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連載

#78 #となりの外国人

「ゴミと一緒に捨てられない!」ウンチショック 外国人の出産

陣痛タクシーってなんですか?

「生まれる!慌ててタクシーを止めたのですが……」(イラスト・逸見恒沙子)
「生まれる!慌ててタクシーを止めたのですが……」(イラスト・逸見恒沙子)

目次

モンゴルから15年前に来日したザヤさん。3人の子どもを育てながら、教科書にも、辞書にもない日本の子育ての習慣に直面してきました。その「失敗」を糧に、ザヤさんが開いている子育てママを集めた勉強会には、多くの悩めるママが集まります。でも、勉強会をのぞくと、何だか日本の「フツウ」って、不思議なことだらけ? 

今日のテーマは「出産」。ザヤさん自身が今年の3月出産した経験をもとに、出産・子育てで経験した「日本のフツウ」について話します。

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日本のフツウ?


出産(しゅっさん)
妊娠がわかったら、日本ではまず役所で「母子手帳」をもらいます。その後も「妊婦健診」、「両親学級」、出産準備、一時金の申請など、何かとすることが多いです。わからないことは、病院や役所に聞きましょう。出産前に登録しておける「陣痛タクシー」もあります。

 

13年ぶりの出産

今年の3月に子どもを産みました。3人目の子どもで、初めての男の子です。今は5か月で、とてもかわいいです。大変なこともありますが、毎日が楽しいです。1人目、2人目を産んだときは、こんなに楽しい気持ちにはなれませんでした。

私は日本に来てすぐ、1人目の子どもを産みました。モンゴルで日本語を勉強し、ガイドもしていたのですが、日本の日常生活で使う日本語はわからず、色々と大変でした。

「出産一時金」などの制度や言葉を知らないと、役所の人の説明もわからなかったし、お医者さんの説明もわからなかったです。妊婦健診も、毎回夫と一緒に行っていました。夫は日本人ですが、夫にとっても初めての出産育児で、分からないことが多かったので、私のサポートをするのも大変だったと思います。


今回の出産は新型コロナのこともあって、健診は毎回1人で来るように言われました。それなのに、今回は、まったく問題なく1人で対応することができたんです。15年間で、日本語も上達しましたが、気軽に相談できる日本のママ友達ができたことや、「子育て勉強会」で制度を勉強してきたからだと思います。

予定日より3週間ほど早い出産でしたが、慌てることなく対応をすることができました。成長した自分に、自分で感動しました。

何を準備したらいいか、想像できない

どんなことを子育てママの勉強会「ザヤの子育てママあつまれ!」で勉強しているのかというと、毎月、子育てのお金の話、保育園の話など、テーマを決めて話します。「妊娠・出産」について外国人のお母さんたちと話をすると、特に外国人のお母さんには戸惑うことが多いと思いました。

2か月後に出産を予定していたモンゴル人のお母さんは、入院に必要な物がわからないと言っていました。モンゴルでは、子どもを産むときの入院は1日だけの人が多いです。日本のように4~5日間も入院することはないので、何を準備すればいいかが想像できません。

また、モンゴルの病院では必要なことは紙に書かず、全部口で説明されます。日本ではほとんど紙で説明されますが、文章の量が多いので、日本語を読むのが苦手な私たちにとっては難しいです。何が書いてあるかわからないから、重要なものと知らずに捨ててしまうこともあるかもしれません。

日本では、「母親学級」もあります。私は今回子どもを産む前、病院の母親学級に参加して、「陣痛タクシー」というサービスがあることを初めて知りました。

13年前、2人目を産む時、夫の留守中に、突然、破水しました。慌ててタクシーに乗ったら、運転手さんに「困ります」と言われたことがありました。

最近では、出産前に登録しておくと、陣痛の時に安心して利用できるタクシーのサービスが広がっているそうです。こういうサービスがあると知っていれば安心して利用できます。

イラスト・逸見恒沙子
イラスト・逸見恒沙子

土に埋められない、なんて

子どもが生まれてからも、日本と自分の国とではいろいろ違います。たとえば、赤ちゃんの「ウンチ」の捨て方です。

私はモンゴルに住んでいるときは、ゲルで生活していました。私の住んでいたところは、庭を囲んで親戚のゲルが3つありました。親がいつでも自分の親や兄弟に子どもの世話を任せられ、みんなが子どもに対して大らかで、周りの人と一緒に子育てをしているような感覚がありました。

そんな風にモンゴルで育った私は、母たちから「子どもは神様からのあずかりもの」だと教えられてきました。

赤ちゃんは「神様」みたいな存在。赤ちゃんのウンチだって大切なもので、普通のゴミなんかと一緒に扱ってはいけないものでした。だからモンゴルでは、赤ちゃんのウンチは、ゴミとして処理せずに、大地に埋めていたんです。(私がモンゴルを離れて15年経つので、もしかしたらモンゴルの子育て事情も変わっているかもしれませんが、私の育った時代はそうでした)

だから、日本で第一子を産んだ後、私は赤ちゃんのウンチは土に埋めたいと思っていました。そういう慣習で育ってきたので、それをしないと悪いことをしているような気持ちになってしまいます。ただ、日本人の夫のお母さんには「日本はモンゴルのように土地がたくさんないから、そんなことはできない」と言われました。

今はその通りだと思いますが、そのときは日本に来たばかりだったので、「私はモンゴル人だから、どうしてもそうしたいのに」と思いました。その時は、産後で不安定だった私の気持ちを分かってくれ、夫がこっそり実家の庭に埋めてくれました。

モンゴルでザヤさんの家族と親戚が集まって暮らしているゲル(2年前に撮影)=ザヤさん提供
モンゴルでザヤさんの家族と親戚が集まって暮らしているゲル(2年前に撮影)=ザヤさん提供

「違い」も話して知り合えたら

こんなふうに、子育てをしていると私たちにとって当たり前のことが、日本では当たり前でないということに気づくことが多くあります。日本人のお母さんも、私たちの話を聞くとびっくりすることがあると思います。でもそういうときに、多くの人は、黙ってびっくりした顔をしていて、理由は話してくれません。

ただびっくりした顔をされているだけだと、何か私が間違えてしまったのではないか、と少し怖くなります。自分が普通でない気がしてしまいます。他の外国人のお母さんもそうだと思います。日本の子育てについてもっとたくさん知っていきたいです。違うことも、やさしく受け止めてくれるとうれしいです。

ひらがなネットめも


妊娠・出産は、人生の中でも特に大きなイベントです。日本人でも戸惑うことはたくさんありますが、外国人のお母さんは、それに加えて日本と母国との文化の違いについても悩むことが多いようです。

悩んでいる人に話を聞くと、「話ができる人がまわりにいないのがつらい」と言います。周りに困っているお母さんがいたら、まず「何に戸惑っているのか」「何が母国と違うのか」、話を聞くだけでも力になれるかもしれません。

 

【#日本のフツウが分からない】この記事はひらがなネットとの共同企画です。子育てやご近所づきあい、仕事……。日本では「常識」として、言葉にしていない独特の文化があります。でも、「当たり前」だと思って飲み込んでいるだけなのかもしれません。育った文化や習慣と違う日本で生活している外国人ママたちの視点でみると、不思議なものとしてうつっている「日本のフツウ」。どうしたらみんなにとって生きやすい社会になるのか、一緒に見つめてみませんか?

記事の感想やあなたがモヤモヤしていることを、#日本のフツウが分からない を付けてツイートしてください

 
 

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