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連載

#91 ○○の世論

「父親は大黒柱」通用しなくなったのはいつ?世論調査でたどってみた

30年前かろうじてあった威厳も今は…

父の日のメッセージが書かれた氷と永明=2020年6月17日、和歌山県白浜町のアドベンチャーワールド、大野宏撮影
父の日のメッセージが書かれた氷と永明=2020年6月17日、和歌山県白浜町のアドベンチャーワールド、大野宏撮影 出典: 朝日新聞

目次

6月20日は「父の日」です。5月の「母の日」に比べると、やや影の薄い印象もある「父の日」。「お父さん」の家庭における存在感は、どうなっているのでしょうか。父の背中を思い浮かべながら、世論調査で振り返ってみます。(朝日新聞記者・植木映子)

父親が「大黒柱」だった頃

「父親っていうのは大黒柱だろ!」

日曜夜のテレビドラマ「ドラゴン桜」で、阿部寛さん演じる主人公・桜木の一喝です。「女に学歴は必要ない」と、娘の東大受験に反対する父親を説得する一コマでした。

この「大黒柱」発言をきいて、「今もそういうセリフが通用するんだ……」と少し感慨深い気持ちになりました。

父親が家庭の中心であることが当然、と思われていた時代は、確かにありました。

今から30年前、1991年12月に朝日新聞社が行った面接世論調査で、「いま、父親は、家庭のなかで大黒柱のような存在だ、と思いますか」という質問をしています。「大黒柱だと思う」人は68%で、「そうは思わない」29%を大きく上回りました。
女性の方が父親を「大黒柱」と思う人が多く、72%。男性は63%でした。

同じ調査で、いまの男性は「しっかりしている」25%に対し、「頼りない」が61%だったこともあってか、当時の記事では「実際はともかく、そうあって欲しい、という女性の願望も含まれた数値か」と分析しています。

1999年3月の面接調査で同じ質問をした際も、「大黒柱だと思う」66%、「そうは思わない」29%とほぼ同じ傾向でした。

「あなたのお宅は、だれを中心に動いていると感じますか」と聞くと、「父(夫)」が58%で、「子ども(孫)」15%、「母(妻)」14%、「祖父」4%、「祖母」1%を圧倒していました。

 

お母さんの方が大変

1990年代、筆者は未成年でした。父はサラリーマン、母は専業主婦。

当時、「父親は大黒柱」と意識しないまでも、大学進学など大きなお金が動く場面では、「最終承認者」くらいには思っていたような気がします。ちょくちょく相談はしないけれど、最後に反対されると面倒くさい。会社勤めの今で言うと、「ちょっと上の方の偉い人」。

2000年代に入ると、結婚した姉たちは「お母さんの大変さがわかった」と母への感謝を新たにします。勤め人になった筆者が「働くのも割と大変だけども」と、やんわり父の擁護を試みると、「子育てのほうが大変だし!」と秒殺されました。

「お父さんの大変さがわかったよ」とは、あまり聞かない気がします。筆者には、女きょうだいしかいませんが、家庭をもつ男性は言っているのでしょうか。言わないまでも、思ってはいるのでしょうか。

2000年代の世論調査では、父親の存在感の揺らぎが見られます。

2002年12月の面接調査で「一般的にみて、今の家庭で、父親は中心的な存在だと思いますか」と尋ねると、「父親は中心的な存在」は40%にとどまり、「そうは思わない」が56%と半数を超えました。

40代男性の67%が「そうは思わない」と答えるなど、男性では父親世代にあたる40~60代で否定的な答えが目立ちました。女性では、若年層ほど否定的な傾向があり、娘世代の20代は7割以上が「そうは思わない」と答えました。

 

働くだけじゃダメ

夫婦の役割をめぐる考え方の変化も背景にあるようです。

「仕事は男性、家事や育児は女性」という役割分担について、2002年の調査では「賛成」は37%、「反対」53%という結果でした。

父親が「大黒柱」だった1991年12月調査では「賛成」55%、「反対」37%だったので、10年余の間に逆転したことになります。

 

2018年11~12月の郵送調査でも「夫が主に働いて生活費を稼ぎ、妻が主に家事や子育てをする方がよい」と思う人は32%にとどまり、「そうは思わない」62%が大きく上回りました。

この調査で「男性が育児休業を取るのが当たり前の社会になる方がよい」と思う人は69%に達しています。

働いて一家を支える、という役割が、男性である父親だけのものではなくなった――。

それに加えて、家計を支える「ちょっと偉い人」として、最後に口を出すだけでは、一目置かれなくなり、子育ても家事もきちんとこなさないことには、認められない時代になってきたようです。

筆者の父は、家事をまったくしませんでした。電子レンジの使い方すら「要点をメモにしてくれないとわからない」。半分嫌みで「スタートボタンを押す」という1行メモを渡しても、結局は使いませんでした。

ストレスフルな仕事を頑張ったのに、母親ほどにはリスペクトされなかった父。子どもだけでなく、3匹の飼い猫も全てメスで、肩身が狭かっただろう父。「女に学歴は必要ない」とはもちろん言わず、大学受験を応援してくれた父。

今はもう鬼籍に入ってしまい、父の心中は想像することしかできません。が、こうして話のネタになるエピソードを残してくれてありがとう、と父の日を前に思うのでした。

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