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「帝王切開は『残念』じゃない」 死産経験した女性が伝えたい思い

「今回娘と生きて会えたことは奇跡だ、夢のようだと思いました」

ひとみさんと4月に生まれた第1子=ひとみさん提供
ひとみさんと4月に生まれた第1子=ひとみさん提供

目次

「帝王切開は産道通らないから我慢強くない子になるよ」。帝王切開で生んだ我が子と、自分に向けられた、思い込みによる発言を受け取った母親がツイッターで公開したのは、34年前、同じく帝王切開で自分を生んでくれた母からの手紙でした。

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「回旋異常」で急遽帝王切開

この春、緊急帝王切開で第1子となる女の子を出産したのは、松田ひとみさん(34)です。
ひとみさんは通常分娩でのお産を予定しており、出産当日も、陣痛がきてからはお産は順調に進んでいました。
しかし、途中から赤ちゃんがお腹の中で横向きになったまま止まってしまうという「回旋異常」の状態になったことから、急遽、帝王切開になりました。

産後、オンラインでの交流会で出産の経緯を語ると、年上の女性から「帝王切開は産道を通らないから我慢強くない子になるよ」と心ない言葉を投げかけられたといいます。

「おっしゃっていた方も特に悪気はなく、(自分にとって)当たり前の価値観としておっしゃっているのだと思いました」と、ひとみさんは冷静に振り返ります。

自分が生まれた経緯知り「誇らしい」

ひとみさん自身も34年前、母親の帝王切開を経て生まれました。

それを知ったのは、小学6年生の時のこと。
「授業参観の課題で親から、自身が産まれた時のエピソードを手紙にかいてもらってくるという課題があり、そのときにもらったのがその手紙でした」

手紙に綴られていたのは、ひとみさんのお母さんは妊娠8カ月で出血があったこと。弱ってきた赤ちゃんを助けようと、お医者さんたちが緊急帝王切開での出産を判断し尽力してくれたこと。生まれたときは仮死状態だったひとみさんは、多くの人に助けられ、いまがあること――。

手紙を読んだひとみさんは「子どもながらすごくうれしくて誇らしい気持ちになったのを覚えています」と手紙を受け取った当時の気持ちを振り返ります。

「その手紙のおかげで、私は帝王切開に関するネガティブなイメージが全くなく、その選択肢があるおかげで今私が生きているんだと子どもの頃から思っていました」。そのため、交流会で帝王切開に対するネガティブな反応を返されたときも、「特に深く傷つくようなことはありませんでした」といいます。

世間からの偏見知り、公開した手紙

一方で気にかかったのは、妊娠期間中からツイッターなどで交流を続けていた妊婦やお母さんたちから聞く、「帝王切開への偏見で苦しんでいる」という思いでした。

「コロナ禍での妊娠期間中、産院や地域の母親教室等がなく、同じ妊婦さんやお母さんと情報交換したいなと思ってTwitterを始めましたが、家族から『自然分娩の痛みを経験して欲しかった』と言われ、傷ついているフォロワーさんにとても心が痛みました」

そんな、偏見に苦しむ友人たちを知っていたひとみさんは、帝王切開へのネガティブな反応を減らし、また、友人たちの傷を癒やしたくて、小学6年生のひとみさんがお母さんから受け取った手紙をツイッターに投稿したのです。

この投稿には2万6000件以上の「いいね」がつき、「涙が出ました」「助産師やってると1つの出産がどれだけ命がけで、大変で大切なのかが、よくわかります」などといった反応が寄せられました。

死産を経験「生きて会えることが軌跡」

実は以前、ひとみさんは、妊娠6カ月で後期流産(死産)を経験しています。
お腹の中で赤ちゃんが亡くなってしまったとき、妊娠12週を超えていた場合は、陣痛促進剤を使って通常のお産と同じように出産します。
「悲しむ暇もなく入院し、何時間も痛い思いをして苦しんで産みました。やっと会えた赤ちゃんの産声を聞くことはできず、すぐにお別れをしないといけませんでした」

「人生で最も悲しくて悔しい経験でした」と振り返り、今回の妊娠でも「『また今回も同じ経験をしてしまったらどうしよう』と不安で不安で仕方なく、毎日祈るように過ごしていました」といいます。

そのため、「今回娘と生きて会えたことは奇跡だ、夢のようだと思いました」と心から安堵したそう。

ひとみさんと4月に生まれた第1子=ひとみさん提供
ひとみさんと4月に生まれた第1子=ひとみさん提供

医師「妊娠期間含めてお産。最後の1日に悩む必要ない」

「どんなお産にも泣けるほどのエピソードがあり、お母さんも子供も命がけだと、私も経験して実感をしました」とひとみさん。

「帝王切開で産まれた私ですが、なんの問題もなく大人になり、今もお母さんとしての時間を心から楽しめているし、娘も、すくすくと元気に育っています」

「妊娠出産はとてもデリケートなものだと思います。
周りには話さないけれど、同じように大変つらい経験をした女性は多いはずです。世の中には、いまこの瞬間も悲しいお産と向き合っている女性がいます。

そのような背景を知っていたら、お産の方法で『残念だ』とおっしゃることはしないはずです。
お母さんと赤ちゃんが無事に生きて会えることは本当は当たり前ではないと知っていただけると嬉しいです」

そして最後に、自身が長女を出産したあと、医師から贈られた言葉を紹介してくれました。

「陣痛が来てから産まれるまでがお産と言われていますが、妊娠が分かってからいままでの時間も、お母さんと赤ちゃんが2人で準備を頑張ってきているのだから、その期間も含めお産だと思います」
「最後の1日がどんな方法になったからといってあれこれ思い悩む必要はないと思いますよ」

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