連載
#33 「きょうも回してる?」
高価格化が進むガチャガチャ、あえて200円で勝負「何でも持つ」騎士
ガチャガチャ業界では、7月は繁忙期に当たります。商品点数は通常、毎月230~250アイテムほどですが、繁忙期になると250~300アイテムが販売されます。
新商品や再販なども含めた毎月のアイテム数の多さがガチャガチャの特徴であり、他の業界では信じられないほど商品展開が速いです。価格帯も他の玩具と比較すると、敷居が低く購入しやすいのも特徴と言えます。
毎月200以上の新商品が出ているなか、30社以上のメーカーは売り場でお客さんの目に留まるように、それぞれの特色を出しながら、ものづくりをしています。
「ガチャガチャのカプセルサイズは何種類か決まっています。そのカプセルのなかに、ある意味、面白ければ何でもいい。コストが合えば何でもいい。ガチャガチャには自由があり、夢があります」
ガチャガチャの魅力について語るのは、アミューズメント系メーカー「エール」のカプセルトイ事業部の森国大輔さんです。「作り手もアイデアの引き出しさえあれば、チャレンジできます。そのカプセルの中に楽しさを詰め込むことができるのが魅力です」と情熱を傾けています。
エールはアミューズメント系メーカーのなかで、ガチャガチャ業界にいち早く参入し、2016年から販売を開始しました。当時、森国さんは1人で企画から生産、営業まで担当していたそうです。
ガチャガチャを始めた当初から現在まで、エールはオリジナル商品を中心に展開しています。部署のメンバーは4人に増え、月に18~20アイテム、繁忙期には約30アイテムを販売しています。
売り場に行くと気がつくのですが、エールの商品は200円が中心です。
最近のガチャガチャ業界では、消費増税、原材料価格の高騰、輸送コストの値上げなどの理由により、価格は300円が中心となり、500円の商品もここ数年で増加してきました。
それでも、エールは200円で勝負をしています。なぜなら、エール社内には金型設計者、デザイナー、原型師などが在籍し、中国の提携工場まで構えているため、すべて社内で一貫して作れる体制が整っているからです。
まさに、ここがエールの強みであり、他のメーカーと比べて、圧倒的に商品のコストを抑えられている理由です。
商品は森国さんを中心に企画立案、コンセプト、ネーミングを決めています。森国さんは「常にアンテナを張り巡らせてアイデアを探しています。芸人ではないですけど、ネタ帳を持ち合わせています」と笑って教えてくれました。
また、「社員は仕事を楽しんでいて、基本的にかしこまっていません。やはり、楽しいことを伝える仕事なので、ラフに仕事をしています。頭が固いとなかなか面白い発想が出てこないですね」とも話してくれ、社内は風通しの良い職場であることを感じさせます。
今回紹介するのは、「持て!持て!騎士 ナイト」です。
開発のきっかけを聞くと、もともと販売していた動物がペンを持つことができる商品「お持ちいたします。」シリーズがベースにあったそうです。
「とにかくペン置きに限定させたくないということが一番のコンセプトです。それだけでは面白みに欠けるなと思いました」と語った森国さん。自社も含めペン置きの商品は数多くなるなか、「ペンだけではなく、何でも持たせたい。たとえば食卓の箸、歯ブラシ、スプーンなどを持たせたら面白いのでは」と企画の背景を教えてくれました。
また、「持て!持て!騎士 ナイト」のネーミングセンスも抜群です。私が初めてDP(ディスプレイポップ)を見たときに、「モテ!モテ!ナイト」のイメージがわきましたが、そこは森国さんの思惑にはまりました。
森国さんは商品のネーミングとコンセプトをとても重要視しています。今回のネーミングについては「ぱっと見、この商品名だけで見ると、ふざけているし、夜のお店の名前のイメージがするじゃないですか。そこが狙いです。聞いたときの耳に入ってくるイメージと、商品を見た時のイメージのギャップを作ってみたかった」と笑って教えてくれました。
オリジナル商品はキャラクター商品と違い、お客さんの目に留まらなければ購入されません。だからこそ、森国さんはネーミングにこだわっています。「まったく同じ商品で、もしこれが『お持ちいたします。騎士編』だったら面白くないじゃないですか。名前は非常にふざけていますが、見た目はまじめな商品というギャップを目指しました」
さらに、「持て!持て!騎士 ナイト」は200円にもかかわらず、造形もしっかりとしており、色や形状も微調整しながら作り込んであります。また、実際の騎士が着ていた服を調査してラインナップを決め、服の皺や実際に使用されたようなリアル感を演出する塗装「汚し塗装」も施されています。
これが200円で買えることに驚きますが、森国さんは「塗装もどこまで汚すのかも考え、汚しめにしました。ほんとに着ていた騎士の形状です。お客様にも『これで200円はいいよね』て言われます」と話してくれ、すべて自社で内製化できるエールの強みを発揮しています。
さらに、商品にはジョイントパーツがついています。これを外すと、もう一つくっつけることができ、連結して遊べます。その上で、森国さんは「ジョイントパーツを無くさないように、裏面にしまえるよう工夫してあります」と話し、お客様のかゆいところに手が届くものづくりに対する姿勢に感心させられました。
現在は、「持て!持て!騎士 ナイト」の第2弾甲冑バージョンを来年の販売に向けて絶賛進行中です。
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「持て!持て!騎士 ナイト」は、騎士A -silver-、騎士A -bronze-、騎士B -silver-、騎士B -bronze-、騎士C -silver-、騎士C -bronze-の6種類。1回200円。
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