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やっと行けた心療内科 学校エッセイで人気、usaoさんが退職するまで
SOSを出すのが難しかった理由は……

親しみやすいうさぎのキャラクターで漫画を発表してきたusaoさん。小学校の教員として「子どもの役に立ちたい」と熱意を持って働いていましたが、コロナ禍の中でうつ病に苦しみました。この春、退職を選びましたが、周囲にSOSを出すのはなかなか難しかったそうです。そんなusaoさんが、生きづらさを抱えている人たちに伝えたいことは?SNSで発信を続ける理由は――? 今の思いを聞きました。
「自分だけじゃ何もできない」無力感
コロナでいつも通りに過ごせないことが増えました。また、さまざまなことが重なって、「自分だけじゃ何もできない」という無力感をおぼえました。
それでも子どものために頑張ろうとしていました。ですがだんだんとアンパンマンが自分の顔を食べさせるかのように、わたしも自分の体を削って働いているような感覚になっていて、ついに昨年11月ごろ、急に電源が落ちました。
お知らせ pic.twitter.com/Z64DKZV0o8
— usao (@_usa_ooo) April 1, 2021
「何か超えてしまう」気がして怖かったですね。「自分は弱いんだな」「くじけているから行くんだ」と思ってしまって許せなくて……。
心療内科で淡々と自分の体験や思いを話しているとき、涙が止まらなくって「もうダメなんだな」と思いました。
先生からは休職を勧められましたが、自分の中でまだ「頑張りたい」「最後まで子どもの前に立ちたい」という思いがあって、その後心療内科へ通うのをやめました。
心のコップの話
— usao (@_usa_ooo) March 7, 2021
文のつながりが
ぐちゃぐちゃですが💦 pic.twitter.com/34WGulEtXF
からだとこころが離れている
ある日、ふと気づくと動けなくなってしまったんです。
買い物ができなくなったり、物の名前が頭からどんどん落ちていくような感じで思い出せなくなったり。「電源が切れちゃった」という状態でした。
もう頑張れない自分を自分で知ってしまって。「休まないと危ないな」と思い、休職することにしましたが、それでも「投げ出した。まわりに迷惑をかける」と自分を責めていました。
自分には何もなかったんじゃないか
それまでバリバリ働いていたことを急に手放したら「自分には何もなかったんじゃないか」と感じたんです。
休職した自分の代わりに誰かが入ってくれていること、子どもは毎日頑張っていること……自分だけが外野にいて座り込んでいる気持ちになりました。誰も自分を責めていないのに、誰からか責められている感じがしました。
しかも、首に痛みが出て、1週間ほぼ動けず寝たきりになって、自分を表現する絵さえ描けなかった。私は何をしたらいいんだろう……という思いも重なって、本当に苦しかったです。
SOSのつもりが「頑張れ」と言われて…
SOSを出せる人はいっぱいいました。でも、大切な人だから一緒に背負ってほしくなかったという思いがありました。弱い自分を見せたくない、話しても変わらない、いやな気持ちを広げたくないとも思いました。
ヘルプのつもりで言ったのに「頑張れ」「大丈夫だよ!」と言われちゃうこともあって。お互い「優しさ」からなんですが、「頑張った方がいいのかな」と思っちゃう。それが聞きたくなくて相談しなくなりました。
同僚や両親に話すと「必要だから戻ってきてほしい」「教員という仕事は続けてほしい」と言われたんです。その期待に応えようとしてしまう。正直、誰の為に教師をしているのかわからなくなって、一度離れないといけないなと思いました。
「待っている人がいるのがつらい」「誰かにブレーキを踏んでもらわないと自分では辞められない」という気持ちの中で、夫が「辞めていいんだよ。」と言ってくれて、色んな方に申し訳ないですが、辞めました。
コロナ下、マスクで表情が見えない
120%子どものせいではありません。
「自分と出会った人は幸せにしたい」という気持ちが原動力になって、子どもと出会ったからには、「その子の役に立ちたい」「誰にも言えない言葉を届けてあげたい」と思っていました。
辞めてみて分かったんですが、学校の外からは頑張っている先生たちの努力も、子ども達の姿も、学校現場で何が起きているのかもなかなか見えません。その叫びすら届いていません。
誰にも見せないままの心の傷を、みんな抱えているんだと思います。
モヤモヤした私は捨て、
— usao (@_usa_ooo) April 19, 2021
新しい自分になります。#なんでもない絵日記 pic.twitter.com/62ZTh0nmdf
それはとても大きかったです。マスクで表情が見えず、子どもも先生も心が見えない状態で、子どもに「愛が渡せない」と感じていました。
表情の8割がなくなっていて、目だけだと気持ちを隠せちゃうから、心配したり、疑ったりしてしまうこともあって。難しかったです。
この道だから今歩いていける
「もしかしたら他の方法があったかも」と悩んでしまうので、まだ「これでよかった」とは思えていませんね。
「先生の自分」も好きだったし、現場が輝いて見えるので、そこにいられないのが悔しい気持ちもあります。
けれど、この道だからこそ、今歩いていけているんだなという感じです。
はたらくこと、いきること(1/4)#なんでもない絵日記
— usao (@_usa_ooo) April 9, 2021
続きます pic.twitter.com/2A4nrof8y2
「人間の私」に戻ってきた
一度、「教員」という自分を忘れたことです。
ゆっくり起きて、「早起きは低血圧でつらかったな」「ゆっくりした時間の方が自分に合ってるな」と振り返っています。
自分のからだと心に合う時間になじんできて、「人間の私」に戻ってきました。
「私もきついです」の反響
「それでも良い」と誰かにいってほしくて発信しているのだと思います。さみしがり屋なんでしょうね。
人を幸せにしたいし、相手の気持ちを分かってあげたい、寄り添ってあげたいと思うけど、誰かに寄り添ってももらいたい。だから試行錯誤して発信しています。
これが愛なのね#なんでもない絵日記 pic.twitter.com/2Gy2L38Y9H
— usao (@_usa_ooo) March 9, 2021
退職やうつをテーマに描いたので、「私もきついです」「どうしたらいいですか。助けてください」「漫画に背中を押されて私も辞めました」という声もあります。
返事はそれぞれですが、私は誰かの人生のハンドルは握れません。「自分がどうするかは、自分で決めてほしい」「発信することで、その決断の支えになれたらうれしいです」と伝えています。
自分で「教育の場」をつくれたら
絵を描いて発信することに救われてきたので、展示会を開いて、これまでメッセージをくれた方に直接会いたいです。少しでも力になりたいし、「ありがとう」って言いたいですね。
そして、いつか教育現場には戻りたいと思っています。「マスクのない世界」になったらすぐにでも、と思うほど。自分に合った教育現場を見つけるか、もしかしたら自分で教育の場をつくるかもしれません。
年齢にかかわらず落ち着いて学べる場所。「わたしは、わたしのままでいいのだ。」と思える場所。
わたしが今日頑張ったことは
— usao (@_usa_ooo) April 26, 2021
仕事に行く前にこれを完成させたこと。
実はこれ、塗りつぶしてぬってるのではなく、
マウスで丁寧にぬりぬりしているのよ…
東京でみなさんと会えることを楽しみに、頑張ります!!!!!!!!!! pic.twitter.com/KFhibV01a9
自分を大切にしてほしい
自分が一番大切にしたいものは何かを考えてほしいです。
私が一番大切にしたいのは「教え子」でした。人って大切な人のためなら頑張れます。ですが、今は自分を大切にすることに切り替えています。
悩み始めると「自分なんていなけりゃいいのに」って考えてしまうこともありますが、あなたも大切な人なんですよ。
私は、「こんな弱さだって素敵でしょ」と漫画を描いて、「それでいいんだよ」と伝えています。
できないこと、つらいことも含めて、自分を大切にしてほしい。大切なものを増やしてほしいですね。
・福岡県福津市立図書館 6月25~7月4日
・東京都杉並区高円寺「BLANK」 8月17日~29日
弱音を吐きだせる場や関係性の大切さ
コミュニケーションがオンラインに偏り、なかなかSOSを出すことが難しい環境でもあります。記者自身も「同じ場所にいたら、顔色のすぐれなさやいつもと違う表情、色んなことに気づけたかもしれない――」と感じることもあります。
「こころの耳」という働く人のための相談窓口などもありますが、生きづらさ・しんどさを感じている人たちがホッと弱音を吐き出せるような場や関係性の大切さを改めて感じたインタビューでした。
「usaoの先生日記」
— usao (@_usa_ooo) March 2, 2021
発売まで、、あと8日!
本に入らなかった原稿を
お披露目します① pic.twitter.com/SghaTm5t8N