ネットの話題
コロナの恐怖と罪悪感、言い当てる漫画「何もしてないのに疲れた…」
がんばっている人と比べなくてもいい
「なんか疲れたな……」とソファに座り込む人。その頭の中では「別になんもしてないけど……」としんどさを否定する言葉が浮かびます。
でも本当に何もしていないのでしょうか?
振り返ると、今年も実家に帰省できず、娯楽などの息抜きもできない日々。仕事では、いつ誰が感染するか分からない状況なので、早め早めに動いています。
毎日、子どものことで心配が尽きませんでした。「親が倒れたら誰がこの子の面倒を見るんだろう」「自粛し過ぎて、発達に悪い影響が出るんじゃないだろうか」「でも、もし重症化してしまったら」「できたはずの楽しい経験を私の判断でいくつ奪ってきたんだろう……」
感染の恐怖と、自分の選択に罪悪感をおぼえる毎日。ずっと非常事態にさらされていた1年半。
「なにもしてなくないじゃん!」と、自分のメンタルが叫びます。
「今現在、そこそこ健康に家族みんな無事でいるのはすごいことなんだからね!」
つい自分より不遇な人や、頑張っている人と比べてしまいがちですが、「『今、自分が、しんどい』という自覚をするのも大事」と強調します。
その中で、「変換」を提案します。
「何もしてない……」は、「できることはやった」と考える。
しんどさにつながる不安感は、備蓄や備えで「安心感」に変える。
漫画の最後には「何もしてないのに疲れたな」という人へのメッセージを送ります。
「がんばってるよ! がんばってるよ……! メンタル労おうね……!」
この投稿には「心に染みました」「まさに自分の気持ちを言語化してくれた」「継続的なストレスは心身に来る」「やってもらってばっかりだって気落ちしていたけど、元気出てきた」と共感の声が集まりました。
「子どもが笑顔なら、はなまる」「非常時こそ、いつも以上に心と体に栄養と休養を」「みんなで協力して一緒に乗り越えよう」などコメント欄には互いを励ます言葉も集まり、1万5000件以上のいいねがつきました。
作者のるしこさんは、2歳半の息子を育てる母でもあります。この作品を描こうと思ったのは、自身の「気持ちの整理」を兼ねていたと言います。
「コロナ禍で、なんとなく疲れている………ということが増えました。もう、慣れて感覚が麻痺していますが、たとえ生活に大きく影響しない立場であっても長期間ストレスにさらされている状態だと思います」
第5波では、さらに負荷がかかっているように感じると言います。
「状況が悪化してばかりいるような印象を受けてしまい、あまり情報に触れないようにしたり、意図して楽しいことを考えるようにしていましたが、ここ最近の感染拡大と医療逼迫のニュースでまたズーンと沈んでしまい………。気持ちの整理を兼ねてマンガにしようと描き始めました」
子育てが、コロナ禍と重なりました。
「息子が1歳過ぎ、初めて自分の足で外を歩けるようになった頃に、1回目の緊急事態宣言になりました」
当時は、今よりもさらに、未曾有の事態への不安感が強く、毎日、陰鬱な気持ちになっていたと言います。その中での楽しみは「短時間のお散歩」でした。
「息子は、初めて歩く道、草木やマンホールに目を輝かせながらヨチヨチ歩いていてその姿に救われました」
一方で、収まらないコロナ禍にも、子どもはどんどん成長していきました。
「同年代の子どもと触れ合う機会がまったく無く、発達・情緒面で長期的な影響が今後出てこないか? という不安はあります。でも、子どもはおうちプールをしたり、踏切を見に行ったりするだけでも楽しそうにしてくれるので、その姿にずっと助けられています」
仕事で外出することもありました。外に出る・出ないの判断をするのは、いつも「不安や罪悪感と共にある……という感じでした」と振り返ります。
多くの反響の中には、「救われました」という声も届きましたが、るしこさんは「わたしも救われる思いです」と言います。
集まるのが難しくなるなど、人と人の距離が離れてしまった、いま。
るしこさんは、「SNS上でも、しんどいね、大変だよね、と誰かと辛さを共感するだけで、精神的に少し楽になるのかもしれません。自分に向けての『がんばってるよ』でしたが、どこかの誰かの気持ちを少しだけ晴らすことができたのであれば、描いてよかったなあと思います」と話しました。
1/11枚