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「メンズメイク」で知った〝面倒さ〟 でも…女性はいつもこれを?

「おしぼり顔ごしごし」ができないなんて!

鏡を見ながら眉を描く筆者
鏡を見ながら眉を描く筆者 出典: 朝日新聞

目次

新型コロナウイルスにより「おうち時間」が増える中、関心が高まっているのが「メンズメイク」です。SNSやオンライン会議などの浸透で〝見た目〟を意識する機会が広がり、Kポップアイドルやメイク術を発信するYouTuberらの影響もあって「恥ずかしい」というハードルが低くなっています。かくいう私(27)もその一人。百貨店の化粧品売り場で試したアイテムをまとめ買いしてから数カ月。メイクをめぐる悩みがぽつぽつと浮かんでいました。
(朝日新聞記者・大野択生)

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メイク、面倒くさい!

はい、いきなり身もふたもない見出しですみません……。

記者は休日に自宅でのんびりしている時でも、事件があれば呼び出されて出社したり、現場に急行したりすることがあります(入社1年目の時、先輩と深夜まで酒をあおり帰宅して布団に潜り込んだ数時間後、会社からの電話でたたき起こされて半ばクラクラした頭で未明の事故現場に向かったら既に大勢のマスコミが集まっていて、さらになかなか電話に出ない私の代わりに呼び出された職場の同期が取材をしていて、心からの申し訳なさでいっぱいになりました)。

私が寝起きに呼び出された場合、今までは鏡を見てさっと顔を洗って歯を磨き、目ヤニや鼻毛、口臭、寝癖など各種最低限をチェックしたら5~6分で家を出ていました。

が、メイクは時間がかかります。化粧水で保湿をした上でBBクリームを塗り、ファンデーションを重ね、コンシーラーでヒゲ跡などを隠し、アイブロウを引き、パウダーを振り、リップに髪の毛セットと、全部しっかりやるとだいたい15分くらい。簡単に保湿+BBクリーム+アイブロウ+髪の毛で済ませる時でも7~8分はかかります(あと、どちらもメイクの前にヒゲそりが加わります)。下手にメイクを急ぎ焦ると、うっかり眉を引くのに失敗してすごい顔になってしまいます。

外の世界と向き合うために、踏まなきゃいけないステップの多さが煩わしく思えてきて、2度目の緊急事態宣言で外出しない生活が続くとそれは増してきました。加えてすっぴんを人前にさらすことが気恥ずかしくなり、外に出るのがおっくうに感じてきました。

社内のリモート会議の開始ぎりぎりまで寝てしまった場合は、カメラをオフにして出ることも(会社の人たちすみません)。生活にメリハリをつけるために、外出しなくても化粧をする「おうちメイク」という言葉があることも最近知りました。

いまの自分の顔、どうなってる??

居酒屋や喫茶店に入った時にもらう熱々のおしぼりで顔を拭く(俗に言うアツシボゴシゴシ)と気持ちよくて好きだったので、昔からよくやっていたのですが、メイクをした状態でこれをやると事故が起きてしまいます。

ほかにも何かを食べたりコップに口をつけたりすればリップは落ちるし、マスクを外すと内側にはベースメイクの肌色がべったりつきます。目や鼻がかゆいときに指でポリポリかくこともできません(逆に、自分の顔を触りがちな癖があることに気付きました。よくないな……)。花粉症の人はティッシュで鼻をかむたびに鼻周りの化粧がはがれてしまうから、特に大変だなと思います。

手鏡も持ち歩いていないので、「いまの自分の顔、どうなってる??」と、化粧が崩れていないかどうか地味な(だけど軽視できない)不安も生じるようになりました。ある日、駅の出口を間違えて取材の時間に遅れそうになり猛ダッシュで向かったのですが、到着したビルの窓ガラスに映った自分の顔はベースメイクが浮きまくってすごい顔になっていて、思わず声が出てしまいました。


すっぴんの顔(左)とメイクをした後(右)の比較。ヒゲそりの跡が目立ちにくくなったほか、眉を描いてキリッとした印象になった、気がする
すっぴんの顔(左)とメイクをした後(右)の比較。ヒゲそりの跡が目立ちにくくなったほか、眉を描いてキリッとした印象になった、気がする

気付いた「当たり前」のこと

日常的にメイクをしている方々にとっては、メイクに時間がかかることへの煩わしさも、気付かぬうちに化粧が崩れていることへの心配も、当たり前のことかもしれません。……そう、「当たり前」なんです! 

朝の通勤電車でメイクをする女性を「はしたない」と批判する風潮がありました。でもその女性は、自宅でメイクアップにかける時間と手間を、できる限り休息にあてたいと願った末の行動だったのかもしれません。化粧ポーチをカバンに入れて持ち運ぶ人が多いのも、外出先で崩れた化粧を手早く直すためのものだったと、意味がようやくわかりました。


自分でメイクをしてみることで、今まで気付かなかったことが次々と見えてきた気がしました。というか、つい数年前まで目ヤニも取れきっていないような寝起き同然の顔で出かけていた自分、控えめに言って激ヤバだったな……。


こんな感じで、取材や私的な実践を通じてメンズメイクに関して感じたことを随時書いていきたいと思います。ここまで書いてきたことも、これから書くことも、読んでくださっている方にとっては「何を今更」ということばかりかもしれません。でもその中に、どこかほんの少しでも共感していただけるものがあればうれしいです。

 

大野択生(おおの・たくみ)
1993年生まれ。湘南、東京で育つ。大学は農学部出身だが、就職してから理系っぽいことにはあまり関わっていない。2016年に朝日新聞に入社。福岡、長野で勤務し、2020年に文化くらし報道部に異動。テレビ業界の担当を経て、現在は美術・アート担当。シャツの襟をベースメイクで汚していないか、いつもびくびくしている。
 

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