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連載

#28 「きょうも回してる?」

「影絵」ガシャポン、斜め上の企画が生んだSNSの「意外な反応」

撮ってアップしたい需要にこたえる

バンダイから発売されたガシャポン「影絵の手~動物~」。手のオブジェに光を当てると動物が映し出される。写真は「GOAT(やぎ)」=筆者撮影
バンダイから発売されたガシャポン「影絵の手~動物~」。手のオブジェに光を当てると動物が映し出される。写真は「GOAT(やぎ)」=筆者撮影

目次

暗闇で光を当てると、動物のシルエットが現れる……。そんな影絵をつくる「手」のガシャポン(*)が登場しました。SNS時代を意識した子育て中の開発者の想いから企画は生まれましたが、思わぬ反応も。ガチャガチャ評論家のおまつさん(@gashaponmani)が取材しました。
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ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」

影絵する手をガシャポンに

子どもの頃、誰もが一度は遊んだことがある影絵。動物などに見立てた手を後方から光を当てて、その影を壁に投影して遊んだことがある人は多いはずです。

歴史をひもとくと、『世界大百科事典』では、江戸時代初期から始まったと記述してあるほか、『影絵劇への招待』では、指影絵・手影絵は江戸時代の文献にもあることが示されており、中国では「影戯」と呼ばれ、紀元前200年ころの伝説にも出ているほど、影絵は昔から伝わる文化のひとつだとわかります。

歴史ある影絵を商品化したのが、今回紹介するバンダイのガシャポン「影絵の手~動物~」(以下、影絵の手)です。その名の通り、自分で光を当てて影絵を映し出して楽しめる商品になっています。

バンダイのガシャポン「影絵の手~動物~」。「RABBIT(うさぎ)」「WOLF(おおかみ)」「DEER(しか)」「PIGEON(はと)」「GOAT(やぎ)」の5種類がある=筆者撮影
バンダイのガシャポン「影絵の手~動物~」。「RABBIT(うさぎ)」「WOLF(おおかみ)」「DEER(しか)」「PIGEON(はと)」「GOAT(やぎ)」の5種類がある=筆者撮影

ボールチェーン付き商品が減少の理由

バンダイの中で「ベンダー事業部は、新しいことにチャレンジできる部署です」と話すのはベンダー事業部の石川明日香さんです。

石川さんはガシャポンの企画・開発を10年以上担当しており、幼児向けをはじめ、20~30代の女性をターゲットにした「大人女子」向けの商品も手掛けています。2015年頃にガシャポン業界で初となった大人女子向けのガシャポン販売コーナー「Brilliant Capsule(ブリリアントカプセル)」は話題となりました。

企画を立てる上で大切にしていることを尋ねると、石川さんは「最近では、インスタグラムをはじめとしたSNSが流行しています。買ったお客様がSNSに投稿したい、商品を人に見せたい、という動機づけにつながるものづくりが大切です」と話します。

石川さんによると、SNSの普及がガシャポンづくりにも影響を与え、商品は持ち運ぶ時代から、撮影し投稿する時代に変化しました。持ち運ぶためにボールチェーンをつける商品が少なくなったと言います。

賛否両論を熱意で商品化

石川さんが担当した「影絵の手」には、SNSを活用して商品を使った投稿をしてもらいたいという想いがありました。アイディアは子育てをしている時に浮かんだそうです。

「以前から動物系の商品を作りたいと思っていたんですが、他社でもたくさんあり、同じ物を作って勝負するのは難しいです。そんななか、子どもと一緒に夜寝る前に、影絵で遊んでから、寝る習慣がありました」と石川さん。そこで「影絵と動物を掛け合わせたら面白いのではないか」と、企画会議に出したそうです。

会議では賛否両論があり、「良い」と賛同する人と、「何これっ」と言う人とで意見が180度分かれました。それでも石川さんは企画を通すために、商品化したい想いを伝え説得します。商品化の最終ジャッジで石川さんは上司から「影絵の手、すごくいい。ひょっとしたらMoMA(ニューヨーク近代美術館)に置いてももらえるかもね」と高評価を得て、商品化が決定しました。

キャラクター商品には、キャラクターの魅力がすでに備わっていますが、オリジナル商品は、作り手の熱量がどのくらいあるかが試されます。影絵の手は、石川さんの情熱が伝わったガシャポンになりました。

「RABBIT(うさぎ)」で映し出された影絵=バンダイ提供
「RABBIT(うさぎ)」で映し出された影絵=バンダイ提供

手フェチも反応

ラインナップについては、誰もが影絵で遊んだことがある動物のほか、「パッと造形を見ただけでは分からない。でも投影したら分かるという驚きも考えました」(石川さん)という遊び心も織り交ぜ、5種類の動物を決めました。

具体的に商品化に向けて動き出すと、角度によってはきれいに影として、うまく投影できないものもあり、何度も原型を作り直したそうです。

影絵の手について、石川さんは「自分の手で影絵をやりながら、スマートフォンでその写真を撮ることは大変ですよね。しかし、このガシャポンはそのまま使え、コミュニケーションツールとして活用できるのがポイントです。親子で楽しんでもらいたいです」と、魅力を語ります。

実際に販売してからは、影絵としてではなく、手のフィギュアとして「これは買うべき」と手フェチの人たちからSNSで反響があり、石川さんが意図しないところでも話題になりました。ここにもSNSが普及したからこそ、商品の新たな視点が発見できる面白さがあります。

確かに手に取ってみると、実際の女性の手をモデルにしているため、フォルムがとてもきれいなのが印象的です。また、光を当てる角度によってシルエットの向きが変わり、自分なりの影絵が作れることも魅力的です。

手フェチからの反響も大きいという「影絵の手」(写真は「DEER(しか)」)=筆者撮影
手フェチからの反響も大きいという「影絵の手」(写真は「DEER(しか)」)=筆者撮影

アナログな遊びに光

改めて影絵の手を見てみると、デジタルの玩具も確かに面白いですが、影絵のような歴史が長いアナログな遊びも興味深いです。今回は、ガチャガチャ業界のマーケットリーダー的存在であるバンダイが、手頃に買えるガシャポンにしたことで、改めて影絵の遊びをお客様に伝えていることは、大変意義のあることです。

今後のものづくりに対して、石川さんは「一人でも多くに人にワクワクや驚きを届けられるような、子どもから大人まで一瞬でも記憶に残るガシャポンを今後も作ってきたい」と抱負を語ってくれました。

     ◇

「影絵の手~動物~」は「RABBIT(うさぎ)」「WOLF(おおかみ)」「DEER(しか)」「PIGEON(はと)」「GOAT(やぎ)」の5種類。1回300円。
※ガシャポンはバンダイの登録商標です。
参考文献:『世界大百科事典』(平凡社)、『影絵劇への招待』(とう・たいりう/著、晩成書房)、『影絵の話』(畑耕一/著、風々齋文庫)

ガチャガチャ評論家おまつの「きょうも回してる?」
この連載は、20年以上業界を取材しトレンドをチェックしているおまつさんが注目するガチャガチャを毎週金曜日(原則)に紹介していきます。

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ガチャガチャ評論家・おまつ(@gashaponmani
ガチャガチャ業界や商品などをSNSで発信中。著書に「ガチャポンのアイディアノートーなんでこれつくったの?ー」(オークラ出版)。テレビやラジオなどのメディアへの出演や素材提供も多数ある。

訂正:「ガシャポンはバンダイの商標登録です」を「ガシャポンはバンダイの登録商標です」に訂正しました。
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