お金と仕事
一人でやらなくていいSDGs 企業が気持ちよく寄付できる仕組み
自販機・プロスポーツからできる社会貢献
SDGsが大事だというのは理解しているけど、いったい何から手をつけていいかわからない。そんな人におすすめなのが、一見関係なさそうなものの掛け合わせです。今、「自動販売機」や「プロスポーツ」との掛け合わせから生まれる新しいサービスが生まれようとしています。一人や一つの会社、組織では難しくても、かけ算を働かせることで一気に動きだす事例から、SDGsの可能性について考えます。
自販機との掛け合わせの説明の前に、自販機管理のビジネスモデルを説明します。
自販機の管理会社は、依頼者から土地と電源を借りて自販機を設置し、商品の補充や機械のメンテナンスを一手に引き受けます。管理会社は商品の仕入れと販売の差益を得る仕組です。
この差益から一部を寄付する自販機もあります。「売上の一部が寄付されます」等と書かれた自販機を見たことがある方もいるでしょう。これを会社が導入すればお金をかけずに寄付ができることになります。寄付先をこども食堂に指定した自販機も存在します。
しかし、管理会社も利益を全額寄付したらビジネスになりませんし、予測を見誤ると赤字になってしまいます。1缶あたり10円の利益が見込めても10円の寄付は困難です。
ところが、企業版ふるさと納税を掛け合わせると最大で9割の税制優遇を受けられます。10円の利益全額をふるさと納税として寄付しても、その年の経営状況によっては最大で9円分の税制優遇が受けられるため持続可能なビジネスになります。極論すれば利益の全額以上を寄付してもビジネスは成立するのです(もちろん赤字年度など税制優遇が受けられない場合は大赤字になってしまいますが)
これは某大手飲料メーカー系の管理会社でメニュー化を予定しているので、近い将来お披露目できると思います。
もう1つ。いくつかのプロスポーツチームともこども食堂を応援するコラボを相談しています。
プロスポーツチームではチケットやグッズの販売以外にもスポンサーからの協賛金が大事な収入源。この協賛金は選手の年俸はもちろん、ファンの開拓にも使われます。ファンが増えればチケットやグッズもたくさん売れるようになるし、ファンの数に比例して宣伝効果も大きくなるためスポンサーも協賛金を多く出してくれる可能性が高まります。
私が現在、準備しているのは、こども食堂とふるさと納税を掛け合わせてファンを直接開拓するスポンサーメニューです。スポンサーは、チームの成績に応じてふるさと納税を行い、チームとスポンサー企業のダブルネームで高品質な食材をチームが所属する地域のこども食堂に送る形です。
勝てば勝つほど美味しいものを食べられますから、こども達は試合結果が気になり、自然とチームを応援したくなります。結果として、生産者とこども達をサポートしながらファンを開拓することができる仕組みです。
プロ野球/Jリーグ/Bリーグ/Tリーグなど、主だったプロスポーツリーグのいくつかのトップチームに検討いただいています。その中でも卓球Tリーグで優勝したばかりの琉球アスティーダには、私の主催するSDGsイベントの中で既にスポンサーメニューの導入を公言。昨シーズンは終わったばかりですが、来期に向けた前例のない取組みが今から楽しみです。
これまでいくつかのソーシャルイノベーションの事例を紹介してきました。
注目していただきたいのは、それら全てが「こども食堂」「書籍」「非常食」「ふるさと納税」「生産者」「自動販売機」「スポーツ」など、一見まったく関係なさそうなものの組み合わせで作られていることです。新しいものは”無”から産まれるのではなく、ありふれた既知と既知の掛け合わせなのです。
また、紹介してきたプロジェクトに私が単独で行っているものが1つもないのは偶然ではありません。各プロジェクトで掛け合わせてきた「既知」も、単独の事業として成立しているのはそれぞれがプロとして研鑽を積んできているから。同じ「既知」を自前で用意するには時間も資本も膨大に必要になります。私が、既にプロとして実績のある人と組むのはそのため。SDGsの17番「パートナーシップで目標を達成しよう」は、イノベーションへの近道でもあるのです。
「SDGsに向けて取り組みたいけど、何をして良いか分からない」という企業は多いです。
自社だけでやれることには限界があります。壁にぶち当たった時は実現可能性を無視して妄想してみてください。「自社の強みに加えて、△△が出来る組織がいれば〇〇が出来るはず」と。ビジョンを描けたら、その△△ができる組織にアタックするだけです。
知り合いがいなければ代表電話でも、組織名をオープンにしている社員のSNSアカウントでも構いません。業界最大手がダメでも同じことができる組織は無数にあるはずです。ダメ元でボールを投げてみればよいのです。断られても失敗ではありません。上手くいかない方法を学べる上に、想像上のプロジェクトの改善点も教えてもらえるかもしれません。
新規事業にはタイミングも大事なので、いますぐには実現しなくても数年後に偶然出会った人と実現できるかもしれません。
実際、私が関わったソーシャルプロジェクトにはSNSで突然打診いただいたものや、代表電話からのダメ元提案で実現したものが存在します。琉球アスティーダが協力してくれることになったのは音声SNSのクラブハウスで社会問題にアンテナの高い社長とたまたま会話したことがキッカケです。他のスポーツチームと交渉を進めていなければ、社長と偶然出会った時にこの手の話題は浮かばなかったでしょう。
そうは言っても「妄想が浮かばない」とか「見知らぬ人にアプローチは怖い」という方も多いでしょう。そんな時はとりあえずSDGs関連イベントに参加してみてください。何らかの形で交流できる時間が用意されているものがオススメです。
私の主催するイベントからSDGsプロジェクトが創発されたこともありますし、SDGsイベントに来る時点で参加者は自分の利害を超えた課題意識を持っています。プロジェクトが実現する可能性が高いのは、社会性のある協業に前向きな人が多いからです。逆に、自分から提案しなくても相手から何かを打診してくれる可能性もあります。
とにかく動いてみましょう。教科書でSDGsをどんなに学んでも、アウトプットが無ければ世界は1ミリも変わりません。この文章を読んだアナタが1歩を踏み出す一助になれば嬉しいです。
パートナーシップで世界を変えましょう。
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