しかし、ネタのクオリティーはほかに負けず劣らず、なかなかに高かった。

とくに1stステージで見せたネタは、うまい構成だなと感心した。設定はネットの時代に「ボトルメール」という原始的な方法で初対面することになった男女というものだ。序盤は「酒焼けしたアクの強い関西女性が現れる」という意外性、男性がそんな女性を気に入っているという構図で笑わせる。

そして終盤、この女性が男性の妄想だったことが判明し、実際に理想通りの女性が現れてガッツポーズを決める、というメタ構造でもうひと笑い作るのだ。

この大枠は、今年の「R-1グランプリ」で森本サイダーが演じたネタにも似ている。序盤は出会い系アプリで待ち合わせする男を演じ、暗転後にフリップを持って現れ、先ほど演じたばかりのコントにツッコミ(厳密には嘆き)を入れていくという展開だ。

数年前なら“禁じ手”と言われただろうが、こうした二重構造のコントは最近1つのセオリーとして定着して来ているのかもしれない。少なくとも男性ブランコは、途中から妄想であることを匂わせ、違和感なくこの手法を使いこなしていたように思う。

その一方で、彼らの最大の特徴はキャラクターのコントラストと会話劇にある。今後も策に溺れることなく、持ち味を生かしたネタ作りに期待したい。

3冠逃しても足跡残したマヂラブ

今年は本当にユニークなコントばかりが揃った。ニッポンの社長、ジェラードン、うるとらブギーズ、そいつどいつ、蛙亭は、自分たちの個性をよく理解していて、1本目からインパクトの強いネタをぶつけて来た。そんなところからも、彼らの並々ならぬ意気込みが感じられた。

マヂカルラブリーには、忙しい中で挑戦したこと自体に感服する。3冠こそ逃したが、ハードルが上がった中で決勝に残るだけでもすごいことだ。どんな芸風かも知られたうえ、ネタの作り込みに費やす時間も少なかっただろう。今後大会に出るかは不明だが、誰にも真似できない野田の動きにさらに磨きをかけてほしい。

ニューヨークのネタは、審査員の声にもあった通りコントらしい展開が少なかった。結果的には最下位だったが、演技力が高いコンビであることはよく知られたところだ。テレビであれ単独ライブであれ、今後もそのパフォーマンスを発揮し続けてほしい。個人的には、審査員長の松本に物申すシーンも面白かった。

少し気になったのは、観覧客の笑いが若干軽めだったことだ。わかりやすいボケには大きく反応するも、少し踏み込んだニュアンスになるとウケが弱い印象を受けた。そのことで「笑いの量」と「面白さ」にズレが生じ、全体の笑いも大きいが、審査の基準も難しくなったであろうことが想像される。

ただ、この点を加味しても、今回の結果は妥当だったのではないだろうか。パンイチで大会史上最高得点486点を叩き出した空気階段のネタは、今後の出場者にも大きな影響を与えるに違いない。

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