連載
#79 コミチ漫画コラボ
絶望の底から私を浮上させた〝あの頃のプレイリスト〟マンガで描く
コミチ×withnewsコラボで大賞に輝いたマンガは…
友人から勧められて聞いたけど、その時は合わなかったアーティスト。でも、気持ちが落ち込んで「どん底」にいるときに聞いたら――。
その時の心身の状態によって「刺さる」曲や歌があるのって不思議ですよね。ふと思い出の曲を聞き返すと、当時の心境や心の傷をありありと思い出します。
誰しも「どん底」にいるような経験ってあるのではないでしょうか。わたしは中高時代にCoccoにどはまりしていたのですが、病みそうな思いを自分の代わりにCoccoが叫んでくれていたんだなぁと感じることがあります。さく兵衛さんと同様に、今でもお守りのようなプレイリストになっています。(選評:水野梓)
綺麗にまとまっており、「出会わなければよかったと思う曲」という逆張りの導入が興味を引きます。大ゴマで「がんばってなんかないのに」と返すまでのテンポがいいです。
そこから逡巡し、再起し、努力する流れはもう少しコンパクトにするか、仕上げにより(例えば頭を抱えるシーンなどの)迫力を増すと、中だるみを防げるかもしれません。また、たくさん投稿したことよりも、落選したことを示す方が、「出会わなければよかった」という導入が生きると思いました。
もし、“いい話“で終わらせず、読者に引っかかりを持たせるなら、奨励賞受賞からラストまでに、ちえむさんの体験をベースにしたもうひと展開を読んでみたかったです。
HOMEのこの部分の歌詞、私も好きです。(選評:朽木誠一郎)
小学校低学年の頃、6年生の教室に届け物をしたことがあります。室内に並ぶ、目線ほどの高さの学習机。いずれ、どれかが僕のものになるんだ――。心も体も成長した先に広がる、無限の可能性を象徴するようで、胸高鳴らせたものです。
主人公の女性に、私は当時の自分を重ねました。今は若くか弱いけれど、大好きな人となら、素敵な明日を目指せる。将来へと向けた希望に、混じり気は一切ありません。しかし時の流れは、願った未来を幻へと変えてしまいます。だからこそ、物語を貫く「君は僕の音楽」の歌詞が、一層胸に迫るようです。
育児に追われ、せわしく過ごす女性の姿は、青春時代に描いた理想から遠いかもしれません。しかし身近な家族との暮らしの中にも、耳を傾けるべき「音楽」が流れていると、彼女は気付きました。学習机の向こう側にある、私の人生にも、他では聴けない旋律が響いているのでしょう。等身大の生き様を、全力で肯定したいと思わせてくれる作品でした。(選評:神戸郁人)
MD。たった二文字で、多感だった高校時代に今でも引き戻してくれる不思議な言葉です。気になっている子が聴いているアルバムを風の噂で知ったときは、コンポで録音して通学の友にしていたなぁ。結局、その子には言い出せなかったけど。
作品のような意中の人とプレイリストをつくるなんてシーンは当時、憧れ中の憧れでしたね。それがスマホになっても、好きな人と音楽を共有する喜びは変わらないと思いつつ、最後のイヤホンの展開は思わず「エモっ」と心のなかでつぶやいてしまいました。
作者のヘケメデさんがつづっている「一昔前の音楽の共有の仕方や、それによる気持ちの伝え方ってまだるっこしくって最高だったな」というコメントに共感しながら、甘酸っぱい思い出がよみがえった一作でした。(選評:丹治翔)
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