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連載

#4 ゴールキーパーは知っている

権田修一も阿部伸行も教え子…11人のプロを育てた伝説のGKコーチ

ブラジルで見た「忘れられない光景」

FC東京の育成部にいたころの浅野コーチ(左)
FC東京の育成部にいたころの浅野コーチ(左)

目次

サッカー日本代表で清水の権田修一(32)をはじめ、11人のプロ選手を育てたゴールキーパー(GK)のコーチがいる。浅野寛文さん、52歳。10年以上にわたってFC東京の育成組織で指導し、一般企業で働きながら今は週に1回、千葉・中央学院でコーチを務める。彼の手にかかれば「本当に同じ子なの?」と言われるその手腕。原点には、20年以上前にブラジルで見た忘れられない光景があった。(朝日新聞スポーツ部記者・照屋健)

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浅野寛文(あさの・ひろふみ)
1968年10月生まれ、千葉県出身。東京ガスなどでプレーし、1999年から2010年までFC東京育成部に。世代別日本代表のGKコーチやナショナルトレセンのコーチを務め、12年から中央学院のコーチに。教え子に阿部伸行(FC東京)、権田修一(清水)、廣永遼太郎(神戸)、来栖由基(元刈谷)、田端信成(元山口)、井上亮太(松江)、守山健二(房総)、谷俊勲(YSCC横浜)、服部一輝(福島)、岡本享也(岐阜)、伊東倖希(宮崎)。(引退選手や元プロ選手も含む)
 

基本練習の繰り返しだけど……

「浅野コーチのもとでやれば、こんなにうまくなれるんだ」

小学6年のとき、FC東京の練習会で指導を受けた権田はこう感じたという。川崎市のさぎぬまSCに所属し、当時は神奈川県選抜。どこにいっても褒められていた少年を、浅野コーチは期待を込めて、あえてほめなかった。

「ただ好きでやっているだけで、基本が全然なっていない」

一緒に練習した中学生のGKは、難しいボールをいとも簡単にキャッチングしていた。「ここにいけば、上手くなる」。権田がFC東京U―15に進んだ一つのきっかけだった。

「1回でボールをつかむ、こぼさない。基本の繰り返し」と浅野コーチはいう。地道な基本練習の繰り返しを説くが、発想はユニークだ。

原点は、社会人の東京ガスの選手だった1998年。入社する前に3カ月間、ブラジルのサンパウロFCに短期留学した。

そこで見た光景が忘れられない。ブラジル人たちは反発力の高い少し小さめのラテックスボールをつかって、リフティングの練習を繰り返していた。

「遊び感覚を大事にしつつ、そういう工夫の仕方があるんだ、と」

当時、日本の育成年代ではまだ、GKコーチという職業が普及していなかった時代。FC東京の練習では、GKだけの練習は30分ほどだった。そのなかで、いかに技術を身につけるのか。「浅野メソッド」が培われた。

浅野コーチ(右前)と権田(後列左から3人目)ら。卒業してからも連絡をとるなど絆は強い
浅野コーチ(右前)と権田(後列左から3人目)ら。卒業してからも連絡をとるなど絆は強い

気づけば11人のプロを育てる

こうした練習を繰り返し、11人ものプロ選手がうまれた。そのなかで、共通点はなにか。

「サッカーが好き、ゴールキーパーが好き、という気持ちじゃないですかね。メンタルの部分は大きい」と浅野コーチはいう。中学時代の権田に忘れられないエピソードがある。

ロンドン五輪のときの権田修一(左)
ロンドン五輪のときの権田修一(左)

「GKを1番人気のポジションに」

中学3年の夏休みにあったクラブユース選手権準々決勝。その試合で、権田は高いボールの処理を2度ミスし、いずれも失点につながった。普通の中学生のGKなら落ち込み、投げ出してもおかしくない場面だ。それに加え、さらに、PK戦では自らが蹴って失敗した。

「このまま負けてしまうのかな」。浅野コーチの思いとは裏腹に、権田はそこからPKを2本止めて、チームを勝利に導いた。ミスをしても引きずらない心、取り返す気持ち。そんな強さを教え子は持っていた。

権田修一選手(右)と浅野寛文コーチ
権田修一選手(右)と浅野寛文コーチ

現在、FC東京の37歳、阿部伸行は高校時代、183センチの長身GKだった。

ただ、高校1年でFC東京の下部組織に入った当初、阿部が練習している姿をみたある神奈川の強豪校のコーチは「あの子、大丈夫なの?」。横っ飛びも十分にできなかった。ただ、「ベースをしっかりさせれば、大丈夫」と粘り強く指導した。

高校3年でプリンスリーグ関東でそのチームと対戦した際に、完封。相手チームを「本当に同じ子なの?」と驚かせた。

「1人1人に、違う良い部分はある」と浅野コーチ。今もプロに進んだ教え子の試合を見ては、気づいたことをLINEで送る。1月2日には自宅に教え子たちが集まり、デンマークの名GKのシュマイケルのビデオを見る。
その熱意はどこからくるのか。

「ゴールキーパーを、1番人気のあるポジションにしたいので」

日本代表にも選ばれた教え子とともに、その夢を追い続けている。

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