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コラム

「メンズメイクをしてみたいんですけど…」阪急メンズで開かれた扉

美肌フィルターとは違う…目からウロコ

メンズメイクの第一歩となった有楽町の阪急メンズ
メンズメイクの第一歩となった有楽町の阪急メンズ

目次

新型コロナウイルスにより「おうち時間」が増える中、関心が高まっているのが「メンズメイク」です。SNSやオンライン会議などの浸透で〝見た目〟を意識する機会が広がり、Kポップアイドルやメイク術を発信するYouTuberらの影響もあって「恥ずかしい」というハードルが低くなっています。かくいう私(27)もその一人。「メンズメイクをしてみたいんですけど……」。デパートの売り場で、おそるおそる店員さんに声をかけた瞬間、新しい世界が開けました。社会人になって初めて「メンズメイク」を経験した記者の気づきをお届けします。(朝日新聞記者・大野択生)

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こんにちは、大野択生と申します

私は、2016年入社の27歳で、いまは文化くらし報道部で美術・アート業界の取材を担当しています。

3月までは、テレビ業界を担当する取材チーム(社内通称「放送班」)にいました。ドラマに出演する俳優やタレントにインタビューをしたり、放送前の番組を見て「試写室」と呼ばれるレビューを書いたり(新聞の番組表の横に載っているやつです)、そんな仕事をしていた中で半年ほど前に出会ったのがメンズメイクです。テレビ東京系で昨年秋に放送されていた連続ドラマ「だから私はメイクする」に、メイクを楽しむ男性キャラクターが登場していました。

取材に応じてくださった同局の祖父江里奈プロデューサーは、「今では男性のメイクも珍しくない。体の性別やジェンダー、セクシュアリティーに関係なくメイクを楽しむ男性を描きたかった」と話していました。この当時は「へぇそうなのか~」と思いつつも、自分も試してみようと思うまでには至りませんでした。直接のきっかけになったのは、自分の肌の悩みです。

記者が使っているメイク道具
記者が使っているメイク道具

「阪急メンズ東京」をめざした

私の肌は一言で表すと「冬はカサカサ、夏はテカテカ」。24歳ごろから朝晩に化粧水と乳液を使ったスキンケアを続けていたのですが、去年の夏ごろからあご周りの肌荒れが続くようになりました。

生まれて初めてニキビのために皮膚科に通い、夜は布団の中でスマホをいじりながら、肌荒れ予防に効くスキンケア術や化粧品を探す日々でした。

そこで見つけたのは、YouTubeでメイク術を発信する男性たち。私と同じアラサー世代とみられる人もたくさんいました。メイクで自分の顔に起きる変化をナチュラルに楽しんでいるようにみえる彼らの姿は新鮮で、「自分もメイクをしたらこんな風になれるのかな」と興味を持ちました。

とはいっても、何から始めたらいいのかよくわからず、1カ月、2カ月と過ぎました。11月のある日曜日。ふと「プロの店員さんにゼロから教えてもらおう」と思い立ち、東京・有楽町の百貨店「阪急メンズ東京」の化粧品売り場をめざしました。

「これなら続けてみようかな」

メンズ向けデパートなのに、化粧品売り場に着くと、なぜだか「変だと思われないだろうか…」と気恥ずかしさで脇汗が滲んできます。売り場のまわりをうろうろしながら1~2分逡巡した後、意を決して尋ねました。「あのぅ、メンズメイクをしてみたいんですけど……」。快く応じてくださった店員さんは、化粧鏡が用意された席まで案内してくれました。

BBクリーム、ファンデーション、コンシーラー……。店員さんが手に取ったアイテムが、手際よく私の顔に塗られていきます。これまで悩まされてきた肌荒れや毛穴の黒ずみ、幼稚園の頃友達に引っかかれたほおの傷跡まで、次々ときれいに隠されていきました。顔の半分ごとにそれぞれ塗ってくれたので、前後のビフォーアフターもよくわかりました。

それぞれのアイテムに色のバリエーションがあり、店員さんはその中から私の肌に最もなじむ色を選んでくれました。プリクラやスマホアプリの美肌機能の人工的な感じとは違った、自然ななめらかさを帯びていて、「……これがほんとに自分!?」と目からウロコが落ちる思いでした。

とは言ってもまるっきり別人のようになったわけではなく(考えてみれば当たり前ですが)、鏡に映るのはいつもの見慣れた私の顔です。それまで「男のメイク」という言葉から私が連想していたのは、男性アイドルのような中性的な透明感や、あるいはドラァグクイーンのようなクィアな世界。伸びやかに自己を表現しているさまに憧れつつも、どちらも今の自分とは少し縁遠いように感じ、食指が伸びない理由の一つとなっていました。

違うのは、いつもより生き生きと若返った感じがすること。そして「これがほんとに自分!?」と驚きを感じたのは、鏡に映った私の顔に、いつもは見えない自信が少しだけのぞいていたからかも。「これなら続けてみようかな」。試したアイテムをその場でまとめ買いし、晴れて私のメンズメイクライフが始まったのでした。

それから数カ月。私が直面した悩みは「メイク、面倒くさい!」です。続きます。

メンズメイクとは?
 BBクリームやファンデーションなどの化粧品を使って、男性の顔の色ムラやヒゲの跡を補正し美しく見せること。資生堂が2019年10月に実施した調査によると、メンズメイクをしたことがないと答えた男性221人のうち、「すごく思う」「思う」「機会があったらしてみたい」と回答した人の合計は86.8%にのぼった。

 

大野択生(おおの・たくみ)
1993年生まれ。湘南、東京で育つ。学生時代は音楽や映画が好きで、毎年フジロックやサマソニのヘッドライナーが発表される時期になると2chの洋楽板に張り付き洋楽オタクたちの予想議論を追っかけていた。2016年に朝日新聞に入社し、福岡、長野で勤務。2020年に文化くらし報道部に異動し、放送担当を経て現在は美術・アート担当。眉を左右対称にうまく引くことができず、福笑い状態になってしまいがちなのを改善したい。
 

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