ネットの話題
女王アリが死亡した巣 ネットをざわつかせた「葉に乗る」役割とは?
生きる働きアリの日常
女王アリが死亡し、衰退していく群れの「終焉」を、あえて展示して話題になっている多摩動物公園(東京都日野市)。女王が死んだ後も、粛々と役割を果たす働きアリの「役割」の一つ、「葉に乗る」がネットをざわつかせています。どんな役割で、何のためにいるのでしょうか?
多摩動物公園で展示しているハキリアリは、南米ペルーで生まれた群れで、「Atta sexdens」という種類です。
葉っぱをかみ切って運ぶ姿が知られていますが、この葉は巣の中で細かくかみ砕いて、キノコを「栽培」するために使います。このキノコはアリたちの食糧になるため、「農業」を営む昆虫、としても知られています。
女王亡き後も、農作業などを分担しながら、変わらずに暮らしを営む「働きアリ」たち。役割は、10段階以上の体の大きさに合わせて、それぞれ分業しているそうですが、ネットで注目が集まったのは、その役割のうちの一つでした。
4つ目の「葉に乗る」です。
「何のためにある役割なんだろう?」「一番ラクそう。ハキリアリになるならこの役割が良い」などと、注目されました。
昆虫園飼育展示係の渡辺良平さんに聞くと、「葉に乗る」係は、ラクをするために葉に乗っているわけではありませんでした。
「葉っぱに乗っているのは周囲の監視兼護衛役です」
かみ切った葉を運ぶ役割をしている働きアリたちは「無防備(アゴで葉を持っているので武器が使えない)」なアリ。生息地では、この無防備さがあだとなり、寄生(産卵)しようとするノミバエの仲間から狙われてしまうといいます。
そこで登場するのが「葉に乗る」係。
「葉を運ぶ係のアリを、ノミバエから守るために、小回りの利く小型の働きアリたちが『葉に乗る』係として同行しています。葉を切る場所をよく観察すると、葉切り担当の邪魔にならないように脇で待機しているシーンをよく見かけます」
一見、何をしているか分からないアリも、仲間を守る重大任務を果たしていました。目立たない役割でも、自然界ではかけがえのない役割です。
女王アリが死ぬと、群れも、ともに滅びます。
「後継者」が生まれたり、「クーデターでのしあがる」アリがいたりして、巣に新しい女王が生まれることがないのかという疑問も上がりました。
ハキリアリは種ごとに異なった生態をしているため、昆虫園で飼育しているAtta sexdensの場合という前提で渡辺さんは答えてくれました。
「実は、条件が整えば群れの生涯にわたって、何度も新女王アリと雄アリ(どちらも、いわゆる羽アリ)が出現します。しかも、一度に生まれる新女王アリと雄アリは1匹ずつではなく数百匹にもなります」
一方で、女王から生まれた新女王は巣をのっとることはありません。
「成熟した新女王と雄アリはこの群れから巣立って、別の巣から同じように巣立ってきた新女王アリや雄アリと交尾をして、1から自身の群れを作り上げていきます。なので、引き継いだりクーデターが起きたりといったことはありません」
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