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わかめラーメン「麺なし」が登場、スープとは言わない開発者の商品愛
1983年の発売以降、エースコックのロングセラーとして愛される「わかめラーメン」。そこから麺だけをごっそり抜いた、「わかめラー まさかの麺なし」が発売されました。「それって、ただのわかめスープなのでは……」という疑問を抱きつつ、スーパーで思わず二度見した記者が、開発の背景を聞きました。
4月26日から全国発売のわかめラーは、昨春に続き2度目の登場です。カップを開けると、入っているのは乾燥わかめがたっぷり入ったかやくと、粉末スープのみ。わかめの量は通常のわかめラーメンと比べて4.5倍です。熱湯を注いで3分待つと、カップの中が「わかめの海」と化すほどのインパクトです。
取材に応じた開発担当者の林誉之(たかゆき)さんに、「これは、わかめスープですよね?」と直球の質問をぶつけました。すると林さんは、「わかめスープではなく、わかめラーメンの麺を抜いたものです」ときっぱり。「社内では『麺なし』と呼ばれることが多いですね」と続けました。
エースコックの歴史の中でも、即席めんの麺抜きは異例というわかめラー。誕生のきっかけは、消費者の声でした。
「お客様の声を聞いていると、麺ではなく『わかめが好きで買っている』という方がいらっしゃいます。そうした人たちに、アピールできる商品作りを始めたのがスタートでした」(林さん)
そして、2018年にできあがったのが、発売から35周年を記念した「わかめ量3.5倍」のラーメンです。シリーズの中でも、ここまで増量したのは初めてだったそうですが、SNSを中心に話題に。売れ行きも、新商品の中で上位でした。「話題になるだけでなく、実際に買ってもらえたのが大きかったです。わかめが多くても支持されるという手応えになりました」
結果を受け他の開発陣も、「それなら麺を抜いて、わかめだけで売ってみよう!」というムードに。「会社に息づいている『何でもやっちゃえ精神』も後押しして、麺なしの開発が始まりました」
わかめラーメンから、麺を抜いた商品を作る。簡単そうな気もしますが、企画から発売までには1年ほどかかりました。
「ラーメンで使っている麺は油で揚げているので、熱湯を入れると油分がスープにも溶け出します。それがコクにつながっていました。だから最初、麺を抜いただけの試作品を食べたら、あっさりとしたスープになってしまったんです。そこから、わかめラーメンの世界観を壊さないような、スープの調合にこだわりました」
油分以外にも、麺に含まれていた塩味など、「わかめラーメン感」を出すために相当な試行錯誤を重ねたという林さん。冒頭の質問に「わかめラーメンの麺を抜いたものです」と答えたのも納得です。
とは言え、昨年の発売時もSNSなどで「わかめスープでは?」という反応はあったそうです。「それも話題の一つとなってくれたので、ありがたいツッコミでした」
林さんがこう語るのは、わかめラーが「派生商品」という役割も担っているからです。
「わかめラーメンは発売から38年愛されている商品ですが、『鮮度』という点では限界もあります。そこで、ブランドの軸はぶらさずに、新しいお客様との接点を作ったり、存在を思い出してもらったりするのが派生商品です。麺なしも、話題になったことで『わかめラーメンも食べてみよう』という人が増えました」
わかめラーは、話題性だけでなく健康志向の点からも消費者に刺さったといいます。終売後から再販売を望む声もあり、昨年と同じ時期に発売されました。「パッケージも昨年より麺なしを強調するようにしました。恒例商品に成長してもらえればうれしいです」
今回の再発売では、昨年と同じスタンダードの「ごま・しょうゆ味」に加えて、「みそ味」も登場しました。みそ味は、マルコメとコラボする気合の入れようです。でもそうなると、こっちは「みそ汁」ではないか? 取材の最後に林さんにぶつけると、こう返ってきました。
「あえては言っていませんが、油揚げやねぎも入っていますからね……。みなさんの想像にお任せいたします」
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