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「実は家めっちゃきれい」盲導犬との生活〝見えないあるある〟を発信

意外と知られていない…お店での行動

浅井純子さんと盲導犬のヴィヴィッド=撮影・オオツキWAYタイジ
浅井純子さんと盲導犬のヴィヴィッド=撮影・オオツキWAYタイジ

目次

盲導犬との日常についてツイートし、たびたび注目を集める全盲の浅井純子さん(@nofkOzrKtKUViTE)。「いいね」が何万件もつくことも多く、「初めて知りました」「教えていただきありがとうございます」といった優しいコメントが寄せられます。盲導犬だって踏まれると痛い…などと「見えないあるある」を日々つぶやく浅井さんの願いを聞いてみました。(朝日新聞・興津洋樹)

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本人も意外 注目されたツイートの数々

いつも満面の笑みの浅井さん。隣に盲導犬のヴィヴィッドがいつもいます。

現在47歳の浅井さんは、30歳の時に特発性周辺部角膜潰瘍という角膜の病気になりました。その後、徐々に視力が下がって行き、2018年に全盲に。

もちろんスマートフォンの画面を見ることはできません。ですが、表示されている文字や打ち込んだ文字を読み上げてくれる「音声読み上げ機能」を使って、音で確認しながらスマホを操作しています。

まず、話題になったツイートを見ていきましょう。

《盲導犬は信号を止まって教えてくれます。でも、色がわからない。人や自転車や車の流れで私が赤か青かを判断します。信号で止まっていたら独り言をつぶやいてくれませんか?「あー信号が青になったから渡ろう」それで私は安心して信号が渡ることができます。つぶやきで安全になれるってとても素敵》

このツイートには、「やってみます!」「初めて気付きました」「声をかけるのは恥ずかしいけど本当は何か手伝えることがあるんじゃないかといつも思っていました」などのコメントがつきました。

マッサージなどをして社員の体のケアをする「ヘルスキーパー」として、アパレル企業で働く浅井さん。大阪市の中心街にある職場に行くためには、盲導犬と街中を歩くことが不可欠です。

「どう声をかけたらいいのかわからない人って多いと思うんです。こんな風にしてね、と伝えると余計に声をかけにくい人もいるかもしれないと思って、『つぶやいてみてください』という提案にしてみました」と話します。

《全盲になる前は、盲導犬は痛みに耐える訓練をしていると思っていた。でも決してそんな訓練はされておらず、私が間違えて後ろ足を踏んでしまったときなど飛び上がっておしりパンチしてくるんですよね(笑)盲導犬だって痛いものは痛い。いつもありがとうね ♡》というツイートも注目を集めました。

「いろいろな人と話して、盲導犬のことを完璧やと思っている人が多いと知ったんです。痛みを我慢しているとも思われている。でも、全然違うんです。痛いときは怒るし、私が出かけるときも、置いていかないでという感じで寄ってきます。

それに、ヴィヴィッドには仲良しの盲導犬の彼女もいるんですよ。こんな盲導犬のことを身近に知ってほしいと思ってツイートしたんです」(浅井さん)

次は6万回近くリツイートされたこちら。

《盲導犬って、お店に入ったらどうするかってご存知ですか?歩き回ると思われるかも知れませんが、実は盲導犬は入店すると、必ずテーブルの下もしくは使用者の足の下に待機をします。でも、これを知らなかったら入店を拒否する気持ち、分かります。だから盲導犬の賢さについて知って頂けると嬉しいです。》

浅井さんが盲導犬と歩くようになったのは2016年。夫と2人で、初めて盲導犬を連れて飲食店に入ろうとした際には、入店を断られたといいます。

「店員さんは『無理なんです』と繰り返しました。入れることが当たり前だと思っていたのでびっくり。でもなんで断られるんやろうと思ったら、盲導犬がじっとできることを知らなかっただけだと気付いたんです。

だから、まず知ってもらうことからと思い、ツイートしました。たくさん拡散されて、本当にありがたいですね」

母親を恨んでいた 今は「心からありがとう」

次に紹介するのはこちら。

《全盲になると、片付けなんてできないと思われがちですが、実は逆なんです。なぜなら「置いた場所が分からなくなる」からなんです。つまり、「とりあえず置いておこう」は、目が見えない人にとっては「捨てる」と同じなんですよね。全盲になった3年前から、私は片付け名人になりました♡》

浅井さんは当初、自分のツイートに関心が集まることを意外に思ったそうです。視覚障害者について知りたい人が多いのならと、身近に感じてもらえる投稿をするようになりました。

「しっかり片付けたり、整理したりしておかないと、何がどこにあるか全くわからなくなるでしょう。だから、友達からも家めっちゃきれいやんと言われます。読めないので紙類も全くないのですっきりです。

クローゼットの中も大体触ったらなんの服かわかるんですが、たまにわからなくなったときは、iPhoneで写真を撮って友達とかに送って、何色?って聞いたりしています」

母の日のつぶやきも印象深いものでした。

《今日は母の日です。障害を持ってから母は私の手伝いをほとんどしてくれませんでした。実は最近までなんで手伝ってくれなかったんだろう?と恨んでいました。でも私、今は躊躇せずhelpできるんです。これは、私を甘やかすことをしなかった母のおかげだと最近やっと気がつきました。心からありがとう》

思いを聞きました。

「ずっと母親の気持ちがわからなかったんです。でも、手伝ってもらわなかったおかげで、今があると後から気付きました。心配でなんでも手伝いたくなるものかもしれませんが、できないところだけ補ってもらうというのが、一番良いあり方なのかと思いました」

コメントほぼすべてに返信 浅井さんの願い

ツイートには100件を超えるコメントがつくことも多いですが、浅井さんは音声読み上げ機能でチェックし、ほぼすべてに返信しています。フォロワーを大事にしたいという思いと、コメントから次につぶやくことのアイデアが浮かんでくるためです。

ツイートする文章を考えたら、大学で働く友人にチェックを頼んでいます。「もっとこうしたら伝わる」「この内容はまずいかも」などとやりとりをする入念さです。ツイートするまでに丸一日悩むこともあるんだとか。

ほかにも、YoutubeやInstagramでも精力的に発信をしています。

そんなに大変な労力をかけ、ツイートや発信をしている理由は、なんなのでしょうか。

「盲導犬は数も少なく、よく知らない人が多いと思います。だから、まずは知ってもらうところからと思っています。

友人たちも『最近白い杖を持っている人が多くなったなあ』と話していますが、もとからたくさんいたんです。でも、目に入っていなかった。だから、ツイッターでも私のことを知ってもらえたら、目に入ることになって、気にかけてもらえることにつながるかと」

浅井純子さんと盲導犬のヴィヴィッド=撮影・オオツキWAYタイジ
浅井純子さんと盲導犬のヴィヴィッド=撮影・オオツキWAYタイジ

浅井さんは2017年、盲導犬のヴィヴィッドを連れてハワイに旅行に行った際、人々の接し方に驚いたといいます。

「ほんまに『普通』の接し方をしてもらえてびっくりしたんです。店に入るときも、こっちへどうぞと戸惑うようなこともないし、電車の席も当たり前のように譲ってもらえたんです。この人は目が見えない人なんだというのを、特別のことではなく接してくれた感じがして、とても新鮮でした」

障害があってもなくても、できないことがあれば互いに補い合えるような社会になることが、浅井さんの願いだといいます。そんな日を夢見て、浅井さんはこれからもコツコツとツイートを続けます。

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