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リモートワークは免罪符?”社交ゼロ”髭男爵山田ルイ53世を襲った悲劇

「おじさんってげいにんのひと?」

芸能界に属していない状態という髭男爵・山田ルイ53世さん。リモートワークで人付き合いが減ったことを歓迎していたが、思わぬ落とし穴が……=本人提供
芸能界に属していない状態という髭男爵・山田ルイ53世さん。リモートワークで人付き合いが減ったことを歓迎していたが、思わぬ落とし穴が……=本人提供

目次

少し前のこと。
スケジュールでも確認しようかと手帳を眺めていた筆者。
はたと思い出し、
「明後日の新幹線のチケットって、まだ貰ってませんよね?」
と確認のメールをマネージャー氏に送る。
間近に迫った大阪でのテレビ収録へ向かうための切符が手元に無い、もしや紛失したのではと慌てたからだが、ほどなくして届いたのは、
「いや、だからそれ‶リモート〟です。東京からやるヤツです!」
という何とも素っ気ない返事。
言外に滲ませた、
(ちゃんと、お伝えしましたよね?)
との苛立ちにバツが悪くなり、
「……お手数ですm(__)m」
と即座に詫びを入れスマホを置いた。
……昨年来、幾度となく繰り返されたお馴染みのやり取りである。(髭男爵・山田ルイ53世)

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リモートがくれた「社交的でなくとも良いんだよ」

このコロナ禍中、各方面で推奨されている‶リモートワーク〟。
筆者もご多分に漏れずで、軽い打ち合わせや取材は自宅から、生放送のテレビ番組といった機材やスタッフのサポートが必須の案件は、局に用意された個室からと、まあ、それなりにこなしている。
ちなみに、この手の現場では、タイムラグが付き物。
‶いっこく堂〟……とまでは言わぬが、声が遅れ会話が鉢合わせになったり、妙な間が空いたりと、‶餅つき〟であれば手の甲を砕かれかねぬ緊迫感に、
「リモートってムズい……」
とボヤく声も少なくない。
しかし、筆者などはむしろ歓迎派。
いや、「それをモノともせぬテクニックがある!」と胸を張るつもりは毛頭ない。

当方、社交に疎く、人付き合いがゼロ。
‶芸能界の交遊録〟などとは無縁で、いつも‶蚊帳の外〟……いや、自分1人だけ‶蚊帳の中〟のような日々である。
そんな人間にとって、楽屋挨拶やメイクルームで隣に座った芸能人との雑談、仕事を終えた後の、
「……ちょっと行きます?」
といった呑みの誘い等々、‶社交のあれこれ〟が大幅に削減されることは朗報以外の何ものでもなかったのだ。
言ってみれば、‶免罪符〟……‶ソーシャルディスタンス〟を始めとするコロナ禍のルールが、‶社交的でなくとも良いんだよ〟と赦しを与えてくれた格好である。

小さな子供の扱いは心得ている

我ながらつくづく厄介なこの性分。
‶人見知り〟の一言で済ませるのは、大阪城を‶一軒家〟と説明するようなもの……控え目にも程がある。
更に厄介なのが、対象は大人に限らぬということ。
即ち、子供……正確には‶よそ様の子〟だが、これまた苦手で、よそ様の子の最高峰たる‶子役〟となるともう鬼門と言っても良い。
その割に、昔‶戦隊モノ〟のドラマで仰せつかった博士役には息子がいたし、『天てれ』や『こどもちゃれんじ』等々、何かと縁があるので悩ましい、もとい、有難い。
断っておくが、決して子供嫌いというわけではない。
腐っても2児の父。小さな子の扱いは心得たものである。
撮影の合間の休憩中、
「トーーー!!」
と膝の上に飛び乗ってきたやんちゃ坊主を、
「コラー!」
と笑顔で追っかけ回し、
「ねーねー、これ知ってる?」
とおしゃまな女の子にせがまれ、TikTokか何かのダンスを一緒に踊るくらい造作もないが、心の内では、
(しんどいなー……)
とヘトヘト。
彼ら彼女らの‶人懐っこさ〟を受け止めるには、それ相応の体力と気力が不可欠なのだ。
……とまあ、苦手の理由は色々あるが、一番はやはり、「子供は、急に気まずい発言をする」ということだろうか。
つい2ケ月ほど前もそうだった。

その日、
「少々お待ちくださ―い!」
というADの声を、筆者はベッドの上で寝そべったまま聞いていた。
場所は都内のハウススタジオの一室。
スタッフはカメラや照明のセッティングに大忙しなのに、である。
もはや‶大御所〟のごとき振る舞いに、
(偉そうに……)
と眉をひそめる向きもあろうが、少々お待ち頂きたい。
この日の仕事は、ドラマ出演。
生意気だが、あくまで芝居のスタンバイ……‶かたち〟を作っていただけである。
加えて、ドラマと見栄を張ってみたが、実際はバラエティー番組内で流れるちょっとしたVTR。
にもかかわらず、
(……これはチャンスだ!)
と気合十分だったのには、わけがあった。

かろうじて自尊心を保った

長女(現在小3)が幼稚園生の頃。絵本の読み聞かせをしている最中、不覚にもウトウトしてしまったようで、
(……ん?)
ふと気付けば娘がこちらを‶ジーッと〟見ている。
その手には筆者の眼鏡。
(さっきまで掛けてたのに!)
と動転し、
「こら、もーちゃん(長女の愛称)!」
と取り返そうとしたが、
「ほらー! メガネとったらひげだんしゃくじゃーん!?」
……ニヤつく我が子に背筋が凍った。
筆者は自分の職業を娘に隠している。
別に‶一発屋〟を恥じてなどいないが、「負け」や「失敗」といった苦み成分を含んだこの言葉を、人生始まったばかりの小さな子供に触れさせたくない、その一心だった。

……以上、拙著『パパが貴族』の一節だが、これを映像化して頂けるとのオファーに、
(これって、もう‶原作者〟ってヤツでは!?)
と浮かれていたのである。

話を戻そう。
慣れぬ役者の真似事で、緊張を隠し切れぬ中年芸人に比して、‶もーちゃん〟を演じてくれる子役の少女は、筆者の腕にチョコンと頭を載せ、つぶらな瞳でこちらを見詰めている。
いや、実に落ち着いたもの。
さすがプロだ、立派なもんだと感心していたそのとき、
「ねー?おじさんって、げいにんのひとなの?」
……彼女の無垢な質問がそこら中へ響き渡った。
続いて、スタッフのクスクスと押し殺したような笑い声。
喜ぶべきか否か。
どうやら、この偽の長女は父の秘密をまだ……いや、ハナから知らぬようである。
「じゃあ、何の人だと思ってたの!?」
と間を置かず放った筆者の一言で、現場は大爆笑。
かろうじて、芸人としての自尊心は保つことが出来た。
これがリモートだったら……タイムラグでツッコミは遅きに失し、もっと気まずい思いをしただろう。

たまには、顔を合わせるのも悪くない。

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