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エンタメ

バラエティー番組の壮絶な競争、まるで「お笑い賞レース」状態に

サイクル重視、テレ朝の「バラバラ大作戦」

バラエティー番組を活性化させた「第七世代」の代表、霜降り明星の2人=2018年2月25日、大阪市中央区
バラエティー番組を活性化させた「第七世代」の代表、霜降り明星の2人=2018年2月25日、大阪市中央区
出典: 朝日新聞

目次

今春、若手芸人の番組がドッと増えた。とくにテレビ朝日の「バラバラ大作戦」では、若手だけでも5番組が新たにスタートを切った。日本テレビ、フジテレビ、TBS、テレビ東京も負けてはいない。面白いのは各キー局がそれぞれの持ち味で若手を起用していることだ。一体バラエティー界に何が起きているのか。(ライター・鈴木旭)

「第七世代」がバラエティーを活性化

2018年12月22日深夜に放送されたラジオ番組『霜降り明星のだましうち!』(ABCラジオ)の中で、霜降り明星・せいやが同世代である20代の表現者を「第七世代」と称してファンの間で話題となった。これがメディアで取り上げられ、お笑い界に新陳代謝が起こり始める。

2019年4月には霜降り明星の冠番組『霜降りバラエティー』(テレビ朝日系)がスタートし、年末には単発ながら『EXI怒』(前同)、『宮下草薙のポジティブ学』(フジテレビ系)といった番組が放送され、ミキ・亜生がドラマ『モトカレマニア』(前同)に出演するなど、「第七世代」の主要メンバーが活躍している。

2020年になると、「第七」を冠した『第7キングダム』『お笑いG7サミット』(ともに日本テレビ系)が放送され、若手芸人はバラエティーやドラマに引っ張りだこになった。このあたりで「第七世代」は完全に定着したものの、サイクルの早い現代にあって「旬を過ぎた」という声もささやかれ始めた。

そんな空気を察してのことか、2020年10月にテレビ朝日が動きを見せた。深夜帯のバラエティー放送枠「バラバラ大作戦」をスタートさせたのだ。

「バラバラ大作戦」で攻めるテレ朝

「バラバラ大作戦」は、動画配信の時代に対応した番組づくりを軸として、午前2時~3時の1時間を20分刻みで3つの枠(金曜のみ2つ)に分けて月曜~金曜まで放送している。さまぁ~ず、くりぃむしちゅーといったベテランを含みつつ、若手や中堅の芸人、アイドル、プロレスラーが番組を担当するなど出演者のジャンルも幅広い。

スタート当初、若手芸人では『イグナッツ!!』(EXIT、Creepy Nuts)、『歌カツ! ~歌うま中高生応援プロジェクト~』(霜降り明星・粗品)、『あるある土佐カンパニー』(土佐兄弟)の3番組しかなかった。しかし、2021年3月末から一部番組再編があり、新たに6番組がスタートしている。

若手に絞っても、『ぼる塾の煩悩ごはん』(ぼる塾)、『トゲアリトゲナシトゲトゲ』(3時のヒロイン・福田麻貴、Aマッソ・加納、ラランド・サーヤ)、『NEWニューヨーク』(ニューヨーク)、『キョコロヒー』(ヒコロヒー、日向坂46・齊藤京子)、『そんな食べ方あったのか!』(ミキ・亜生、フワちゃん)の5番組が増えたことになる。とくに女性芸人の起用が増えたのが印象的だ。

そのほか、2020年にゾフィー、ハナコ、かが屋、ザ・マミィによるコント番組『お助け!コントット』『東京 BABYBOYS9』を制作し、出演メンバーでライブを成功させるなど広がりも見せている。私も昨年10月に行われたライブを見たが、やはり劇場は臨場感があった。ぜひコント番組から劇場へとつなげる流れは継続してほしいものだ。


バラエティーの推進力高める日テレ

一方の日本テレビは、早くから若手芸人を起用している。2015年から深夜帯を中心とした不定期の番組『有吉の壁』をスタートさせ、2020年4月からはゴールデン帯でのレギュラー放送を実現させた。ここで若手を含む大勢の芸人たちが注目を浴びている。

先述の『第7キングダム』『お笑いG7サミット』といった若手中心の番組を早くから手掛けた局であり、『ウチのガヤがすみません』『有吉ゼミ』『THE突破ファイル』といった番組で若手を起用し、新たなスターを発掘しようという姿勢も垣間見える。

また、今年3月25日からの1週間、「真夜中のお笑いたち」と題して旬な芸人を中心とした4つのお笑い特番を放送している。具体的には、オリジナル漫才を披露する「黄色いサンパチ」、2夜連続のコント番組「コントミチ」(第1夜「笑う心臓」、第2夜「ヤバいハートマーク」)、ロケを中心とした「ハネノバス」だ。総勢20名以上の芸人たちが出演する意欲的なプロジェクトとなった。

高いアンテナを持つイメージも強い。今年1月~4月に放送されたドラマ『でっけぇ風呂場で待ってます』では、脚本にシソンヌ・じろう、空気階段・水川かたまり、ハナコ・秋山寛貴、かが屋・賀屋壮也を起用。実力と話題性を兼ねた番組づくりも巧みだ。日本テレビは、もっとも推進力の高い放送局と言えるだろう。

息を吹き返したフジテレビ

8年周期で次世代のスターを発掘しようと企画された『新しい波』をはじめ、かねてより若手芸人にスポットを当ててきたフジテレビ。しかし、2008年に放送された『新しい波16』あたりから不調が続いていた。

同番組の選抜メンバーでスタートした『ふくらむスクラム!!』は半年ほどで終了し、AKB48時代の前田敦子やモデルの小森純を加えた後続番組『1ばんスクラム!!』を含めても約1年で打ち切りとなっている。また、2010年10月から始まった『ピカルの定理』は、深夜帯で人気を獲得したものの2013年にゴールデン帯に進出して間もなく終了した。共通するのは、現在大活躍中の千鳥やかまいたちが出演していたことだ。

若手時代の力量不足もあったかもしれないが、『ピカルの定理』について言えば少なくとも2年以上は深夜帯で支持されている。この点は、番組側の采配と言わざるを得ない。

そんなフジテレビが、ここ最近で息を吹き返してきた。2019年8月、12月、2020年3月には、アイドルグループ・Snow Manとともに四千頭身、さや香、さすらいラビー、宮下草薙らが出演する特番『7G〜SEVENTH GENERATION〜』を放送。また2020年12月、3週に渡って放送された『Do8』は、3時のヒロイン、ぺこぱ、四千頭身がメインとするコントやトークで好評を博し、今年3月に初めて全国放送されている。

テレビで「第七世代」というキャッチフレーズをいち早く使用したのは、同局の『ネタパレ』だったはずだ。バラエティーをけん引し続けたプライドを捨て、自社発信ではないブームをフジテレビらしい特番やネタ番組でうまく取り込んでいった印象がある。

2021年4月23日からは、いよいよチョコレートプラネット、霜降り明星、ハナコが出演するコント番組『新しいカギ』がスタートする。コント番組がゴールデン帯でレギュラー放送されるのは何年ぶりだろうか。願わくば『はねるのトびら』のように、いつの間にかコントからゲーム企画へと内容が移らないことを祈るばかりだ。

若手のフレッシュさ落とし込むTBS

TBS系列の人気番組『霜降りミキXIT』は、2020年6月にスタートした。昨年から現在まで、複数の若手芸人によるレギュラー番組はこれが唯一だったのではないだろうか。

支持されたのは、同じ吉本興業に所属しながらも、毛色のまったく違う3組(霜降り明星、ミキ、EXIT)を選んだことに尽きると思う。とくにチャラ男キャラで知られるEXITによって、“お笑い”にしばられない雰囲気が生まれている。見ていて非常にバランスがいいのだ。

TBSは、トーク力を持つ若手にスポットを当てる印象が強い。2021年3月から始まった情報バラエティー『ラヴィット!』は、番組の特性上それが顕著に現れた。月曜にぼる塾、木曜にニューヨークがレギュラーを務め、隔週でミキ、宮下草薙、EXIT、東京ホテイソンが出演している。いずれも漫才を得意とするコンビやトリオだ。

また4月からは霜降り明星、西川貴教がMCを務める音感バラエティー番組『オトラクション』が始まっている。若手のフレッシュなイメージをそのまま番組に落とし込むのがTBSの特徴と言えるだろう。


独自路線で異彩放つテレビ東京

これまで独自路線でバラエティーをつくってきたのがテレビ東京だ。『ゴッドタン』『あちこちオードリー〜春日の店あいてますよ?〜』など、人気番組を手掛ける演出家・プロデューサーの佐久間宣行氏(現在はフリーとして活動)による影響が大きいだろう。

しかし、佐久間氏が担当したもの以外にも、若手にスポットを当てた番組はある。ウッチャンナンチャン・内村光良がMCを務める『そろそろ にちようチャップリン』と『内村のツボる動画』だ。

『にちようチャップリン』は2017年4月から微妙にタイトルを変えて毎週放送されているネタ番組だ。番組独自のくくりを設け、勢いのある若手芸人を早くから取り上げている印象が強い。また、2020年4月から月1回のレギュラー放送となった『ツボる動画』では、ニューヨーク、東京ホテイソン・たける、丸山礼といった若手が挑戦企画でVTR出演している。

一方で、今年3月にマヂカルラブリーの冠番組『マヂカルクリエイターズ』(関東ローカル)がスタートした。「新しい野田ゲー(野田クリスタルのゲーム)のアイデアをZAZYらがプレゼン」「怖い話が苦手な人でも楽しめる“蕎麦湯怪談”」「擬人化アイドルをプロデュース」といった実にマヂカルラブリーらしい企画が毎度放送されている。こうした持ち味はテレビ東京独自のもので、ほかのキー局では想像しにくい。今後に期待したいところだ。


テレビマンの力が試される壮絶なレース

2020年中盤までは「第七世代」を意識した番組が多かったが、後半から今年にかけて中堅に差し掛かったかまいたちやチョコレートプラネット、マヂカルラブリーの活躍も目立つ。若手だけでなく錦鯉をはじめとする“おじさん芸人”の人気も高く、各局のバラエティーが盛況のようだ。

それぞれの色合いが違っている点も面白い。とくにテレビ朝日の「バラバラ大作戦」はサイクルが早く、好評なら時間帯を昇格し、支持を得られなければ打ち切りになっている。どの番組も低予算でスタートし、厳しい状況の中で勝ち上がるスタンスだ。

このやり方がすべてとは言えないが、現在のバラエティーはお笑いの賞レースに近いものがある。チャンスは平等に与えられ、アイデアをひねり出して視聴率を獲得すれば番組制作の予算も上がっていく。まさに若いテレビマンの力が試される壮絶なレースが始まったと言える。

動画への対応も求められる中で、新たな人気番組は誕生するだろうか。今後も注目していきたい。

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