連載
#6 #コミュ力社会がしんどい
「人間関係で間違えたくない」アルビノ当事者が実践する究極の対処法
アルビノ当事者と人間関係
「人間関係で間違えたくない」。そのような思いを、一度でも抱いたという人は、少なくないのではないでしょうか。肌や髪の色が薄く生まれる遺伝子疾患・アルビノ当事者の女性も、その一人です。目立つ容姿に加え、発達障害の特性もあり、他人とのつながり方に悩んできました。苦心の日々を越えて編み出した、「究極の対処法」とは? 「人付き合いで失敗してはいけない」という呪いと、距離を置くまでの過程について、漫画家・ゆめのさん(ツイッター・@yumenonohibi)が描きます。
主人公・雁屋優さんはアルビノです。症状の弱視のため、他人の表情を正確に読み取りづらい状況があります。更に発達障害の一種、自閉スペクトラム症(ASD)の影響もあり、周囲から「空気が読めない」と、しばしば言われてきました。
学生時代には、球技中に反則を犯したクラスメートに注意し、トラブルになり、先生からたしなめられたことも。成長するにつれて、「人間関係で間違えたくない」との感情が強まっていったのです。
そもそも、一人でいる方が気楽と感じられる雁屋さん。しかし、生きていれば、周囲の人々との交流は避けられません。
どうしたらいいんだ――。悩みは、日に日に深まっていきました。
思い煩う中、ある日、はたと気付きます。
「人間関係を減らせばいいじゃないか」
長らく付き合いのある友人の数は、決して多くはありません。しかし、仮に互いの気持ちが行き違ってしまっても、ありのままの自分を受け入れてくれます。信頼に裏打ちされたつながりだからこそ、安心して「失敗」できるというものです。
一方、それほど親しくない人々との関わりについては、あまり立ち入らず、適宜「リセット」しようと思い立ちました。その分、読書や勉強などの関心事に打ち込んだり、友人たちと過ごしたりするのに、時間を割くようにしたのです。
更に、社会人になって以降は、職場の同僚とのやり取りが生じるようになりました。例えば「マドレーヌを手作りしてきてくれた人に、その話題を繰り返し振る」といったように、会話をパターン化して乗り切っています。
こうした判断は、アルビノ当事者としての事情にも根ざしています。
あらゆる場所で、自らの見た目に注がれる、好奇のまなざし。いちいち気にしていたら、日常生活を送ることもままなりません。だからこそ、客観的な印象に配慮しすぎない方が、呼吸がしやすくなると考えたのでした。
もちろん、友達を増やすことをよしとする一般的な価値観を、否定するわけではありません。現状を踏まえつつ、居心地の良い暮らしも追求したい。そのような思いから、自分にとってメリットが大きい選択肢について、検討した結果なのです。
居心地のよい環境を得ることで、気楽に過ごせるようになった――。雁屋さんは、そう感じています。
今回の漫画を手掛けたゆめのさんは、コミュニケーションにまつわる、自身の悩みについて描いてきました。今回、初めて他人の体験を取り上げたことについて、「新鮮な気持ちになれた」と話します。
人間関係を割り切れず、いつもこだわりがちなため、雁屋さんの姿勢から学ぶところが多かったそうです。「周囲の視線を気にせず、自分を通せる強さがうらやましい」とも言います。
そして、次のようにもコメントしました。
「今回のエピソードは、あくまで雁屋さんの一例です。人との関わり方に、正解なんてないと思います。でも『他人を気にしない』こと、『人間関係を選ぶ』ことは、生きやすくなるヒントかもしれない。そんな気付きが得られました」
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