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エンタメ

「レスが下手」だったHKT森保まどかさん変えた総選挙の「ピンチ」

卒業前に紆余曲折の10年を振り返る前編

2020年8月、東京・お台場で「@JAM」の無観客配信ライブに出演した時の森保まどかさん。新型コロナウイルスの影響で、これがHKT48にとってこの夏初めてのフェス参加だった。シングル曲「3-2」を初披露した
2020年8月、東京・お台場で「@JAM」の無観客配信ライブに出演した時の森保まどかさん。新型コロナウイルスの影響で、これがHKT48にとってこの夏初めてのフェス参加だった。シングル曲「3-2」を初披露した

目次

3月に福岡が拠点のアイドルグループHKT48からの卒業を発表した森保まどかさん(23)は、グループの選抜常連として活躍してきました。ですが、約10年間の活動を通じて実は3回、卒業や活動辞退を意識したことがあったそうです。5月29日に予定される卒業コンサートを前に、軌跡を振り返り、卒業への思いを聞きました。

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森保さんにとっては最後の参加となるHKT48最新シングル「君とどこかへ行きたい」のジャケット写真(C)Mercury
森保さんにとっては最後の参加となるHKT48最新シングル「君とどこかへ行きたい」のジャケット写真(C)Mercury

濃かったアイドル人生、後悔はなし

森保さんはHKT48のシングル曲では1曲を除いて選抜メンバーに選ばれ、5月12日発売の14枚目の最新シングルでは、卒業を記念してカップリングに初めてのソロ曲も収録されます。

特技のピアノを生かして昨年はソロピアノアルバムも発売。そんな華やかな活動の裏で、ひざのけがで1年以上、ステージに立てず、苦しんだ時期もありました。

「本当に浮き沈みや紆余曲折がありましたが、おばあちゃんになって振り返っても、ずっと、刺激的で楽しかった、濃かったなと思えるアイドル人生だったと思います。毎日がジェットコースターみたいでした」。アイドルとして過ごした日々の感想を聞くと、こんな答えが返ってきました。

HKT48の前の運営関係者にも卒業を慰留され、昨春から新たに運営主体となった会社の社長も「やめるのを、やめない?」と言ってくださっている、と森保さんは語ります。「ありがたいことだと思っています。(私を)買ってくれているということなので」

それでも、「やり残したことはないです。この時、こうしていればよかったというのがあまりなくて……。後悔はないです」。3月6日に劇場公演で卒業を発表した時と同様、晴れやかな表情を見せました。

ZOOMを通じて、インタビューに答える森保さん=2021年4月
ZOOMを通じて、インタビューに答える森保さん=2021年4月

同期に励まされ

アイドルを夢見てオーディションを受けたメンバーが多いなか、長崎市出身の森保さんは元々、アイドルに興味がありませんでした。

幼稚園から続けていたピアノのレッスンに週数回通い、自宅で夜遅くまで練習を重ねる。国内コンクールで受賞歴もありますが、その分、中学校で部活動に入ることもなく、ピアノと向き合う日々でした。

それが、本人が知らないうちに父親がHKT48のオーディションに応募。「親バカだと思いますが、どうも娘を芸能人にしたかったみたいです」。中学2年生だった2011年7月、1期生として合格。福岡に引っ越し、全く違う歩みが始まります。

運動は苦手、AKB48の曲もほぼ知らない。「体力がなくて、レッスンがきつくて、帰って夜ごはんを食べられないくらいでした」。お披露目前に活動を辞退しようと考えたこともありました。

同期でともにモデルに興味があった安陪恭加さん(23=卒業)に相談すると、「一緒に雑誌で共演するまではできないよ」と励ましてくれたそうです。「部活をやったことがない私は仲間の友情に初めて触れて、それ自体が衝撃的でした。うれしさもあって。それで辞退は免れました」

2013年11月、2周年記念公演のステージに立つ森保さん(左から2番目)
2013年11月、2周年記念公演のステージに立つ森保さん(左から2番目)

初の選抜も多忙の日々に

卒業を最初に考えたのは活動開始から3年ほど経ったころだったと言います。

結成時のメンバーの平均年齢が14歳弱と若く、すべてが手探りだったHKT48は、12年に指原莉乃さん(28)、多田愛佳さん(26)が相次いでAKB48から移籍し、劇的に成長していきます。13年秋に2枚目のシングル「メロンジュース」が発売されたころから、加速度的に人気や注目が高まり、14年末にはNHK紅白歌合戦に初出場します。

森保さん自身も14年6月のAKB48グループ選抜総選挙で25位と前年の圏外(65位以下)から躍進。選抜メンバーの次のカテゴリーの「アンダーガールズ」入りを果たします。長崎市観光大使にも任命され、「希望的リフレイン」で初めてAKB48本体の選抜メンバーにも選ばれました。

長崎市観光大使に任命されたことを伝える朝日新聞の紙面(長崎版)
長崎市観光大使に任命されたことを伝える朝日新聞の紙面(長崎版)

ですが、自身は「順位や結果に自分のネームバリューが追いついていないことにすごい違和感を感じていました」。何よりテレビ出演、握手会、コンサート、福岡でパーソナリティーを務めるラジオ番組など仕事が急激に増えて、福岡から日帰りで東京、そして長崎などと頻繁に往来するように。

「『自分がいまどこにいるのか分からない』という状態が本当にあると知りました。気持ちが追いついていかない。精神的にも体力的にもつらくて、続けるかどうか迷った」。でも、もう一息がんばってみようと思い直したそうです。

2014年7月、福岡県の海の中道で行われた野外ライブ 大雨がやんで開催できた
2014年7月、福岡県の海の中道で行われた野外ライブ 大雨がやんで開催できた

「レスが下手」と言われて

今でこそ、「ファンを大切にする」とほかのメンバーからも言われる森保さんですが、多忙を極めていた当時、ファンとの関係づくりに悩みました。

14年秋、森保さんが出演した劇場公演後、記者(筆者)はファンからこんな声を聞き、意外に思ったのを覚えています。「森保さんは声援を送ってもレス(手を振ったり、笑顔を返したりすること)がない」「たった1回の笑顔でオタクは幸せになれるのに、ファンへの感謝の気持ちが見えない……」。

森保さん自身も握手会で「レスが下手」と何度も言われたそうです。「当初からのファンがどんどん離れている。まずいよ」と忠告してくれるファンもいましたが、「私が鈍感だと思うんですけど、実感はなくて……」。

2014年11月、3周年記念公演に出演する森保さん(右から2番目)
2014年11月、3周年記念公演に出演する森保さん(右から2番目)

翌年の選抜総選挙、森保さんは43位でした。ファン離れが理由かどうかは分かりません。14年に、前年圏外の悔しさをバネに全力で応援したファンに「選挙疲れ」が起きた。HKT48を応援している「箱推し」票がほかのメンバーに流れた、などさまざまな要因が絡み合っていると思われます。

ですが、16年も票数は前年より増えたものの順位は50位とさらに落ちました。

「レスが下手というのは、(ファンから)よく言われていました。とくにツアーとかで大きな会場の時、私自身どこを見ていいか分からなかったんです。振り付けや立ち位置を覚えることにいっぱいいっぱいで、ステージを楽しむのがすごく苦手でした。それがファンにも伝わっていて、そういう結果になったと思います」

「ステージと客席の意思疎通が図れていないな、と、自分でも思いながらやっていました」

2016年4月、熊本地震から間もない時期、HKT48劇場の入居ビルの建て替えに伴い、西鉄ホールでの公演が始まった
2016年4月、熊本地震から間もない時期、HKT48劇場の入居ビルの建て替えに伴い、西鉄ホールでの公演が始まった

そして17年の選抜総選挙。選挙期間中に発表される速報順位はこれまでで最低の95位でした。熱心に応援を続けているあるファンの元に、以前ファンだった人からも「大丈夫か」と心配する連絡が届くほどでした。

「もう私もファンも真っ青。どうしよう。ピンチだ、と思いました」。普段、積極的に応援を呼びかけるタイプでない森保さんですが連日、ネットの配信サービスで投票を呼びかけます。

「『なりふり構ってられないな』と。私のファンのみなさんっていい意味で普通の方が多いんです。逆にみんなを統率していくことがすごく難しかった。どうやったら一致団結してくれるかなと一生懸命考えました。配信とか握手会で一生懸命お願いし、SNSも更新をがんばる。『釣り』だと言われようがいいと思うことは取り入れ、自分の気持ちや、発すべき言葉を意識して、なりふり構わずやりました」

結果は31位。アンダーガールズに返り咲きます。得票は2万7384票で14年を330票上回り、自己最多でした。

2017年8月、新曲のキャンペーンの一環で朝日新聞大阪本社を訪問した森保さんらメンバー
2017年8月、新曲のキャンペーンの一環で朝日新聞大阪本社を訪問した森保さんらメンバー

総選挙について森保さんは「浮き沈みはあったけど、最終的に、最後が最高票数で終われたから良かった。結果オーライだととらえています」

そして、この年を最後に選抜総選挙に立候補することはありませんでした。自分なりに「完結した」と思ったこと。そして、20歳になり、卒業が頭の中にもたげるようになったためだと言います。

その理由は、14年ごろとは違いました。

【後編】「いい時期にアイドルやめたい」HKT森保さん語る卒業への思いと葛藤
2018年2月、春のアリーナツアー初日神戸公演。10年を振り返って20歳の時が一番よかったと森保さんは語る
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