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#103 #父親のモヤモヤ

マミートラックはネガティブ?「時短やパートが〝後退〟は違和感」

「妻に言えない夫の本音」を読んだ女性から届いたメッセージ
「妻に言えない夫の本音」を読んだ女性から届いたメッセージ

目次

#父親のモヤモヤ
※クリックすると特集ページ(朝日新聞デジタル)に移ります。

「『マミートラック』という言葉の捉え方について、女性の『降りていく』生き方も肯定されてよいのでは? と思いました」

仕事と家庭の両立に葛藤する男性らが登場する「#父親のモヤモヤ」企画をまとめた書籍「妻に言えない夫の本音」(朝日新書)の読者からそんな感想を頂きました。「マミートラック」という言葉はネガティブな捉え方であって、仕事一辺倒になりがちな男性の働き方が見直される中、女性が主体的に選び取ったとしても、時短勤務などがマイナスに受け止められることに違和感を覚えたというのです。
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子どもと一緒、貴重な時間

女性は首都圏在住で40歳。5歳の長女と1歳の次女がいます。産休や育休をあわせて2年超取りました。女性の夫も1年間の育休を取得。女性は、この春から仕事に復帰しました。病院に勤務しています。

午後4時半までの時短勤務です。子どもと過ごす時間を少しでも長くしたいと考えたからです。

こうした働き方については、夫婦で話し合い、女性自身も納得したものだそうです。

「朝の1時間、お迎えに行った後寝るまでの3時間。1日計4時間が子どもといられる時間です。私にとっては、仕事よりも圧倒的に少なく、そして貴重な時間です」

主体的な働き方の選択も「マミートラック」?

「マミートラック」は、子育て中の女性が昇給や昇進と縁遠いキャリアを積む状況を示す言葉です。「妻に言えない夫の本音」では、そうした女性のモチベーションが「静かに冷却されていく」ケースがあったとする箇所もあります。確かに、「マミートラック」をネガティブな状況と捉えています。

一方、男性の働き方については、「降りていくキャリアを受け入れるとか、仕事が二の次、三の次の生き方もちゃんと許容しようぜ」と話す評論家の常見陽平さんのインタビューも掲載されています。

女性は、これらを引き合いにこう指摘します。

「女性差別解消のために女性の社会進出、地位の確立などが叫ばれています。私も格差解消を願っています。一方で、主体的な働き方の選択を『マミートラック』というネガティブなものとして捉える必要があるのかと思います。男性には『降りる』ことも提唱される中で、時短勤務やパートが後退した選択肢と語られるのは違和感があります」

「妻に言えない夫の本音」を読んだ女性から届いたメッセージ
「妻に言えない夫の本音」を読んだ女性から届いたメッセージ

「フルタイム=理想像」が固定化?

女性は、仕事を制限していることについて、「寂しい面もある」と話します。

出産前は学会で発表したり、関心を持ったテーマの市民活動に参加したりといった時間がありましたが、そうした機会は極端に少なくなりました。

ただ、現状には「納得している」と話します。

1歳の次女がいつの間にかソファやテーブルによじ登るようになった。5歳の長女は赤ちゃん返りをして哺乳瓶でミルクを飲みたがっている。娘なりの「SOS」に、親として応えたい――。そうして子どもとの日々を大切にしているそうです。

女性は、こう続けます。

「正社員、フルタイムで働き、役職者をめざす。そうした理想像が固定され、また押しつけられているとも感じています。それは、理想像に当てはまらない選択をした人の生きづらさにつながっているように思います。いろいろな働き方が選び取れ、さまざまな価値観が肯定されることが大切なのだと思います」

その選択はフェアか

女性に感想を頂いた私は、ハッとしました。

「マミートラック」という言葉自体は、女性の置かれた理不尽な状況を可視化する上で、意味があるものだと考えます。男性に置き換えた「パピートラック」という言葉も目にするようになりました。「マミートラック」という言葉があることで、問題を語りやすくなったと思います。

その上で、「主体的な働き方の選択を『マミートラック』というネガティブなものとして捉える必要があるのか」という指摘は、自分の内面に目を向けるきっかけになりました。

補足になりますが、「主体的」かどうかは、その選択がフェアな状況で納得の上なされたのか、ということが大切だと思います。

話を戻すと、私自身、仕事の優先度は、家庭や、その人を取り巻く事情との間で、もっと相対化されてよいと思っています。しかしながら、どこかに、まだ仕事を「最優先」に捉えている自分がいるのではないかと考えさせられたのです。

「妻に言えない夫の本音」で、「マミートラック」という言葉を使う際、「『主体的』な選択をした読者はどう思うか」までは、恥ずかしながら思いが至っていませんでした。仕事への関わりを減らすことに、ネガティブな意味合いだけが浮かんだとすれば、それは、自分自身の中で、仕事の領域の比重が高いことの証左だと振り返っています。

自身の内面と向き合うきっかけを与えて下さった女性に感謝しています。内面化された考えは、どこかで社会とつながっています。気づきを手がかりに、これからもモヤモヤをめぐる問題を考えて参ります。

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記事の感想や体験談を募ります。いずれも連絡先を明記のうえ、メール(dkh@asahi.com)で、朝日新聞「父親のモヤモヤ」係へお寄せください。
 

共働き世帯が増え、家事や育児を分かち合うようになり、「父親」もまた、モヤモヤすることがあります。それらを語り、変えようとすることは、誰にとっても生きやすい社会づくりにつながると思い、この企画は始まりました。あなたのモヤモヤ、聞かせてください。
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