連載
#15 眠れぬ夜のレシピ
ショコラで吹き飛ばす秋の憂鬱 眠れぬ夜のレシピ
街が甘い香りに包まれたら
街に漂う甘い香りが、季節の移り変わりを教えてくれます。寒さで憂鬱な気持ちになった時、心をスイッチする魔法のレシピです。手紙を添えて、お届けします。(漫画・コラム、午後)
午後さんのプレイリスト
憂鬱な気持ちになる夜。午後さんの身近にあった音楽を教えてもらいました。
あなたの夜の隙間も、少しでも埋められたら、幸いです。
こんばんは、午後です。
前回は、仕事が立て込んでしまったため、一度お休みをいただきました。
急なお休みになってしまい、ご心配をおかけしてしまっていたら、本当に申し訳ありません。
また今夜から、よろしくお願いいたします。
街中に金木犀(キンモクセイ)の香りが漂う季節になりましたね。この甘い香りは私にとって、年に一度の、密かな楽しみのひとつでもあります。いつか金木犀のシロップを作って、パンに塗って食べたいなぁなどと目論んでいます。
ところで、関東生まれ関東育ちの私は最近まで知らなかったのですが、金木犀って日本全国に咲く花ではないらしいですね。北海道には生えていないらしく、この前、金木犀の香りを知らない知人に香りを質問されたのですが、説明するのに骨が折れました。香りって知覚するものなので、色を説明するのと同じくらい大変な作業だと思います。結局、「桃や、フエキのりに近いような、甘い感じの香りだよ」と答えました(自信はありませんが…)。個人用にフエキのりの匂いが、一番近い気がしています。
気温がガクッと下がりましたし、おまけにずっと雨ですね。涼しさと甘い香りは嬉しいですが、気圧の乱高下は勘弁してほしいものです。気持ちがグシャグシャとしてきます。考えなくてもいいことまで考えてしまいます。
使い古された理論ですが、メンタルの不調にはフィジカルで対抗するのが、結局最も有効な気がしています。
暗転してしまった心にポジティブ・シンキングを求めるのは酷なので、ひとまずそっとしておいて、逆に身体にポジティブな刺激を与えるのです。例えば、身体を温める。湯船にゆっくり浸かる。ストーブをつける。温かい飲み物を飲む。秋に美味しいチョコ菓子を食べる。お気に入りの音楽を流す。身体と心は繋がっているので、不思議と心までぽかぽかしてきます。
作中ではオーブンの音が私の助けになりましたが、きっとあなたの近くにも、突破口になるものがたくさん転がっています。
もし余裕がありましたら、ぜひ今回ご紹介したガトーショコラを作ってみてください。みるみる泡立つ卵白は、まるで心の中のヘドロを洗い流す石鹸のようで、少し気持ちが晴れたりします。
それでは、今夜も素敵な夢が見られますように。おやすみなさい。
午後
SNS作家。2020年5月からTwitterに漫画を投稿をしている。今年1月に初の書籍「眠れぬ夜はケーキを焼いて」(KADOKAWA)を出版。Twitterアカウントは@_zengo。
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