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「現実を生きるリカちゃん」インスタ投稿に反響 大人を虜にする哀愁
ストレス社会を生き抜く〝清涼剤〟に
50年以上の長きにわたり、人々に愛されてきたドール「リカちゃん」。この人形が登場する、とあるインスタグラムアカウントが、絶大な支持を集めています。会社員になったリカちゃんの怠惰な暮らしぶりについて、画像や動画で伝える内容です。元来のファンタジックな世界観を、なぜ覆し続けるのか? 自身も社会の世知辛さと向き合う、作者の女性に話を聞きました。(withnews編集部・神戸郁人)
販売元のタカラトミーによると、リカちゃんは1967年に発売されたドールです。様々な衣服を着せ替えることができ、人形遊びの定番パートナーとして、多くの人々の心をつかんできました。
しかし話題のインスタアカウント「現実を生きるリカちゃん」(licca_real)を一目見ると、その牧歌的イメージが、美しいまでに打ち壊されます。どの投稿でも、大人になったリカちゃんが、悲哀に満ちた表情を見せているのです。
例えば、「仕事終わりのリカちゃん」と題された画像。髪を振り乱したまま、ソファの上でごろ寝する姿が確認できます。そばにあるテーブルの上を目を移すと、メイク落としに使ったのか、黒ずんだティッシュが……。哀愁漂う一枚です。
ベッドの上に、スウェットや下着などが散乱している光景を、呆然(ぼうぜん)と眺める様子を写したものもあります。足元には、たこ足配線状態の延長コードが置かれ、凄(すさ)まじい生活感を醸し出しています。
寝坊後、慌ただしく出勤するまでの「モーニングルーティン」動画などを含め、これまでに40以上のコンテンツが公開されました。高評価を示す「いいね!」の数が、数千~数万単位に上る投稿も少なくありません。
今年1月に開設されたアカウントのフォロワー数は、増加の一途をたどっています。約2週間前に2500人を突破後、ツイッター上に投稿された関連画像が話題をさらい、人気が爆発。29日時点で、32万人を超えました。
「取り上げるシチュエーションは、ほぼ私自身の日常の切り抜きです」。投稿者で、20代の女性会社員が、コンテンツの内容について語ります。
幼少期から手芸や工作に親しみ、写真を使った絵本を作るなどしてきました。好きなことを形にする喜びを、実感する日々。しかし成長するにつれ忙しくなり、いつしか趣味の時間が取れなくなっていきます。
そんな中で注目したのが、リカちゃんでした。
元々リカちゃんには「素敵なお姉さん」という印象があり、小学生の頃は、ほぼ毎日遊んでいたそうです。就職後もインスタグラム上の「リカ活(大人が様々な形でリカちゃんとの時間を過ごすこと)」画像などを見て、楽しんできました。
「私が目にしたどのリカちゃんも、とても可愛くてリアルでした。『ズボラでだらしない、こんな自分でも、リカちゃんに投影したら可愛くなるのかな?』。そんな風に興味が湧いたことが、取り組みのきっかけです」
創作は試行錯誤の連続です。コンテンツの雰囲気に合うよう、ネットでリカちゃんの衣装を購入したり、自作したり。またテレビやYouTube好きが高じ、動画編集について独学。比較的苦手な写真撮影は、納得の一枚が撮れるまで粘るといいます。
「アカウントでは、リカちゃんのズボラな生活を映し出しています。ちょっと抜けた一面がありつつも、きれいな服装をさせたらバチッと決まる。私も彼女同様、親しみやすくて格好良い、素敵なお姉さんになりたい。いつも、そう思っています」
ところで女性は先日、「現実を生きるリカちゃん」について、アカウント上でこうつぶやきました。
思いは情報の受け手にも伝わり、「自分の日常かと思った」「私も同じことやってる」など、リカちゃんに自らの姿を見て取る人々のコメントが絶えません。
このことに関し、女性は「こんなに反応がいただけるなんて……。世の中みんな、意外とこんな感じなんだ、と勝手に安心しています」と笑います。
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