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IT・科学

無保険ボランティアのジレンマ、災害大国に必要な支援のアップデート

NPOやSNSマッチング…新たなスタイルへの対応は?

被災した住宅の後片付けをするボランティアたち=2020年10月4日午前、熊本県芦北町、藤脇正真撮影 ※写真と記事は直接関係ありません
被災した住宅の後片付けをするボランティアたち=2020年10月4日午前、熊本県芦北町、藤脇正真撮影 ※写真と記事は直接関係ありません

目次

災害が起きると、行政だけでなく、個人やNPOなど多数のボランティアも被災地に入り、様々な支援が行われます。SNSを使ったボランティアマッチングなども増えており、新しい時代の支援も広がりつつあります。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大などから、災害支援がうまく行えないケースも増えています。保険の未整備など、熱意を持った個人やNPOの取り組みが守られていない実態も明らかになっています。ボランティアのアップデートに必要な論点について考えます。(FUKKO DESIGN 木村充慶)

阪神淡路大震災から注目された「ボランティア」

災害が起きた後に、よくニュースでも取り上げられる「ボランティア」。知らない人は少ないと思いますが、実は「ボランティア」の意味をよくわかっていない人も多いと思います。

そもそも災害の時にボランティアが活躍することが一般的になったのは、阪神淡路大震災と言われています。

それまでには経験したことがない大規模な被害で、被災した地域だけでは助けが足りず、地域外から多数の個人、地域団体、民間企業などが支援に来ました。

現地で救助活動をしたり、物資を運んだり、がれきの撤去をしたり、被災した人たちをケアしたり、様々な活動が行われました。

当時、約137万人もの方が現地に行ったようですが、その人たちが「ボランティア」と言われるようになりました。

その後も、様々な災害があり、その度にボランティアが活躍しましたが、再び注目されたのは東日本大震災でした。

いままでにない規模の大津波により、岩手、宮城、福島の沿岸部を中心に広域で被害が発生し、各地でボランティアが活躍しました。

東日本大震災では約150万人ものボランティアが参加したといい、現在に至るまで様々なボランティア活動が行われています。

スープの大鍋の前に並ぶ被災者たち=1995年2月28日、兵庫県神戸市灘区の避難所
スープの大鍋の前に並ぶ被災者たち=1995年2月28日、兵庫県神戸市灘区の避難所
出典: 朝日新聞

見逃せないNPOの活躍

このように、様々な災害を経て認識されたボランティアですが、ボランティアは個人だけではありません。NPOなどもボランティアに当たります。

東日本大震災では、個人のボランティアだけでなく、NPOなどのボランティア団体も広く活躍して注目されました。

そもそも、NPOとは1998年に成立したNPO法によって生まれた団体です。

公益性が高く非営利で行われている団体をNPOとして法人格を与えるというものです。阪神淡路大震災をきっかけにして生まれ、成立後、多数のNPOが立ち上がり、様々な災害で活躍してきました。

そして、東日本大震災では広域の被害で、行政機能がまひした自治体も多く、NPOなどが各地に入って中心的な活動をしていきました。

個人だけでなく、NPOなどのボランティア団体も被災地の支援活動を積極的に行い、それらを合わせてボランティアとして表現されるようになりました。

ボランティアセンターの入り口近くに張り出された活動中止のお知らせ=2020年7月11日午前8時29分、熊本県人吉市蟹作町、神野勇人撮影
ボランティアセンターの入り口近くに張り出された活動中止のお知らせ=2020年7月11日午前8時29分、熊本県人吉市蟹作町、神野勇人撮影 出典: 朝日新聞

実はバラバラ「災害ボランティアセンター」

災害が起きて、被災地でボランティアをしたいと思った時に向かうのが「災害ボランティアセンター」です。被災地の市町村ごとに設置されていることが多く、そこに行って受付をすると、ボランティア活動が行えます。

災害ボランティアセンターは事前に被災された方からの要望を聞き、現場を見ながら、どのようなボランティアが必要かチェックしています。その上で、災害ボランティアセンターに来たボランティアを、支援現場に連れていく、というマッチングとコーディネートなどを行います。このような災害ボランティア活動の多くは、この災害ボランティアセンターがおこなっているものになります。

この災害ボランティアセンターは公的な組織と思われますが、実態としては、各地域の社会福祉協議会が運営していることがほとんどです。ただし、自治体やNPOなどのボランティア団体が運営していることもあり、その体制は自治体ごとにバラバラと言われています。

その理由の一つは、ボランティア活動があいまいなことです。

災害の支援は被災地の状況に合わせて、様々な活動をしなければいけないため、あらかじめ決められた業務をするのが基本の行政では対応しづらくなります。

そのため、民間の団体でありながら、行政と同じく各地自体すべてに設置されている社会福祉協議会が運営することが多くなったと言われています。

ただし、社会福祉協議会は、必ずしも災害対応が主要な業務ではないため、全員が災害対応に精通している職員ではありません。災害が起きた時に、うまく対応できない場合があり、NPOなどボランティア団体も運営に携わることが多いのが実態となっています。

NPO法人TEDICが取り組む「子ども食堂」で、カレーを受け取る子ども。地域の人も集まり大にぎわいだった=2015年11月2日、宮城県石巻市
NPO法人TEDICが取り組む「子ども食堂」で、カレーを受け取る子ども。地域の人も集まり大にぎわいだった=2015年11月2日、宮城県石巻市 出典: 朝日新聞

SNSマッチングでボランティア

災害ボランティアセンターでは、様々な場所から来る個人のボランティアが中心のため、どのようなスキルを持っているか把握できないこともあり、危険な活動は対象外であることがほとんどです。

そこで、危険な作業を伴う活動は災害ボランティアセンターを通さないで活動するNPOなどボランティア団体が担うことが多くなります。NPOなどには重機を使ったり、高所に登ったり、様々な専門的なスキルを持つスタッフが多く、そのスタッフが現場で対応します。

一昨年の台風15号では千葉を中心に瓦が飛ぶなど、屋根の被害が多数発生しましたが、その対応などもNPOなどが中心となって行いました。

ただし、それでも、最近のように災害が多発して、災害ボランティアセンターがすぐに機能しなかったり、NPOなどが来なかったりして、支援が思うようにいかない場合もあります。

そこで、注目されているのが、SNSやマッチングサービスを使って募集されるボランティアです。

被災した人や、支援する人が、ボランティアセンターを通さず、直接SNSやボランティアマッチングサービスに投稿して、ボランティアを募集します。

最近の災害では「被害のあった家の片付けを手伝ってほしい」「1人で暮らす老人の世話をしてほしい」といった災害ボランティアセンターの活動を補完するものから、「畑のがれき撤去を手伝ってほしい」「馬の牧場に散乱する倒木の片付けを手伝ってほしい」といった災害ボランティアセンターでは対応できない、農地や商業地での支援まで、色々な活動が募集されており、実際に数多くのボランティアが参加して、注目されています。

馬が好きな人向けに募集されたボランティアに参加、倒木などの片付けをした後、乗馬をさせてもらう筆者
馬が好きな人向けに募集されたボランティアに参加、倒木などの片付けをした後、乗馬をさせてもらう筆者

自治体が把握できない災害支援の状況

少しずつ整備されてきた日本のボランティアですが、課題もあります。

災害ボランティアセンターに関しては自治体も運営に関わったり、情報共有がされていることがほとんどですが、災害ボランティアセンターを通さずに行うNPOなどの活動は自治体が把握しにくく、どのような被害があり、どのような支援をしているかがわからないままのケースも多いといいます。

元内閣府防災官房審議官の佐々木晶二氏によると、「災害対応は本来自治体の首長である市町村長の仕事だが、現場で対応すべき自治体の災害担当職員が少ない。そのため、災害ボランティアセンター以外の被害や支援状況が把握できていない自治体が多い」と指摘します。

そのため、NPOの中間支援団体などが中心となって、自治体との橋渡しをするなど、現地で支援をおこなっているケースもあります。

とはいえ、災害ボランティアセンター、自治体との連携は不可欠のため、最近では、NPOなどボランティア団体、社会福祉協議会、自治体などが集まった情報共有会議を作っているところが増えています。

同じく問題となるのが、ボランティアの保険です。

被災地は土砂やがれきなどがあるなど、劣悪な環境の場合が多くなります。がれきを片付ける時にけがをすることも多いですし、下水などが止まって衛生環境が悪くなり、感染症などの危険性も高くなります。

災害ボランティアセンターの活動については、運営する社会福祉協議会が用意するボランティア活動保険があり、保険の対象になります。

しかし、災害ボランティアセンターを通さないNPOが募集する活動や、SNSやボランティアマッチングサービスなどを経由してきたボランティアの活動を対象とする保険は実質的にありません。

つまり、災害ボランティアセンターを経由しない活動でいうと、NPOの職員については労災などの対象になりますが、無償でボランティアをする人は実質的に「無保険で活動するしかない」ということになります。

とはいえ、困っている人を見逃せないという気持ちで、災害ボランティアセンターを経由しないでボランティア活動をしている人は数多くいるのが実態です。

全国災害ボランティア支援団体ネットワーク事務局長の明城徹也さんによると、「熊本の地震では災害ボランティアセンターを経由して活動を行なったボランティアは のべ12万516 人いたと言われている。一方でNPOなどの活動を行なったボランティアスタッフを調査したら、のべ10万9271 人という結果が出ており、災害ボランティアセンターを経由したボランティア数に匹敵している可能性がある。

また、家族や友人などが行うような個人のボランティアも把握できていないが、相当な数がいるのではないか」と語ります。

そういった多くのボランティアがリスクの高い環境にいるという状況が生まれています。

ボランティア保険を開発してみた

私が参加する「FUKKO DESIGN」では、ボランティアマッチングのWebサービス「スケット」を運営しています。「スケット」に参加したボランティアでも無保険の状態で活動しているケースも見られ、課題となっていました。

そこで、スケットはもちろん、他のマッチングサービス、さらにはNPOなどで募集される無償のボランティア活動を対象とした、ボランティア保険「しえんのおまもり」を作りました。

元官僚、NPO職員、Web会社プロデューサー、デザイナー、そして、私という今まで保険を作ったことないメンバーが中心でしたが、保険会社の力も借りて、1年半かかり、ようやく完成しました。

関係する行政や社会福祉協議会などのメンバーとも調整の上、しっかりと被災地の支援に対応する形になっています。

特に、高所での作業や、チェーンソーを使った作業など、災害ボランティアセンターを経由した活動では行いにくいものの、現場で必要とされる作業についても、この保険では対応できるようにしました。

ボランティアのときの保険「しえんのおまもり」
ボランティアのときの保険「しえんのおまもり」
出典:https://s-omamori.jp/

だれもが被災者になるからこそ

近年、政府からも「自助、公助、共助」という発言がよく出されますが、共助はこれからの時代とても大事なものになってきます。

日本は阪神淡路大震災の際に、多くの人が助け合って困難を乗り切りましたし、なにより日本は昔から地域での助け合いが多かった国と言われています。

災害があらゆるところで発生する今、だれもが災害の被害者、支援者になる可能性があります。

だからこそ、行政はもちろん、個人や団体、民間企業、みなでしっかりと支援できるよう、「ボランティア」がもっと活躍できる仕組みをつくる必要があると考えます。

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