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IT・科学

入口の検温「体温測定」と言えないケースも 気温に左右される可能性

入店時の検温は定着したが……。※画像はイメージ
入店時の検温は定着したが……。※画像はイメージ 出典: PIXTA

目次

取材リクエスト内容

感染対策でサーマルカメラや非接触温度計での体温計測の機会が増えたが、
どこまで正確なんだろうか?
ほとんどが海外製で価格もばらつきがある。
サーマルカメラはあくまで表面温度の測定で体温測定ではないとの注意書きが見受けられるが、それで測定に意味があるのか?
ネットではいつも同じ数字が出るなんて書いてるのもあるそうだけど、本当なのか? komaboo

記者がお答えします!

すっかり当たり前の光景になった入店時の検温。しかし、使用されている機器の中には「体温計」ではないものがあると知っていますか? メーカーがわざわざ「体温を測定するわけではない」と言う理由、生活者が注意するべきポイントをまとめました。(朝日新聞デジタル機動報道部・朽木誠一郎)
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「体温測定」ではない?

コロナ禍で定着した新しい生活様式が、店などに入る際の「検温」です。すっかり当たり前の光景になった検温について、読者から疑問の声が届きました。

その一つが「検温する機器の商品説明に『体温測定ではない』と断り書きをしているものがあるのはなぜか」というもの。検温するのに体温測定ではないというのは、どういうことなのでしょうか。

実はこれには、身近な体温計が審査の必要な「医療機器」であるという、意外と知られていない事実が関係しています。

体温計は「医療機器」

額や手首などに手持ちの機器をかざされ、ピッという音とともに“体温”が表示される――この約1年半、多くの人がこうした体験をしているのではないでしょうか。

コロナ禍の検温でよく見かけるようになった、体に触れずに体温を計測する体温計は、非接触型の体温計​​と呼ばれます。非接触型の体温計は、主に人体から放出される赤外線を検知することによって、体温を測定しています。

厚生労働省の医療機器審査管理課を取材しました。このような体温計は正式には皮膚赤外線体温計といい、医薬品医療機器等法​​(薬機法)に基づき、認証申請後の審査を経て医療機器登録が可能​​なクラスⅡの医療機器となっています。

国内における皮膚赤外線体温計の製造販売には許認可が必要であり、国外で製造された体温計を輸入して販売する場合も同様の薬事手続きが必要とのことでした。

例えば、オムロンやタニタなど大手メーカーは、医療機器認証された非接触型の皮膚赤外線体温計を製造販売しています。

では、一般に検温に使用されている機器がすべてこの認証を得ているかというと、そうではありません。

同じ検温に使用されている機器でも、モノ(人の体表面を含む)の温度を測定するものは、ただの温度計であり、医療機器ではないとされているのです。

大手メーカーの非接触型の体温計に似た形の温度計や、いわゆる「サーマルカメラ」※のように、店の入口などに置かれ、カメラの前を通ったり前に立ったりした人の体表面温度を大型ディスプレイやスマホ型の端末に表示する機器もあります。

※赤外線サーモグラフィ装置​​として2021年9月現在、一社のみが医療機器として登録済で、現在は製造を終了。

こうした温度計の商品説明には、しばしば「あくまで体表面の温度を計測するもの」「体温測定ではない」という断り書きがされています。

体表面の温度を測定することは、体温を測定することと、違うことなのでしょうか。

厚労省の監視指導・麻薬対策課を取材しました。同課は都道府県等と連携して薬機法違反をチェックすることを役割の一つにしている部署です。担当者は「温度計が『体温を測定できる』とうたえば薬機法に抵触する」とします。

だから温度計に該当する製品は、わざわざ「体温測定ではない」と宣言している、ということになります。

加えて、いくつかのメーカーは、まず温度計でスクリーニングをし、明らかに体表面温度の高い人がいれば、医療機器の体温計で再度検温をするべき、としています。

現在、事実上、体表面の温度を測定し、入店者から「発熱しているかもしれない人」をスクリーニングする製品は、容認されています。病気やケガの治療を目的とした製品が薬機法のチェックの対象ですが、そうとまでは言えないからです。
 

温度計には注意点も

ただし、注意点もあります。同様に、いくつかのメーカーは、「人の体表面は外気に触れているため、気温の影響を強く受けること」を注意喚起しています。

「体温より気温が低いと体表面温度は体温より低くなる」こと、逆に例えば「熱源が近くにあると体温よりも高くなる」こともあります。そもそも、体温計ではないので、体温を正確に測ることはできないのです。

しかし、このことはあまり知られていないようです。株式会社タニタが実施したインターネットリサーチ『体温計に関する意識・実態調査 2021』※があります。

※期間:2021年3月11日〜3 月15日、対象:全国の 15〜69歳の男女1000 人

この調査では、非接触式体温計について【非接触式タイプのものには“体温計(医療機器)”と“温度計(非医療機器)”があること】の認知率は19.0%でした。

約80%の人は、店の入口の検温の機器が温度計の場合があることや、その場合は体温を正確に計測できないことを知らないということになります。

非接触型の体温計に形が似た温度計や、サーマルカメラで体表面温度が高くなくても、体温が高くないとは限らないことは、ぜひこの機会に覚えておいてほしいことです。

店など導入側もこのことを知らない可能性があります。一方で、サーマルカメラの値段は数万〜数十万円、それ以上になることも。1つの製品あたりの値段は医療機器の非接触型の体温計よりも高いこともしばしばです。

導入側は医療機器である体温計と、そうでない温度計をどう判別すればいいのでしょうか。

厚労省所管の独立行政法人で、医療機器の審査や安全対策業務をする医薬品医療機器総合機構​​(PMDA)によれば、医療機器には製品に「医療機器」という表示があります。

具体的には、本体か直接の包装に、高度管理医療機器、管理医療機器、一般医療機器のいずれかが記載されています。また、認証番号あるいは承認番号(「認証」と「承認」は異なる)、許可番号、届出番号のいずれかの記載があるとのことでした。​​

体温を正確に計測できる体温計で一人ひとり、スタッフが計測することで発熱している人をチェックするのか、発熱しているかもしれない人を自動的にスクリーニングしてくれるシステムを導入するのか。

新型の感染症の流行下、苦労を強いられている店の負担を考えたとき、店の規模によっては、スクリーニングである程度、選別した上で、気になる人だけを体温計でより正確に測るというのが現実的な対応になるのかもしれません。
 
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