奥山:宮脇さんが触れていましたけど、編集者とライターのコミュニケーションについて。紙からネットへの変化やコロナもあるなかで、どうコミュニケーションをとろうとしていますか?
宮脇:私がというより、社員が全員編集者なのでライターとやりとりしていますが、直接のやりとりは減っちゃいましたね。
でも、オンラインになったことで、インタビューをする際に距離を気にする必要はなくなりました。福岡のライターが北海道に住んでいる有識者にインタビューができる。そういうやり方は普及しました。
なので、東京以外に住んでいるライターにも仕事が依頼できるようになっています。ここはコロナが落ち着いても、戻る必要はなくて、良い形で今後も継続させていきたいと思います。
関係性の作り方という意味では、編集者がライターを下請け的に捉えるのはダメだと、社内で伝えています。ネットはフラットですから、対等な視点でコンテンツを作っていくのが重要です。
奥山:新しい出会いや仕事のきっかけについてはいかがですか? 編集プロダクションの立場から、勉強会も積極的にされていたと思います。今はどんな感じですか?
宮脇:コロナ後は、ライター交流会もWeb上でやりましたが、イベントが全部Web化しましたよね。
数が増え過ぎちゃって、みんな飽きちゃったというか。なかなか人が集まらない事態も発生しました。そこは課題ですね。
何というか、新たな出会いをこちらから作るのは難しいかもしれないですね。売り込んでもらった方がありがたい。そうしたアプローチに対応しようとは思っています。
奥山:地域の縛りがなくなっている中で、提案があると、せっかくだからやってみようか、となりやすいかもしれませんね。
宮脇:その際には、自分ならではの「プラスアルファ」があると、仕事につながりやすいかもしれません。
奥山:Yahoo!ニュースは1日7千本の記事が届いていて、その中で前田さんの記憶に残ったり、ライターらしい仕事をしているなと思ったりする記事の特徴や共通点はありますか。
前田:プラットフォームという部分だと、記者やライターと仕事する機会が少ないので、Yahoo!ニュース 個人を例に出したいと思います。
Yahoo!ニュース 個人で発信する人のなかに、水難学会の会長がいるのですが、ため池での事故が起きたときに、
なぜ、ため池に落ちると命を落とす危険があるのかを動画とともに書いた記事がとても読まれました。
私も新聞社にいたので分かるんですけど、メディアだと「去年もあったと思うけど、今年も報じるんだっけ?」となってしまう部分も出てきます。一方、専門家は「大事だから絶対伝えたい」という思いで、同じような内容でも繰り返し注意喚起をします。
宮脇:お伺いしたいんですけれども、ため池の記事はなぜ読まれたのか。編集者がいたんですか?
前田:ため池の記事は水難学会が公開している映像のインパクトがきっかけとなり、Twitterなどで拡散。その後Yahoo!ニューストピックスにもこの記事が掲載され、さらに多くの方に広がっていきました。その後、この記事と続報記事をYahoo!ニュースのトピックスで掲出したことから多くの方に広がっていきました。
Yahoo!ニュース 個人では書き手に対し、季節性のある話題(注意喚起など)やネット上などで話題になっているものについて専門的切り口からの解説を依頼しています。
マスメディアの視点からすると、自分が知っていて毎年繰り返されることでもあると、価値判断が落ちることもあるのですが、専門家が危ないと伝えてもらうことによって、まだ知らない人たちへの反響があり、ニュースバリューが高いと再認識しました。目から鱗の現象でしたね。
奥山:新聞は事件がありましたと伝えて、「読んだ人が後はくみ取ってね」となるんですよね。
前田:今回のように、専門性を持って発信するユーザーに出会える場所というのは、さらに加速すると思います。
宮脇:本来は編集者が探してきて、書いてもらう。そこを一足飛びに出てきているのは、衝撃ですね。Web編集ではこういう人を増やす流れというのは、記事を見ていると思います。
一方、一次情報を専門家が発信するとき、うまく伝わらなかったり、余計なことまで書いて炎上したりすることもありうると思います。
企画を攻めの編集としたときに、守りの編集もWebで大事だと思っていて。ノオトはめちゃめちゃ守りが堅いんですよ。そういう技術もWeb編集者には必要です。