連載
#23 「きょうも回してる?」
土下座ストラップ・コレジャナイロボ…生みの親の「A4で1枚」ルール
「人生の真理を教える情報教育玩具」
今回は、オリジナルのガチャガチャを作り上げる「クリエーター」が、普段どんな活動をしているのかをご紹介しようと思います。
私がザリガニワークスの作品を知ったのは「コレジャナイロボ」であり、初めてコレジャナイロボを見たとき笑ってしまったことを今でも覚えています。
ザリガニワークスは武笠太郎さんと坂本嘉種さんの2名による、玩具や雑貨の企画開発を主な業務とするマルチクリエイティブ会社です。今年で設立17年目を迎えました。「Fire Your Imagination(あなたの想像力に火をつけたい)」をテーマに、数々の玩具や雑貨を生み出してきました。
世間的に、ザリガニワークスの認知度を高めたのが、2008年にグッドデザイン賞を受賞した「コレジャナイロボ」。
子どもにプレゼントしたときに「欲しいものはコレジャナイ!」と残念がらせることを狙いとした絶妙なパチモノ感、かつ手作り感たっぷりのロボットです。「がっかりさせることで子どもにも人生の真理を教える情報教育玩具」という大義を真面目な顔で語ることで面白商品として成立するのではないかと武笠さん・坂本さんは考えたそうです。
思惑通り、コレジャナイロボは深夜番組やインターネットで話題になり、遂にはガチャガチャにもなりました。
また、ザリガニワークスはオリジナルのガチャガチャ商品の企画も手掛けます。最近では、このコラムでも取り上げたブシロードクリエイティブから発売の「石」の企画・デザインを担当しました。現在、30以上のガチャガチャの企画・デザインしたうち、もっとも売れたのがキタンクラブから発売の「土下座ストラップ」。
シリーズ累計310万個売れた大ヒットの商品です。「企画を考える上で大事にしているのは、手にとった人が自分事として楽しめること、余白を残したものづくりを大事にしています。商品を手にした人の生活、考え方や思い出などを組み合わせたときに、企画の面白さが広がるように配慮しています」と武笠さんは話します。
さらに、オリジナルのガチャガチャは売り場で、いかにお客様の目に留まり回してもらえるかが勝負です。
土下座ストラップの企画もA4サイズ1枚の企画書だけをキタンクラブに提案し、3秒で商品化が決まったそうです。武笠さんは「売り場でお客様が購入するかどうかは、ディスプレイPOPを見て瞬時に判断されます。だから、企画もA4・1枚で伝わるものでないといけません」と話してくれ、土下座はまさに、シニカル的に日本人の特徴を表したガチャガチャになっており、一目で何が面白いかというザリガニワークスの企画意図が伝わる商品です。
武笠さんと坂本さんは10年以上、専門学校や美術系大学などでキャラクターデザイン、企画のコツなどを教えています。プログラムのなかには、ガチャガチャのワークショップがあります。このワークショップはガチャガチャを作る側の面白さが端的に体験できる授業になっており、武笠さんは「企画デザイン全般を学ぶ上でも、とてもよいプログラムではないか」と言います。
このワークショップでは、まず最初に「売れるガチャガチャを考えよう!」という課題を出し、商品ではなく、ディスプレイPOPのみを作成させます。基本的に宿題形式だそうですが、3〜7日後の授業時間に提出。教室にガチャガチャの機械をずらりと並べ、生徒たちが作ったディスプレイPOPを機械に設置します。そして、学生に実際の硬貨を持たせ、自分が欲しいと感じたものを回してもらいます。
さらに、売り上げを集計して上位を発表し、リアルな「売り上げ」を体験してもらいます。
武笠さんは「売れる企画は、並べた瞬間わかるんです。また、いくら良い企画でも、グラフィックデザインがダメだとあまり売れない。あるいは企画がまあまあでも、グラフィックデザインで売れることもあります。いずれにしても『100円を入れてもらえるかもらえないか』というリアルな体験ができます」と説明してくれて、グラフィックデザインや企画の勉強、そして販売の実践も体験できるガチャガチャのワークショップは、子どもから大人まで学べる教材ではないかと思いました。
今後の活動として、武笠さんは「色々なことをやってみたいので、異業種の方もガンガン声をかけてもらえたら嬉しいです」と話してくれました。
ザリガニワークスがますます面白いことで世の中を明るくしてくれることを期待しています。
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